教員の教育の自由と責務

教育の本質的要請、教育は人類が蓄積してきた文化遣産を、新しい世代に伝え、将来の文化を創造する主体を育てる営みです。個としての人間という面からみても、社会的在在としての人間という面からみても、教育には、つねに、現在をこえて新しい自己、新しい人間社会を創造するという働きが含まれています。文字をしっかり書けない子どもが、書けるようになることは、古い自己のなかから新しい自己を生み出すことでです。あるいは科学の進歩が新しい文化と、新しい人間の生活を創り出したのも、社会的にみれば教育の働きでです。教育には、このように、現在にたんに同化するだけでなく、新しいものを生み出すという働きがあります。このことは、人間が既存の知識を覚えるだけではなく、自ら真理に向かう能力を教育によって獲得していくことの重要さを示しています。政治や経済と違って、教育が、社会的に規制されながらも、それから相対的に自立して営まれる必要があるゆえんです。

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未来の文化創造の主体を育てることが、教育の働きである、とはいっても、まず、数・量・図形・文字などについての基礎的能力をしっかりと身につけることから出発しなくてはならなりません。また自己の意思や感情を適確に表現する能力も培わねばならなりません。さらに、自己自身についてはもとより、人間の社会開係を調整、紀律、変革していく能力をそなえていくことも必要です。このような基本的な学習を援助・指導する過程をとらえてみると、重要な特徴を見出すことができます。児童・生徒に対する認識、教育内容の編成、教育方法の検討、授業の展開、学習・生活環境の把握、これらのいずれをとっても、教員個人の経験や主観によっては成果を期侍出来ません。また、既存の科学を、これらの領域に持ち込み、これを適用するのみでも十分ではありません。例えば数学教育は、数学という科学を、教育内容の基礎としているが、数学そのものではありません。児童・生徒の発達の段階に応して、選択された内容を系続的に配列し、それを授業の具体的過程として編成することによって、はじめて、教育内容としての数学となります。他の教科においても問題は同様でです。このように、教育研究・教育実践そのものが、科学的研究と実践の過程だということが出来ます。教育が、政治的統制から自由に、行政的現制から相対的に自立して行われねばならない根拠がここにあります。教員の教育の自由の法的根拠、児童・生徒の発達保障に貴任を負う専門的職能者としての教員にとって、職能的自由としての教育の自由は、教育法上どのような根拠をもっているでしょう。憲法上の根拠としては、23条と26条をあげることができます。学問の自由は、長く大学教員の特権的自由と観念されてきたが、近年学会においても、その再検討がはかられ、権利主体・権利内容の再面において、より拡大して再構成さるべきであるとされるにいたっています。こうしたことは、ILO・ユネスコの教員の地位に関する勅告、第61項が、教員に問の自由を保障すべきこととしていることにもみるように、国際的にも承認されるようになってきました。すなわち、学問の自由を、大学教員の研完・研究発表・教授の自由にとどめるのではなく、大学以外の教育機関で働く教員にも、職能上の自由としての学問の自由を認め、教育研究の自由と教育の自由を保障すべきであるという考え方が、社会的にも認められつつあるのです。このように、憲法23条が大学以外の教員の教育の自由を保障している規定とみなすことができます。しかし、憲法23案のみから、教員の教育の自由を根拠づけるのは十分ではないです。むしろ、憲法26条を基本的保障規定として理解し、それを充足する内容を、23条が示しているととらえるべきです。すなわち、教育を受ける権利の保障は、就学条件整備、教育の機会均等といった、教育の物的・制度的条件のみならず、教育の内容そのものが、科学的で、人間的発達をうながすものであることによって実現するのであるから、教育内容についての保障が26条によって要請されていると解することが出来ます。民主主義的で真理にもとづく教育を、憲法、教育基本法は内容原則としているのであるため、専門職としての教員の自律的研究・実践が、行政的に細部にわたって統制されることは現行法制になじまぬものです。すなわち、教育を受ける権利の保障は、この点からみるかぎり、学問の自由を媒介として実現されると解されます。教育基本法が、学問の自由を尊重すべきことを現定し、教員の使命と職責を明らかにし、身分尊重・待遇の適正化を保障し教育内容に対する、行政権の関与に制限を設けているのは、こうした原理の具体化です。また、学校教育法28条の教員の職務規定、教育公務員特例法が、教員に自主的研修を保障しているのも、同様の趣旨によるものと解せられます。いうまでもないことながら、教員の教育の自由は、あらゆる点で、なんらの制約を受けない、という意味ではありません。専門的職能者によって自律的に営まれる教育は、第一に、児童・生徒の発達保障のためのものです。教員は、児童・生徒の教育を受ける権利を侵害するような教育までをも、自由に行いうるわけではないです。第二に、教育の科学に基礎をおかない教育もまた排されねばなりません。第三に、教員の教育の自由は、一人ひとりの教員の自由であるが、それ以上に集団的自律の原理でもあります。したがって、個人の主観のみによる教育を、そのまま教育の自由の名で容認することはできないでしょう。しかし、これらの制約に反しているからといって、直ちに司法的制裁をもってのぞむのではなく、できるかぎり、教員の集団的自律によって、是正していくべきです。最も教育法の条理にかなうものであることば付記しておかねばなりません。以上のような意味で、教員の教育の自由は、国民に開かれ、その期待にこたえるべきものとされているのです。

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