教育基本法の成立

 天皇制教育の体制は、新しい憲法と教育の理念に基づいて根本的に刷新されなければならなかった。一九四五年八月一五日、反軍国主義と民主化を求めるポツダム宣言の受諾によってもたらされた終戦は、必然的に明沿道法体制の崩壊を帰結した。
 マツカーサー司令部は明治憲法に代わる新しい憲法の検討を求め、教育に関しても、「四つの指令」によって、軍国主義的国家主義的教育の一掃をはかった。その指示に従う文部省は、一九四六年一〇月八日に、「勅語及詔書等の取扱について」という次官通牒を出し、教育勅語が「我が国教育の唯一の淵源となす従来の考へ方を去」ることを求め、式日等において「今後は之を読まないこと」さらに「之を神格化すること」のないよう指示した。一九四六年元旦には、「天皇の人間宣言」が出された。天皇制教学体制の要は、この時大きくゆらいだ。

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 三月来日した米国教育使節団とその報告書は、教育の自由主義化、民主化をうながすものであったが、使節団に協力する日本側委員会は、戦前からの教育改革への志向を受けつぎ、さらに新たな状況に対して積極的に対応し、自主的な教育改革への模索を教育家委員会報告書としてまとめた。この委員会は、やがて、教育刷新委員会へと発展し、そこで、新しい憲法の審議をにらみながら、教育勅語に代わる教育の根本法の検討を重ね、教育基本法の骨子がつくられた。委員会の開催に当たって、幣原喜重郎国務大臣は、吉田茂首相の代理として、つぎのように挨拶した。
 「今回の敗戦を招いた原因は、煎じつめますならば、要するに教育の誤りに因るもの申さなければなりませぬ。従来の形式的な教育、帝国主義、極端な愛国主義の形式というものは、将来の日本を負担する若い人、これを養成する所以ではありませぬ、我々は過去の誤った理念を一擲し、真理と人格と平和とを尊重すべき教育を、教育本来の面目を発揮しなければならぬと考えます。」
 続いて田中耕太郎文相は、教育改革の目標は、「真理と平和とを理念とする民主主義教育制度の樹立」にあるとのべた。
 教育勅語に代わる教育の根本法をつくるために検討を続けてきた教育刷新委員会第一特別委員会は「教育基本法要綱案」を第一三回総会に提出したが、そこでも、基本法前文は過去の反省から書き始められていた。
 「教育は、真理の開明と人格の完成とを期して行われなければならない。従来、わが国の教育は、ややもすれば、この自覚と反省にかけるところがあり、とくに真の科学的精神と宗数的情操とが軽んぜられ、徳育が形式に流れ、教育は自主性を失い、ついに軍国主義的、又は極端な国家主義的傾向をとるに至った。この誤りを是正するためには教育を根本的に刷新しなければならない。」
 教育刷新委員会を中心としての、新しい教育理念の模索は、戦前の教育の深い反省の上になされたものであった。

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