教育における住民自治

教育における住民自治の観念は教育行政の地方分権とは異たって今日必ずしも熟したものとはなっていません。しかし、教育法の基本原理の一つとして教育における地方自治をとらえ、その構成要素として教育における住民自治を把握するなら、それは地方公共団体の教育行政と教育が住民によって住民のために行われなければならないことを意味し、憲法一三条の幸福追求権、一五条の公務員選定、罷免権、二三条の学問の自由、二六条の教育を受ける権利および九二条の地方自治等によって構成される基本的人権と解することができます。
教育基本法一〇条が、教育は国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものであると規定し、教育の直接責任性を明示していること、旧教育委員会法一条が公正な民意により、地方の実情に即した教育行政を行なうために、教育委員会を設けるとし、教育委員の公選制をとったことと、教育における住民自治とをどのように関連づけるかが問題なのです。テーマのいう教育を教育の内容、方法に関する狭義の教育と施設等教育条件整備に関する教育行政とに分けて考えてみる必要があります。

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教育行政における住民自治、それは、地方自治の一環としての地方公共団体の行う教育行政が住民のために、住民によって行われなければならないことを意味しています。すなわち、国民主権から導き出される住民主権の地方教育行政における原理です。旧教育委員会法が公正な民意による地方教育行政を目的として教育委員の選出を住民の選挙に求めたことはこの考え方にもとづいていました。この公選制教育委員会制度は、主として都道府県については昭和二三〜三一年、全市町村については昭和二七〜三一年という短期的経験しかもたずに、三一年の地教行法によって公選制は退けられ、議会の同意にもとづく知事、市町村長の任命制に転換しました。このことは、一方では地方教育行政に対する民衆統制の原則を間接的なものとし、他方で一般行政への教育行政の隷属を生み出していきました。
しかし、憲法一五条の公務員の罷免権にもとづいて、教育委員の解職請求が認められているほか、地方自治法上の条例改廃請求、監査請求、住民監査請求、住民訴訟の制度が設けられているのは、教育行政の住民自治の原理が現行法規の中に不十分な形であっても生きていることを示しています。
教育行政機関としての教育委員会は、それが公選制であるか任命制であるかにかかわりなく教育内容、方法について権力的関与をなしえず、教育基本法一〇条一項にもとづき、教育は直接に住民に責任を負って行われなければなりません。教育の直接責任性は、住民、父母の教育権と教師の教育権限の独立とを結びつけて解されなければならないとすると、教師の父母、住民に対する教育的、文化的責任の負い方が問題となります。教育権の主体としての父母、住民の側からの責任の問い方といってもよく、それは、父母、住民の学校、教師に対する教育要求権という権利概念を法的に理論化し、それにもとづく父母、住民と教師、学校の教育法関係をつくり出すという新たな理論的、実践的な課題を提起しています。
教育における住民自治の原理は、学校教育以外の、いわゆる社会教育にも妥当する。社会教育を規定した教育基本法七条、および社会教育法一条、三条、九条の三等を総合的にみると、社会教育における教育委員会の任務は、環境の醸成、条件整備にあり、住民の自己学習権と社会教育の自由を保障していると解されます。

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