個人的権利から集団的権利へ

教員の職務は、児童の教育とその基礎をなす、研修です。まず、教員が個人として果たすべき責任であり、個人としての教員の権利である。たとえば、授業、児童の成績の評価、児童に対する事実上の懲戒などを考えればわかるように、一人ひとりの教員は、自らの創意工夫と、自らの責任において職務を遂行しています。教材研究、児童研究なども、集囲的に行う場合もあるけれども、それがすべてではなです。むしろ毎日の研修は、まず教員個人が、自らすすんで行っているといってよいでしょう。このように、学校の教育活動は、まず、個人としての教員が、創意ある、生気あふれる活動をすることを基礎として成り立っています。また同時に、学校は、教員と児童の個人的関係の総和ではなく、それぞれの教員の研修と教授活動が、有機的に結合され、組織化された教育を営む場でもあります。もし教育労働という言葉を使うとすれば、教育労働は、自主労働であると同時に、総合労働であることを特徴としています。いわゆる義務教育の遇程だけを考えても、教育の成果は、多数の教職員の教育労働の成果が、多年にわたって、一人ひとりの児童・生徒の内部に蓄積される過程です。児童・生徒をどのようにとらえたらよいか、どのように教育内容を編成すべきか、授業をどう展開すべきか、成績の評価は適確であるか、こうした具体的問題の一つひとつが、教員の集団的作用によって成り立っています。児童・生徒は、それぞれ個性的存在であり、教育的成果は、その内部に蓄積されるのであるから、教員の協業的関係で教育が行われているという、事実上のことだけでなく、児童・生徒を深く知り、教育の質を高めようとすればするほど、集団的英知を働かせ、研究と実践の共同的関係を作りあげていかなくてはならなりません。教育労働が、本質的に総合労働であるゆえんです。

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学校は、いま述べた教員の働きを最も有効に生かすよう、組織化されています。学年会、教科会、生活指導部会などの組織や、職員会議という、全教職員の協議機関などがあります。そこで、少し具体的に、集団的権利の内客を考えてみましょう。教員の教育の自由が、集団的権利として最も特徴的にとらえられる面は、教育と研修においてであります。第一に、学校の教育計画を作り、教育課程を編成することがあげられます。教育法上多くの批判がある、学習指導要領においてすら、教育課程の編成は学校が行うとしています。学校において、というのは、校長が、とは意味が異なります。当然のことながら、学校の教員が中心となって、教職員の協議にもとづいて編成するという趣旨です。
第二に児童・生徒の人事に関することをとりあげてみましょう。たとえば、進級し卒業の認定は、児童・生徒の平素の成績を評価して行われ、その認定権は校長にあるとしているのが、行政解釈であります。しかし、この認定権は、いわば校長の対外的表示権としてのそれであると解されます。教員が職員会議において協議し、その決定によって、修了、卒業の認定は行われており、そのような集目的意思にもとづいて児童・生徒の人事が行われることを現行法は要請しており、校長はその意思を代表するものであります。この問題と類似のことは、児童・生徒の懲戒についてもいえる。事実上の懲戒はおくとして、法律上の効果を伴う懲戒についていえば、懲戒処分権者は校長であるが、停学・退学・訓告の処分は、職員会議による決定を前提としているのが通例であり、職員会議にもとづかない処分は違法と解せられるがら、校長の権限も、さきの修了・卒業の認定権と同様、対外的表示権とみなされます。
第三に、教員の研修権をとりあげておこう。研修内容の選択は、教員個人の判断、もしくは教員の協議によって、場合によっては校長の助言によって定まるが、教員は、授業に支障のない限り、本属長の承認を受けて勤務場所を離れて研修することができるが、授業に支障があるかどうかの判断は、ひとり校長のみに委ねられているいうよりは、むしろ、教職員の協議にもとづくと解するのが正当です。教職員の有機的協力によって営まれている、学校教育活動において、児童・生徒の指導を一時代替して、研修の機会をある教員に保障しうるか否かを、最も適切に判断しうるのは、教職員自身にほかならぬからです。以上、全く例示的なこととして、三つの問題をとりあげてみたが、教員の教育活動が教育法上、集団的権利として位置づいていることが埋解されるでしょう。

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