入試制度

日本では現在、高等学校などの後期中等教育機関、および大学などの高等教育機関は、学力検査その他の入学試験を実施しています。第二次世界大戦後の教育改革によって制定された高等学校の選抜制度の原則は、選抜のためのいかなる検査も行わず、中学校からの報告書によって入学者を決定するというものでした。この報告書には、教科学習成績その他とともに、都道府県ごとに入学志願者全体に対して行う学力検査成績も含まれていますが、いずれにしても判定資料はこの中学校からの報告書であった。しかし、一九五四年の改正によって、選抜主体が高等学校長となり、学力検査の性格も明確に入学者選抜のためのものとなりました。学校教育法施行規則五九条には、「高等学校の入学は、調査書その他必要な書類、選抜のための学力検査の成績等を資料として行なう入学者の選抜に基づいて、校長が、これを許可する」と定められています。また同条三項では「公立の高等学校に係る学力検査は、当該高等学校を設置する都道府県又は市町村の教育委員会が、これを行なう」としており、「学力検査、その教科の決定ほか、選抜方法については都道府県教育委員会が必要に応じて決定できる」とされています。
大学などの高等教育機関については、一貫して学科試験を中心とする入学者選抜制度が打ち立てられてきました。学校教育法施行規則六七条は、大学について、「学生の入学は、教授会の議を経て、学長が、これを定める」と規定しています。
要するに、大学と高等学校の入学者選抜の主体は、入学させる機関にあり、公立高等学校の学力試験の実施主体は設置者(教育委員会)となっています。

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憲法や教育基本法で、国民の教育権、教育の機会均等の原則が定められていますが、「その能力に応じて」の規定から、入学者選抜試験はこれに反しないとされています。しかし、「入試地獄」とか「受験戦争」とかの言葉に示されるように、今日、上級学校の入試合格が父母、教師、子どもの最大の関心事となり、最優先課題にまでなっています。そして入学試験の存在とそれがもたらす影響が、教育を歪め、子どもの学力や人格を荒廃させているとして、大きな社会問題になっています。そこで、高校入試における調査書(内申書)重視や都市部における総合選抜制度(学校群方式)の採用、大学区割から中学区割へといった学区制の手直し、あるいは大学入試における国公立大学共通一次試験の実施、等々の入試制度改革が「入試地獄の解消ないし緩和」の名のもとに進められています。
確かに、高校入試における総合選抜制度の採用や学区の縮小などは、学校間格差を小さくし、入試競争の一定の緩和につながるし、大学入試においても、難問奇問を排することはもちろん、選抜試験から資格試験への性格の転換も検討されなくてはなりません。しかし、第二次世界大戦直後の高等学校入学者選抜制度の原則は、いわゆる高校三原則(総合制、男女共学制、小学区割)と、希望者全員入学割の理念を基礎とするものでした。一九五〇年前後からの高校三原則を否定する諸政策の推進、例えば、職業単独校や女子単独校の増加、学区の拡大などとそれによる学校間格差の拡大、高まる進学要求に応えられない収容量の不足、そして学歴や出身学校のいかんが、卒業後の職業や社会的地位を左右する社会状況、等々の事態のなかにあっては、入試制度の単なる技術的改革だけでは、今日の深刻な問題を解決しえません。高校三原則や全員入学制、大学間格差の是正など、学校制度の抜本的改革を展望する必要があるといえます。

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