大学受験に失敗したとき
今年、息子が大学受験に失敗し、相当ガックリして部屋にとじこもってばかりいます。「来年また受験すればよい」と言って励ましてはいるものの、本人はすっかり自信をなくし家族ともあまり口を聞きません。元気づけるためのなにかよい方法があるでしょうか。
なんと言ってもまず「なんの目的で、誰のために大学を受験
するのか」ということを親は本人にしっかり自覚させ、本人も自らこのことを確認しておくべきです。
大学受験の年令を考えれば、すでに大人であり、一人前に物事を考え処理できる年ごろですから、くだらない理屈を言うよりこのような大事な問題こそ自主的に考え自分の問題として自覚し、親や他人に依存するようなことではなりません。
「おふくろが大学へ行けと言うから」「大学を出ておかないとあとで困るから」こんな考えの人間は最初から受験しないことです。もっとも、こんな人間は落ちてもおそらく、くやしがりも失望もしないことでしょう。
受験は、自分の問題として自分の意志を最初にしっかり確認しておくことです。
人間の能力は様々ですが、持っている能力を出し切り、できる限りの努力を尽くした者は、心さわやかで充実しているものです。こういう人こそ素直に神前に合格祈願できる資格があるのです。静かに天命を待てるのです。もちろん、敗れても悔なしの心境です。
このごろ、人事を尽くしていない怠け者や受験への意志さえ確認していない無資格者が棚ボタを狙って合格祈願に押しかけるので神前は大繁盛するのでしょう。
結果主義の現代もよくありませんが、親は過程を重んじる堅実な人間を育てることに心を向けなければなりません。
学問することは苦しいからこそ楽しいのです。人生も同じことです。このくらいの試練に耐えられない者がどうして人生にひとり立ちできるでしょう。
むかしは、親に頼んで大学へやってもらい、今は、親が頼んで大学へ行ってもらうと言います。こんな気構えだから、不合格になるとはずかしがったり、しょげたりして甘えているだけで大事なことを忘れてしまうのです。自分が不合格になっても大学が逃げるわけではないのですから来年再挑戦すればいいのです。
そのためには、なぜ不合格になったかを厳しく反省分析しなければなりません。まず、意思確認はどうだったか。大学、学部の選択は適切だったか、受験準備計画はよかったか、出題傾向への準備は万全だったか、人事を尽くしたか、体調はよかったか等一つ一つ反省分析することが大切です。親や友人と話し合うのもいいでしょう。きっと客観的な目がひらけ落ち着いてくることでしょう。
人間は誰でも不遇の立場におかれると、「自分が一番不幸だ」「自分だけが不幸だ」と思い込み、知らず知らずにめいってしまうものです。
ところが、顔を上げて我にかえるとそうではないことに気づくのです。受験したくてもそれさえできなかった者、また自分と同類の不合格者もごろごろいることに気づきます。それに、受験に落ちたからと言って自分のすべてが否定されたわけではないのです。自分には誰にも負けないスポーツがある、趣味がある、特技がある、思いやりの心がある、何かあるのです。受験に失敗したくらいで自ら自分のすべてを否定してめいってしまうのは馬鹿げていることに気がつくでしょう。
しかし、周りでいくら「しっかりしなさい」「顔を上げなさい」と言うだけでは、かえって心を閉じることもあります。信頼されている親や先輩などが話を聞きながら心を解きほぐし自分から顔を上げるのを待つことです。
めいってくると人は孤独になりやすいものです。そんな時には平常から尊敬と信頼に結ばれた家族や友人、先輩との交流は救いになるものです。
特にあれこれと慰めや激励がなくても、あたたかく周りから包んでくれる雰囲気に支えられるものです。「みんな自分のことを思って心配していてくれると感じるとき、心がなごみ勇気づけられることでしょう。これらの友だちとのパーティーや山登り、ハイキング、ゲームなども気分転換になるものです。
人の性格は様々です。諦めが大切と言うように、心のスイッチの切替え訓練を子どものうちからしておくことが大切です。
受験に挑戦するのが闘いであれば、不合格になった心の処理も闘いです。
この闘いは言わば人生の闘いであり、自分との闘いでもあるのです。この闘いに敗れてかりにも青春を散らすようなひ弱い性格にしないよう、親は子どものうちから、学ぶ喜び、生きる喜びを心に強く植えつけ、逞しい子に育てなければなりません。
子どもは親の期待過剰の重荷に押しつぶされることもあります。また子どもの性格は親に似ているものです。大人並みに成長した子どもの心の揺れに一喜一憂する親自身の気持ちに問題はないでしょうか。
真剣に自分と闘っている子どもを、陰からじっと見守りながら、そっとしておいてあげたらどうでしょう。間もなくきっと立ち直るでしょう。
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