教育の内的事項と外的事項

内的と外的事項とは概略的にいえば、教育諸事項のうち教育内容面を内的事項といい、教育が行われるために必要な外的条件面を外的事項といいます。教育におけるこの両事項に関しては、宗像誠也教授が日本の教育行政とのかかわりでその意義に注目、紹介されたのを契機に日本では知られるようになりましたが、元来これはアメリカの比較教育学者キャンデルがその著作のなかで、教育行政に関して使用したのにもとづきます。
すなわち、キャンデルは同前言の教育行政の章で内的事項を、立法で規制したり規律したりすることができない教育の側面であるとして、教育課程、学習指導要領、教授法、教科書及び諸基準をあげています。これに対し外的事項は、教育の過程がもっともよく行われることができる条件をつくりうるところのものであるとして、就学義務、年限、教育的、衛生的見地からする校舎や運動場の状況、医学的な検査や健康、学級規模、教員の資格、給与、年金、機会均等を保障する学校制度などをあげています。

スポンサーリンク

このような内的事項(教育内容、方法にかかおる事項)と外的事項(教育財政、施設設備、教職員の労働条件、学校制度などに関する事項)論およびこれを区分することが注目されたのは、一九五五(昭和三〇)年頃からのに日本の教育行政が、教師の専門的自由やその自主性がとりわけ確保されてしかるべき内的事項への法的拘束力をもった権力的介入を強めたからでした。このことは反面、外的事項の整備に対する教育行政の相対的努力度の不足を浮彫りにすることでもあって、教育行政の任務を教育の諸条件整備におき、教育の自主性を保障する教基法一〇条二項の確認を、大きく逸脱することを明白にしました。そこから教育の専門的自由や自主性を守り、教育条件整備に任ずべき教育行政権の限界を明らかにする理論的根拠として、この両事項論およびその区分が教育法判とのかかわりで意味をもつにいたりました。戦前日本において内的事項を国、行政権が直接掌握し、外的事項は地方公共団体に委任され、結局教育の専門的自由や自主性が確保できなかったことに照らしても、この区分は教育行政の限界を考えるのに重要な示唆を与える論拠となりました。
ところが、国側を代表する見解は、内、外面事項が明確に区分できないとして教基法一〇条二項の論条伴のなかに内的事項を含め、これに対する教育行政権の介入を正当化しています。なお、これは公教育内容について議会制民主主義により議会および行政権がそれを法的に決定できるという見解とも関連して主張されます。戦後初期の国側の解釈が、教基法一〇条解釈に際し、教育行政権の教育内容への介入をいましめていたことと比べるとこれは注目すべき論理の転換を示します。
しかし、内的事項に法的拘束力ある決定を原則的に容認することは、論理上、被教育者の学習権を保障すべき教師の専門的自由を侵すのみでなく、国民に直接に責任を負って自主的に教育責任を果すことができないことに道をあけます。したがって内的事項のかかる独立保障を認めるかぎり、面事項を原則的に区別し、これへの権力的介入をチェックする論理が重要かつ現実的意義を担います。区別が不明確なことを立論の根拠とすると、内的事項に外的事項の整備を媒介に法的拘束力ある決定を認める論理に通じかねません。
ただ、内的事項に法的拘束力なき指導助言はありうる反面、外的事項がすべて法的拘束力ある決定であるべきだというのではありません。また、両事項にまたがるようなこともありますが、要は、そこで両事項の区分ができないわけではなく、内的事項の独立保障の見地からこれらの内容をみきわめることが重要です。

教育法の意義/ 教育法の沿革/ 戦後教育改革の成立/ 教育法の展開/ 教育法の体系/ 教育法の法源/ 教育法の解釈/ 教育法の解釈の特殊性/ 教育裁判/ 教育基本権裁判/ 教育法の基本原理/ 教育を受ける権利/ 学習権の意義および主体/ 学習権/ 機会均等の原理と能力主義/ 青年の人権/ 男女共学の理念/ 教員の教育の自由と責務/ 研修権/ 個人的権利から集団的権利へ/ 父母・住民の教育権と責務/ 義務教育と父母の地位/ 父母や住民の教育への要求と権利/ 国民の学習権/ 教育の自主性確保/ 教育の内的事項と外的事項/ 教育内容と指導助言権/ 教育の条件整備/ 公費負担と無償教育/ 教育行政の中立性/ 教育における地方自治/ 教育行政の地方分権/ 教育における住民自治/ 住民自治と学校自治/ 平和と民主主義の教育/ 教育の公共性/ 教育の政治的中立性/ 国民共通の教育/ 学校体系の意義/ 就学前教育/ 義務教育/ 高校教育/ 大学教育/ 私立学校/ 入試制度/ 学校の内部管理の意義/ 教員と職員会議/ 校長、教頭および主任の職務/ 学校の内部管理における児童生徒の地位/ PTA/

       copyrght(c).子育てと育児.all rights reserved

スポンサーリンク