学校の内部管理の意義

学校管理は、設置者管理主義の原則にもとづき、国立学校は国が、公立学校は都道府県または市町村が、私立学校は学校法人が管理することを意味する場合が多い。ここでは、私立学校を除けば、複数の学校の行政管理が基本となっています。これに対して、学校の内部管理は、一つの学校の管理を意味するものです。教育の本質からいって、教員の教育活動には自主性、主体性が不可欠であるとするならば、その教育活動を保障すべき学校の内部管理においては、自主性、主体性のある内在的管理権が認められなければなりません。学校管理権の本質を教育企業管理関係ととらえ、学校を教育責任を果たす主体的単位として教育自治体とよぶ見解によれば、教育課程管理面での学校組織権限関係は教員組織による教育自治関係と表現でき、そこで一定に認められる包括的権能の行使は、教員組織の教育権限の独立を前提とした学校関係者の教育自治の範囲にあって、自治的法律関係である慣習法や条理法による制約を受けるのです。

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行政解釈によれば、公務員の勤務関係や国公立学校の児童、生徒の学校、営造物の利用関係は特別権力関係であるとされます。特別権力関係とは、一般権力関係(国民が国または地方 公共団体の一般的統治権に服する関係)に対して、特別の法律原因(法律の規定または本人の同意)にもとづき、公法上の特定の目的に必要な限度で、一方に包括的な支配権が与えられ、他方がこれに服する関係をいい、この理論を特別権力関係論というのです。権力の発動形態としては、命令権と紀律権(懲戒権)があります。この理論は、一九世紀ドイツにおいて、行政権の優位を保持する考えのもとに成立し、戦前の絶対主義的天皇制下の日本において採用されたものです。昭和三一年の地方教育行政法成立以降、それは事業経営論による説明も行われています。すなわち、事業経営における使用者と労働者との関係に公務員の勤務関係を類似させ、前者において任用関係が発生した場合、使用者が包括的支配権を行使することを認められることは後者でも同様であり、公法の世界でこのような包括的支配権か一方の当事者がもつとき、そこに特別権力関係があるとされるのである特別権力関係においては、法治主義の原則は妥当せず、いちいち法律の根拠がなくても基本的人権を制限しうる包括的支配権が働く。教職員の権利は職務命令によって、児童、生徒の権利は学則等によって制限されうるわけです。特別権力関係論は、教育委員会の学校管理権を強化することによって、教育の現場に上命下服の支配服従の関係をもたらし、学校の内部管理における自主性、主体性および教職員の権利を抑圧し、児童、生徒の学習権を形骸化する役割を果たすのです。
このような特別権力関係論は、理論的にはすでに克服されている。公務員の勤務関係については、法令によって規律された労使契約関係としてとらえる説が有力です。この説によれば、公務員に対する職務命令も、私企業の使用者による労働者への業務命令と性質上異ならなく、特別権力関係によってではなく、労働契約関係によって基礎づけられるのです。国公立学校の利用関係、在学関係についても、この基礎視角は妥当するといわれます。すなわち、在学関係は、国公立と私立を問わず、非権力的な在学契約関係として把握されます。そこでは法規の根拠がなくても、児童、生徒の基本権の教育上必要最小限度の制限は認められますが、それは契約によって授権されていると解するわけです。このことは、義務教育諸学校の在学関係にも、それを契約強制とよびうるならば、妥当するのです。この説は、教育法学の有力説とも基本的に一致しています。すなわち、後者では、国公私立学校の在学関係はいずれも契約関係の一種である附合契約関係であり、対等者間の非権力的契約関係であるとされ、しかも一般私法特別法としての教育法上の契約関係と解されているのです。
特別権力関係論と結びつき、それを支える役割を果たしているのが学校重層構造論です。この説によれば、学校経営は国、都道府県、市町村、学校という四重の重層構造を持つとともに、学校の内部は経営層(校長・教頭)、管理層(部長・主任)、作業層(一般教職員)の三層に重層化しており、教育課程管理における内部報告制度も重層構造となり、これには校長、教頭、教務主任、学年主任、教科主任等が参加するのです。
重層構造とは、私企業と学校との間の経営目的の違いを無視して、企業体の経営管理論を学校経営にそのまま適用するものです。その結果、学校に官僚制が持ち込まれ、重層的な内部報告制度によって、学校内部の上命下服の管理体制は強められます。そして効率的な学校経営のために、経営層、管理層の権限は強化され、学校経営の重要事項はほとんど事実上主任会、運営委員会等で決められ、職員会議は形骸化され、教員の教育の自由は制約されるのであす。かくして、重層構造論は特別権力関係論と容易に結びつくわけです。しかし真理、真実にもとづく教育は、教員の教育の自由を不可欠とします。したがって、担任学年、教科、経験年数の長短にかかわらず、教員の責務に本質的ちがいはなく、校務分掌のちがいは教員間に上下関係をもたらすものではないのであり、学校経営においては、本来重層構造詣はなじまないものであるといわざるをえません。

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