教育の公共性

教基法六条は、学校の性質と教員のあり方について規定しているが、その第一項は「法律に定める学校は、公の性質を持つものであって、国又は地方公共団体の外、法律の定める法人のみが、これを設置することができる」となっています。また私立学校法の第一条には、その目的規定として私立学校の特性について「その自主性を重んじ、公共性を高めること」に触れています。これまで、学校の「公の性質」についての解釈は大別して二つに分かれ、学校の設置主体が公共的性格をもっているから「公の性質」をもつものとする説と、学校で営まれる教育事業そのものが「公の性質」をもっていることを基本におく説とがあります。前者は教育事業主体説、後者は教育事業説とよばれてきました。もちろん一般に、事業の内容と、認可する主体とは無関係ではありえません。したがって学校を設置ないし認可する主体と学校教育の事業とは無関係ではありませんが、問題はどちらを基本におくかということであり、この両説の基底には、憲法、教基法制下の「教育の公共性」という概念をどうとらえるかという問題が横たわっています。例えば私立学校の公共性について「国が自ら行うべき事業を、国に代っているものと解せられるから、私立学校は公共性を有する」とする見解は、事業主体説に立って「公共性」を演鐸的に律しようとした一例です。しかしこのような解釈では、私立学校の「公共性」と同時にその特性としての「自主性」を適切かつ整合的に説明することはできません。ここには私立学校の歴史的沿革に対する誤認があるだけでなく、私立学校の「自主性」を支え発展させてきた教育の「公共性」についての認識、つまり教育という事業そのものについての基本の認識を欠いているからです。

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憲法に保障された「教育を受ける権利」はなによりも主権者としての国民一人ひとりの権利であり、その意味では「私」的権利でもりますが、その権利の実現のためにこそ、社会公共的な努力と営為が必要とされます。したがって「教育の公共性」とはこのように私的権利であるとともに社会公共的な営為によってのみ保障される国民共同の事業そのもののなかに備っているのであり、「学校の公共性」は、その事業の内容を中心に制度的保障の意味が適切に解釈されうるものです。
このようなことから、「学校の公共性」の意味と内容は、歴史的には近代から現代への学校の性格の継承、変化、発展に照らして、また現在的には、地域、家庭を含む社会のすべての人間形成力のなかでの、学校の役割と機能の認定の上にとらえることが重要となります。
ここで注意されるのは、教育事業主体説が、その本末顛倒の論理をなかだちとして「国家の教育権」論を補強し、「学校の公共性」の名のもとに現行法制の基本理念としての教育の自由と権利の否定におよびがちなことです。また教育が「公共性」をもつからといって、それは一人ひとりの子どもやその保護者としての親の「私」的自由を無制限に制約しうるものではありません。子どもの内心の自由と真実や、身体的自由を制限することは許されないし、学校や教師が特定の宗教的行事への参加を強制してはなりません。教育の自由は、歴史的には教育に対する公権力からの自由、教育の自律性の観念を発展させるのに役立ってきたものであり、それと「教育の公共性」の概念とは本質的に矛盾するものではないことをとらえておくことは重要です。それらは相対立するどころか、今日では子どもの発達と教育の自由と権利の社会的保障の観点と結びつくことによって、つまり教育事業の中身とあり方を深くとらえかえすことから「教育の公共性」という概念がとらえかえされつつあることは注目されます。

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