落ちこぼれの子
二人兄弟の次男で小学校六年生になる男の子の親です。長男と違って、次男はクラスの後ろから数えた方が早い程成績が悪く、頭を痛めている毎日です。低学年のころは中位の成績でしたが、高学年に進むにつれて勉強についてゆけなくなってきたようです。私もいつの間にか頭のいい長男と比べてしまう時もあって「少しは勉強しなさい」と言っても「ぼくは兄さんと違って頭が悪いからね」と開き直ってしまうので困っています。どうしたらよいでしょうか。
いくら高い知能をもった子どもでも、学習の基礎につまずきがあれば学力は決して伸びるものではありません。
算数の九九は掛け算、割り算のもとになり、文字の読み、書きは作文や読解の基礎になります。学習は基礎から順々に積み重ねられて学習され、各教科の学習はお互いに関係し合って向上するようになっているものです。
それと同時に、学習する時の態度とか、勉強のやり方もやはり学習の基礎になるものです。六年生ですから、さかのぼって三年生ころから、特に算数、国語を中心に学習につまずきがないか調べてみてください。また、家庭や学校での学習態度、勉強のしかたにまずいところがあったら正してあげましょう。
馬に水を飲ませようと、どんなに馬を水辺に引きずっていっても、馬に飲む気がなければ飲ませることはできません。
どんなに頭のいい子どもでも、意欲がなければ勉強もしないし、成績もあがるものではありません。
もう六年生ですから、「自分のために勉強するんだ」という自覚をしっかり持っていなければなりません。そして、「勉強しなさい」と言われても「よしやろう」という「させられる」から「するヘのスイッチの切り替えが、さっとできるようでなければなりません。
ところが、親は、子どもから遊びや趣味をとりあげ、勉強、勉強と子どもの尻を叩きます。人間は弛緩があるから緊張できるのです、子どもにもゆとりが必要です。
また、干渉しすぎると依存的になって親のために勉強をしているという気になるものです。子どもの意欲づけに工夫してみましょう。
もう六年生ともなると、たとえ親でも、何だかんだとうるさく干渉したり、叱ったりするといらいらするものです。まして「勉強しなさい」と、繰り返し尻を叩かれたり、成績が下がったことをくどくど言われたり、他人と比較しては「お前は駄目だ」と言われたのでは、やる気もなくなるし、気持も落ち着かなくなります。それより、学校の先生もついているのですから、家庭では勉強のことは言わずこ、子どものいいところを見つけてほめてやったり、元気づけるように激励してやってはどうでしょう。態度が自主的にならないと心にゆとりも出ないし、やる気にもならないものです。
「ぼくは兄さんと違って頭が悪いからね」と言っているようですが、こんなことを言わせるように指導したことは残念だと思います。
誰でも、自分より優れた者と比較して悪く言われたり、しかられたりしてうれしがる者はありません。「兄ちゃんを見なさい、勉強もするし、成績もいいのに、それに比べるとあんたは」と再三言われたのでは開き直りたくもなります。
ぼくはぼくなのです。兄さんや友人と比べるのでなく、本人の特性や努力をその子なりに認めてやってください。弟には弟なりの個性があり、能力があるのです。そして、弟には、兄さんを引き合いに出さなくても分かっていることなのです。
他人と比較しての激励や意欲づけは、かえって、子どもをすねさせたり、やる気をなくさせるものです。
親は、子どもが何人いてもみんな同じようにかわいいものです。その愛情がどうかすると、どの子も同じように伸びるはずだと思い込み、かわいさが高望みになり、期待をかけすぎるようになるものです。
ところが、能力がないのに同じように期待をかけられ、その重荷を背負った子は、親の期待にそえなくて悩むことがよくあるのです。
同じ親から生まれた子といっても、顔かたちが違うように、性格も能力もみんな違うのです。
このことを十分考えて、子どもの個性、能力、適性に合った指導をしてやることが大切です。
次男の成績が、六年生の卒業期を迎えて思わしくないので親の落ち着かない気持は分かりますが、黙っていても成績のいい兄を前にして本人も、六年生ですから、どうしたものかと悩んでいることと思います。
心配の点を担任の先生とよく相談し、知能テストもやってあると思うので、本人の知能、学力、学習態度、勉強のやリ方、学習意欲、学習のつまずきなどについて診断していただき、本人の能力や欠陥を十分理解して、先生と協力して、子どもを励ましてやったらどうでしょう。
近ごろよく、「おちこぼれ」と言いますが、親や教師がおちこぼしてしまったことを忘れないで、あたたかく支えてやる気持が大切です。
現在、兄より学校の成績が悪く、「おちこぼれの子」と、しかられている弟が、十年、二十年後に兄をしのぐ、すばらしい人間にならないと誰が断言できるでしょうか。
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