学校の内部管理における児童生徒の地位

学校の内部管理は、教育目的達成のための学校の創造的な教育活動を守り育てる行為でなければなりません。いいかえれば、学校の内部管理は、このような教育活動にふさわしいものであるべきです。その教育活動において、児童生徒が、たんなる教育の受け手としてではなく、教育要求の主体として位置づけられるとするならば、学校の内部管理も、児童生徒の教育要求にこたえるものであることが不可避的に要請されるのです。かくして、児童生徒の学校運営への積極的参加の必要性が導かれうるのです。その参加の内容は、学校の客観的条件と、児童生徒の主体的条件によって具なるでしょう。また、民主的な主権者としての国民の育成にとって、自治能力、統治能力の形成は不可欠です。そのため、教育活動において、自主的精神、自発的精神自主、自律の精神を養うことが重要とされ、児童生徒の自治活動が重視されるのです。この児童生徒の自治活動は、学校という教育自治体の活動の一環に位置づけられるべきなのです。
ところで、児童生徒の在学関係をどのように把握するかは、学校の内部管理における児童生徒のとらえ方、児童生徒の権利保障のあり方、とりわけ懲戒の場合に影響を与えます。特別権力関係説では、児童生徒を管理の対象としてとらえ、法律に根拠がなくてもその権利を制限しうる包括的支配権を認め、内部的紀律の範囲の懲戒処分については、司法審査がおよばないというのです。在学契約関係説では、児童生徒を教育要求の主体としてとらえることができ、教育上必要最小限度の命令による権利の制限は、法令に違反しないかぎり、契約上のものと理解され、懲戒処分は非権力的行為と解されるのです。

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教育課程において児童生徒の自治活動が重視されるようになるのは、戦後のことです。この活動を中心とする特別教育活動が現われるのは、昭和二四年の学校教育局長通達によって中学校の教育課程に組み込まれたのを始まりとします。昭和二六年の学習指導要領一般編では、それは高校にも設けられ、主要な活動としてホームルーム、生徒会、クラブ活動、生徒集会があげられていました。小学校でも、この種の活動に相当する教科以外の活動が設けられました。昭和三三年の小学校および中学校の学習指導要領になって、この種の活動は特別教育活動という名称に統一され、その内容は児童会活動(小学校)、生徒会活動(中・高校)、学級会活動(小学校)、学級活動(中学校)、ホームルーム(高校)、クラブ活動(小・中・高校)とされましたが、児童生徒の自治活動の一部は学校行事等の領域に吸い上げられました。昭和四三年の小学校学習指導要領では、特別教育活動の名称がなくなり、新しく設けられた特別活動の一分野として児童活動(中学校では生徒活動)が位置づけられ、その内容は児童会活動(中学校では生徒会活動)、学級会活動(中学校でも同)、クラブ活動(中学校でも同)の三つに分けられました。自治活動のこのような位置づけは、昭和五二年の小学校および中学校の学習指導要領に受け継がれました。このように、教育政策は児童生徒の自治活動の側面を弱め、その範囲を狭めてきたのです。
自治活動の発展には、児童生徒の個々の要求を組織化し、集団的要求に高めることが必要であり、その際教員の適切な指導が不可欠です。自治活動の発展が、その担い手たる自治集団の形成と表裏一体の関係にある点からいえば、民主的主権者に子どもを育成するために、子ども集団の自治権が保障されるべきであるという主張は、注目されます。もちろん、その自治権の行使は、学校の教育活動の発展を支えるものでなければなりません。
児童生徒の懲戒は、学校の教育目的達成のための教育作用の一環としてなされるべきものである懲戒は、しかったり、起立させたりする事実行為としての懲戒と、退学、停学等の法的効果を伴う懲戒とに大別されます。前者において、体罰が禁止されていますが、その解釈は児童生徒の人権保障の観点から、厳格になされなければならない体罰にならない正当な懲戒は、外形上犯罪の構成要件に該当しても、違法性が阻却され、犯罪となりません。
法的効果を伴う懲戒(児童生徒の特定の学校において教育を受けうる権利に変動を与える懲戒)として、退学と停学があります。これら退学、停学、および事実行為としての訓告は校長が行うとされています。教育権の独立説では、これらの懲戒処分は職員会議の議決により、校長が対外的に表示するのです。退学処分の事由は、四つに限定されています。また、公立学校に在学する学齢児童、生徒に対する退学処分、およびすべての学校の学齢児童、生徒に対する停学処分はできないとされています。これらは、義務教育段階の見識、生徒の教育を受ける権利保障の趣旨によるものと解されます。
体罰等の違法な懲戒に対しては、犯意、生徒は、損害賠償を請求することができます。違法な退学処分に対しては、児童、生徒は、地位確認、あるいは無効確認または取消の訴訟を起こすことができます。

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