住民自治と学校自治

いわゆる任命制教育委員会成立以後の顕著な変化には、府県レベルの教育行政が一般行政に従属して独自性を喪失したことと、教育行政による学校支配の強化があげられます。特に、前者の傾向は、一九六〇年代を通じて高度経済成長政策下の地域開発施策に伴ってより具体化しました。その端的な変化は、地域開発行政を教育の部門で積極的かつ具体的に支えるものとして教育計画が策定され、そのもとで高校の多様化、学校統廃合の推進および教育予算の相対的低下等々をもたらしたことにみられます。
他方、学校支配の強化は、一般行政に組み込まれて施策化するこの教育行政の具体的展開を学校レベルにおいても貫徴させていこうとするものにほかなりません。それは、学校管理(校長、教頭の教員管理と児童、生徒への管理的指導)の強化、教育活動における学習指導要領、受験体制(選別の能力主義)の強化、行政研修(自主研究のチェック)の強化、拡大等となってあらわれました。
しかし、これらから結果したものは、児童、生徒の怠学、落ちこぼれ、非行の激増等に象徴される教育の荒廃であり、学校や教育行政に対する国民の一層の不信の拡大でした。

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このただならぬ教育の事態に直面したことと多様な地域教育運動によってつちかわれてきた国民の教育権の自覚化は、こんにち、あらためて教育と学校が誰のために何を行うものなのか、それを国民のものにするために地域住民は何をする必要があるのかを基本的に問い直すこととなったのです。それは、社会教育を住民自治の主作者となりうる大人の自己教育として確立し、学校教育を子どもたちの人間的な成長、発達にのみ奉仕するものとして発展させていく、という戦後教育の本質と憲法、教育基本法制の内実化を求めるものに接近してきたのです。これはまた、教育行政の中央集権化と一般行政への従属化を排して、その地方分権化と自主性の確保という教育行政における自治の原理にたちかえることによって、その実現が得られることを意味しています。さらに、これを学校においてとらえかえせば、何よりも、教師には、権力、行政との対面から地域住民、父母、子どもの側に正しく向きなおる、という対向関係の転回が求められているといえます。
このような経緯からも明らかなように、こんにちの教育の事態は、子どもと親を主体とする地域に密着した教育実践を創りだす学校に脱皮することを求めているといえます。このような学校は、地域の生産と生活を守りそれをわがものにしていく地方政治の確立の動向や地域の歴史、伝統、生活文化のほりおこしと創造を内容とする文化運動の展開、そして新しい地域づくりに発展させようとする、住民の政治的、文化的自治活動と内在的に結合して、はじめて創出されるものであろう。
そして、こんにち、このような学校を創出する出発点として大切にされねばならないことは、第一に、親の一人ひとりが自分の子どもをこんな子どもに育てたい、この地域の子どもたちにはこんな教育を受けさせたいしこんな生活をさせたい、といった点で親自身の意思をはっきりさせ、この親の要求や願いが地域のひろがりのなかで集約され、学校や教室の教育活動に反映されていくようにすることです。そして、第二には、教師は親と子どもの要求にもとづき、それにそって教育活動を展開するものだという思想を普遍化する(常識化する)ことです。これらは、教育における住民自治と学校自治におけるもっとも原初的かつ基本的な柱であると考えられます。これらを軸にPTA、教員組合の支部、地区組織、地域の文化団体、教育サークル、地区校長、教頭会等があらたな共同のもとで地域教育の再生にとりくむことがのぞまれているといえます。

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