ダンスと男の子

 小学校六年生の男の子です。ダンスの時間が大嫌いで、いつも逃げてばかりいます。女の子と手を結ぶのがてれくさいと思つているのかもしれませんが、男の子にダンスの学習は必要かどうか疑問に思います。いかがなものでしょうか。
 学校では、体育の学習の中に表現運動という領域があり、おたずねのダンス、フォークダンスや民謡踊りも、この表現運動の一部としてすすめられています。
 六年生の表現運動の学習のねらいとしては、身近な生活の中から題を選んで、鋭い感じ、対立する感じなどを、グループで内容の筋に従い、変化をつけて表し、楽しく踊れるようにする」ということがかかげられています。
 ですから、ここでの中心的なねらいは、他の運動領域とび箱、マット、鉄棒のような器械運動、リレー、マラソンのような陸上運動、ドッヂボール、サッカーのようなボールゲーム運動、水泳などが、あるきまった型の運動を身につけていくことをねらっているのに対して、基本的な体操、歩く、走る、跳ぶ、のばす、まげる、ひねるなどの身体活動を使って、自分たちがめざす型を創造していくことにあるのです。このような意味で、体育の学習の中で、この表現運動は大切な役割をもつ領域であるといえましょう。
 学校では、体育の時間に、他の運動領域とのバランスをとって計画的に指導していますが、中には、学校行事の運動会の種目に組み込んで集中的に指導が行われる場合もあります。このような時には、一年生から六年生までがそれに取り組みますので、あたかも踊り学校の様相になり、ある子どもにとっては、それに対する集中に耐えられないという状況もたしかにあるようです。

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 ところで、男の子の中に多いのですが、この表現運動のダンス、とりわけ男女がグループをつくってする運動に積極的でないお子さんが必ず何人かでてきます。
 このようなお子さんたちのようすをみていますと、ほんとうに嫌な場合と、お母さんが思われるようにてれくさくていやな場合があるようです。そして、ほんとうにいやなお子さんは極くまれで、てれくさくていやなお子さんが大半です。
 このてれくさがるお子さんをよくみてみますと、心理的に異性に対する関心をもちはじめ、異性に対する自分を強く意識しはじめているようです。異性と接近することへの願望と同時に、異性と接近することへのおそれや緊張感が。テレとなってあらわれるのではないでしょうか。これは、成長期の一つのあらわれとみてよいでしょう。いわゆる心春期を迎えたわけです。
 「いやらしい」というようなことを連発して逃げるお子さんの心の中には、実は、このような微妙な心理がはたらいているのです。
 学習のねらいには直接示されていませんが、表現運動の背景には、このようなお子さんの心理的な特徴を生かし、男の子の体の動きにたくましいものを、女の子の体の動きに美しいものを素直に感じさせ、それを一層強調して表現させていくような意図も秘めているように思われます。ですから、このようにみてきますと、体育の指導には、運動という身体活動を通して運動文化や運動技能を身につけさせていくと同時に、お子さんの成長に見合った豊かな情操をも育てていくという使命があるのではないでしょうか。
 最近、地方では、祭を中心に地域での伝統的な、大衆による踊りがさかんになってきています。また、都会では、青年を中心にディスコで踊る生活も普及してきています。しかし、まだまだわたしたちの生活の中で、ダンス、踊りという文化が日常化しているとはいえません。お母さんの「男の子にダンスの学習は必要かどうか」という疑問も、このようなところに根ざしたお考えのようにも受けとれます。
 ただ、ここでいえることは、お子さんのこれからは、既成の文化を受身的に楽しむだけでなく、自らが積極的に文化の担い手になり、創造的にはたらきかける楽しさを求めることにあるということです。
 十二、三歳の男の子、女の子が手をとって踊るということは、日本の風土に染まないという目で、お子さんの学習をみている限り、お子さんは、心の中の欲求とは裏腹に、てれくさがらなければならない環境の中に閉じ込められていくことになります。そして、この心の中の欲求が、ところをかえ、手段をかえて、突出し、それがかえって、思ってもみない落とし穴になる場合すらあることに注意しなければならないでしょう。
 一度、お子さんと、じっくりこのことについて話し合ってみてください。男の子と女の子が手をとって踊ることが、どんなに楽しいことか、心のときめきは自然なことであって、決してはずかしがることではないということを。そして、また、家庭の中に、そのような場を積極的に開いていくように心がけたいものです。お父さんとお母さんが手をとりあって歌ったり、踊ったりすることが、てれくさくなくなった時、お子さんは、まちがいなく体育の学習で、ダンスから逃げ出すことはなくなり、積極的にダンスを楽しむお子さんに変身しているにちがいありません。

特定の学科だけ好きな子/ 特定の学科だけ嫌いな子/ 国語を好きにさせるには/ 辞書を利用させるには/ 作文の嫌いな子/ 読書の嫌いな子/ 算数を好きにさせるには/ 計算間違いの多い子/ 理科好きにさせるには/ 実験器具の与え方/ 社会科を好きにさせるには/ 地図や図鑑の利用/ 地域観察とは/ 図画工作を好きにさせるには/ 怪獣の絵ばかり描いている子/ 音楽好きにさせるには/ 流行歌だけに興味をもつ子/ 家庭科を好きにさせるには/ 家庭科と男の子/ 体育好きにさせるには/ 水泳の教え方/ ダンスと男の子/ 英語好きにさせるには/ 辞書を引きたがらない子/

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