園で親から離れない子

 保育園に通っている三歳の男児ですが、親から離れてみんなと一緒に通園することがどうしてもできません。毎日、園まで送り迎えしていますが、園でも親から離れようとしません。親の顔が見えているうちはよいのですが、見えなくなるとすぐ自分も帰ろうとします。先生を困らせてもと思い余っているのですが、いつまでもこれではいけないと思います。どうしたらいいでしようか。
 一年生の遠足の前日でした。A君のお母さんが学校にみえて、ぜひ付き添って行きたいといわれるのです。父母の付き添いは禁止しているので「大丈夫ですから、安心していてください」と、丁重に断ったのですが、それでも怒ったようにして帰っていかれました。
 遠足から帰ると、このお母さんだけが駅の改札口で待っていて、A君が改札口を出ないうちにリユックサックや水筒を自分で持ってやり「大丈夫、疲れなかった」と、肩を抱いてささやいているのです。
 授業参観日や父母会はもちろん、平日でも学校へ来て子どものそばをうろうろするので学校では有名でした。おかしいと思って機会をとらえ、それとなく子どもや母親に聞いてみました。
 A君が生まれると間もなく、父親が交通事故で急死し、生活は祖父母がいるので心配ないため、母親は、ただA君を育てるだけを楽しみに生きて来たのだそうです。
 今でも毎晩添い寝しながら、子どもの腕をさすったり、耳をほじくってやったりしないと寝られないのだそうです。
 もちろん、朝の着替えから、洗面、登校仕度とすべて母親がしてやります。子どもが何か要求する前に察知してもう母親の手が先まわりしてしまうのです。
 いつも、A君のことを考えたり、A君のことを何かしてやっていれば気持が落ち着いていられるのだそうです。
 こんな調子がA君の誕生からずっと続いているのですから、このような養育態度は母親に定着してしまい、母親自身をも変えてしまっているようでした。
 まったくの、溺愛、盲愛と言うべきでしょう。「私って、どうしてこうなのか自分でもよくわからないんです。どうしてかAのことになると、じっとしていられなくなるんです」と母親は述懐していました。
 これほどに極端でなくても、似たタイプのお母さんによく出合います。そんなお母さんは、「ほんとうに私がしてやらなければ、何ひとつひとりではできない子なんですから」と、目を開けば、子どもに罪をかぶせるのです。

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 A君の幼稚園行きは大変でした。それでもお母さんは「集団生活になれさせるため少し早いけど」と、殊勝にも四歳から幼稚園に入れようと決意したのでした。
 ところが、入園日の数日前から不安で眠れず、入園式当日はよかったのですが、翌日は離れるのが辛くて親子で泣き出す始末、遂に親の方から断念し、五歳から入園させることにしたのでした。
 前年のことを知っている幼稚園では、入園式の日、母親に因果を含め、先生の指示に従うよう命じました。
 通園初日、母親はさすがに泣きませんでしたが、A君は母親にしがみついて泣いて離れません。園主任さんとの打ち合わせどおり、母親がトイレに行くのをチャンスにA君を引きとると「さあ、Bちゃんも、Cちゃんも今日は紙芝居をして、それからブランコをして遊びましょうね。A君も一緒にしましょうね」と、彼の好きな玩具の電車を手に持たせ保育室へ連れ込みました。
 それからも数日は、似たようなことが続きましたが、結局園主任さんの荒療治が効をそうしたようでした。
 しかし、迎えに来る時はいいのですが、送って来たときの母親の別れ際のわるさに幼稚園の先生方は、その後もいろいろ苦労したようです。
 たしかに帰ったはずの母親が園庭わきの柵の外からのぞいているのです。A君はそれを見つけると帰ると言って泣いて駄駄をこねました。母親に注意すると「Aがどうしているか心配だったので」と、平気な顔で言うのです。
 このA君は、何ひとつ自分でできず、三歳児以下の幼稚さでした。
 シャツもひとりで着れず、裏返しに着て平気でいたり、ボタンやファスナーはもちろんできません。トイレも、付き添って行かないと汚してしまい、おもらしも時々します。
 手を洗っても拭くことを知らず、自分勝手で、わがままで、思いどおりにならなければ泣くのです。言葉も幼稚で、思っていることをはっきり訴えられません。
 五歳児だというのに母親の介添えがなければ何ひとつできないありさまですから幼稚園の先生のご苦労も大変でした。
 そのうえ、家の中での母親とのつき合いが主だったので友だちづき合いがまったくできず、いつも友だちとトラブルばかり起こしていました。
 社会性が未成熟で、まったく依存的なのです。
 母親が、子どもをいつまでも赤ちゃんにしておいて、自分のそばから離れられないように育てたような子どもでした。
 「親を後追いする子」「親から離れようとしない子」と言いますが、よく考えてみると「子を後追いする親」(後追いさせる親)そして「子から離れられない親」(離れさせない親)の責任も大きいように思うのです。
 子どもが後追いしてくれるうれしさ、離れようとしない喜びに満足し、期待している母親の心の落とし穴が隠されていることを忘れてはならないと思います。それは、親の養育態度と深い関係があると思います。まず、お母さんが子どもに対する自分の愛情について見直すと共に、子どもとの間に距離をおいた養育態度に変えることが大切です。あとは、先生のご指導を仰いだら心配はないでしょう。

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