平和と民主主義の教育

第二次世界大戦終了前の日本の教育が忠君愛国と服従道徳を基本とする「教育二関スル勅語」にもとづく軍国主義と極端な国家主義の教育であったことへの反省として改革された憲法、教育基本法にもとづく戦後教育の基本が平和と民主主義の教育です。教育とは、発達の可能性をもった児童、生徒に対し、その学習する権利を充足することにより、子どもの全面的な発達を促す高度な精神的活動であり、それは平和的、民主的な国家、社会の形成者を育成する営みです。平和的、民主的な国家、社会は、真理と正義が支配するものであり、真理を愛し、正義を希求する国民一人ひとりによって建設されるものであって、そのような国民をつくりあげるのが平和と民主主義の教育であり、その理念、内容、原則は憲法、教育基本法によって示されています。このことは、一九七六年五月二一日の「最高裁学テ判決」にも明確に示された。すなわち、教育基本法の内容は、戦前のわが国の教育が、国家による強い支配の下で形式的、画一的に流れ、時に軍国主義的又は極端な国家主義的傾向を帯びる面があったことに対する反省によるものであり、この理念は、これを更に具体化した同法の各規定を解釈するにあたっても、強く念頭に置かれるべきものであることは、いうまでもありません。

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平和と民主主義の意義を解明するためにはさらに、過去の軍国主義と極端な国家主義に奉仕した教育の弊害がいかなるものであったかを明らかにしておく必要があります。
教育制度および教育行政が著しく中央集権化され、強度の官僚統制のもとにおかれ、教育の自主性が尊重されず、学問研究の自由が不当に束縛され、地方の実情に即する教育が行われにくかった。また学校制度がいわゆる袋小路の復線型で、そこでは小学校を出発点に中学校、高等学校につながる指導者養成の学校体系と、小学校から青年学校等にすすむ大衆教育の学校体系がはっきりと区別され、その間に連絡がなく、教育の内容、学校の制変において男女間の差別が著しく、教育の機会均等が妨げられていました。
教育内容の面では、国定教科言のもと画一的、形式的に流れ、そのために子どもの自発的精神を養うことが少なく、個性を重んずる教育を行うことが困難でした。道徳教育の面では道徳の型がきめられ、それにあてはめることのみが追求され、内面的な自主的精神の養成に努めるところが欠け、縦の服従道徳のみが強調され、基本的人権に基礎をおく横の市民道徳が軽視ないし無視されました。知育の面では、神話にもとづく歴史をふくむ知識注入教育が支配的となり、真の科学的精神の発達をみるにいたりませんでした。
国家を唯一の価値の標準として、個人の尊敵も国家をこえる普遍的政治道徳を無視する教育を行った結果、自国の運命を第一義的に考え、国際間紛争を武力で解決するという武力崇拝と軍国主義の思想が教育のかかにとり入れられ、またそれと関連して、神社神道が国数的な地位を占め、それが学校教育にとりこまれました。
このような戦前教育の批判と反省の上に、平和と民主主義の教育は確立されていきました。すなわち、「ポツダム宣言」「第一次米国教育使節団報告書」などの影響を強く受けながらも、教育刷新委員会や国会での自主的審議、六・三制完全実施を強く要請した国民の教育要求の高まりのなかで、団結権を得た教職員組合の教育民主化のたたかいを伴って戦後日本の教育改革は、憲法、教育基本法、学校教育法、教育委員会法、社会教育法などの成立により進行していきました。その総体が平和と民主主義の教育といえますが、教育の目的に即してみれば、戦前の忠君愛国の軍国主義的、国家主義的なそれにかわって、人格の完成をめざす平和と民主主義の教育目的、目標が教育基本法、学校教育法によって定められました。
憲法二六条は教育を受ける国民の権利を規定し、教育基本法前文は「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである」とし、一条は、その平和と民主主義の教育目的を明示しました。そして、学問の自由と教育の自主性、六・三・三・四の単線型学校制度、真理・真実・自主性・自発性の教育内容・方法、官僚統制の排除と民衆統制・住民参加の教育行政、教師の自主性と民主的権利、学術の中心としての大学、権利としての社会教育、公費教育主義など、教育の制度、内容の全面にわたって平和と民主主義の教育原則がうたわれました。

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