父母や住民の教育への要求と権利

父母や住民の教育要求の高まりは、後期中等教育や高等教育機関にわが子を進学させるその進学率の伸びをみても明らかです。その高まりは、数字として如実に示されてはいますが、父母や住民が教育に対して何を要求し、学校に何を期待しているかという要求の内容になると必ずしも明瞭ではありません。
要求は、もともと個人的で具体的なものです。したがって、つぶやきに始まりつぶやきに終り、要求する相手も不明確なまま、たとえ明確になったとしてもその相手や同じ要求をもつ他人に伝わることもなく、埋れてしまうことさえあるものです。
教育という営みが、すぐれて社会的なものである以上、教育への要求は社会化されなければならないことは自明の理です。教育への要求を社会化することかく私事として処理しようとする試みは、往々にしてその事態を一層錯綜させ解決を困難に導き、子どもの生存権としての学習権を損傷することになってしまうのです。
教育の官僚統制強化の歴史のなかで、日本の父母、住民は、公教育をお上の教育としてとらえ、要求や批判の余地のないもの、それらをタブー視する教育意識を深く醸成されてきていました。したがって教育要求を社会化しようとする意識は今日においても座だ希薄といわざるをえません。公教育をお上の教育と考えるこの父母、住民の教育意識を、公という言葉のもつ「みんなのもの」という原意に回復する、教育における国民主権の確立、 そのための教育へのつぶやきを自由に表現できる条件を保障する活動(行政・学校・地域からの干渉排除など)の組織化が大切です。これなくしては、広範な父母、住民の教育要求は表現されず、権利としての教育要求の内容も明確にされず、形骸化されてゆくことにもなりかねないのです。

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教育権をもつ主権者である父母や住民が、様々な要求をもつことは当然であり、自由です。しかし、そこに表現される教育要求は往々にして一個人のかかにおいても矛盾しあい、父母、住民の相互においてはさらにその度をまし対立する場合も多いのです。例えば、子どもへの宿題の多寡についての場合もそうです。この矛盾と対立は、表面をみれば、父母や住民の教育要求そのものの矛盾と対立であるように思われますが、実は「子どもの能力ができるだけ伸ばされるように」という共通の要求が、資本主義社会の競争の原理によって歪められ不幸な矛盾と対立の形をとらされている現象にほかならないのです。
したがって、父母や住民の教育要求の現象形態そのものがすべて正しく、実現するに値するものであるかどうかは不確定なものです。そこでこれらの個別的分散的な教育要求を、実現するに値する普遍的な教育要求として確認しあい、一定の社会的な力として実現してゆくためには、父母や住民の自己教育活動としての学習と実践により、それらの要求を据り起こしつつ共同化、集団化、科学化することが必要になってくる。すなわち、その矛盾と対立の現象の底にある共通の教育要求を読みとる集団的な学習と実践の活動が要請されてくるのです。
 国民の普遍性をもった人間的な願いと要求は人権そのものであり、父母の教育権、子どもの学習権が、基本的人権の文化的側面として存在する以上、父母や住民の教育要求の普遍性はこの人間的な願いと要求に源泉を求められなければなりません。これの人間的願いを次の五点にまとめている。(1)健康と安全への要求、(2)豊かな暮しへの要求、(3)人間的諸能力の発展への要求、(4)人格の平等への要求、(5)以上の要求を人間共通の要求として実現したいという要求。これらの要求は憲法の各条項に権利として規定されているものでもある。
個別的分散的な父母や住民の教育要求を、ここまで統一し、権利として自覚化し、具体化してゆくことが基本的課題です。

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