幼稚園の送迎バスの事故

幼稚園の送迎バスが追突事故をおこし、それに乗っていた登園中の園児が数名ムチウチ症になりました。被害園児の父母で共同して、治療費を幼稚園に請求していますが、なかなか話がつきません。裁判で争いたいと思いますが認められるでしょうか。
幼稚園の送迎バスの事故による園児の損害について幼稚園に責任が生じるのは、送迎バスの運転者に過失があった場合に限られます。もっとも、運転者の過失の有無をだれが立証すべきかは、被害者側が幼稚園に対し、どの理由で責任を追及するかによって違ってきます。

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送迎バスが、園児の父母と幼稚園との間の保育契約または付随する契約にもとづいて、例えば、バス代などを徴収して運行されているときには、幼稚園側で運転者の無過失を立証できなければ、幼稚園に債務不履行責任が生じます。幼稚園は契約にもとづいて安全に園児の送迎をすべき債務を負っており、運転者は多くの場合、幼稚園の履行補助者として幼稚園の債務の履行にあたっているとみられるからです。そして、治療費は幼稚園の債務不履行によって生じた損害のうちに合まれますから、幼稚園は損害賠償としてその支払いをしなければなりません。かりに、幼稚園のサービスとして送迎バスが運行されていたとしても、運行が継続的なものなら、父母と幼稚園の間に送迎契約が成立しているとみられることが多いでしょうし、実質的にみても、保育料のうちにバス代は含まれているといえましょう。また、園児を父母から預った時期は、園児がバスに乗車した時とみられますから、保育契約そのものにもとづく義務が生じるともいえます。したがって、その場合でも、園児を単なる好意同乗者とみることは適当でなく、幼稚園に債務不履行責任の生じる余地が大きいと考えられます。
以上のような契約の有無とはかかわりなく、運転者が幼稚園の被用者である場合には、運転者の過失によって生じた損害について、幼稚園には使用者としての責任が生じる可能性もあります。もっともこの責任は、運転者に過失のあったことを被害者側で立証しなければなりません。加えて、実際にはほとんど認められませんが、幼稚園が運転者の選任、監督について注意を怠らなかったことを立証すれば、使用者の責任が成立しないことになっています。また、国公立の幼稚園であれば、国家賠償法にもとづいて、国や地方公共団体の責任を問うことができます。これらの場合には、いずれも被害者側で運転者の過失を立証しなければなりませんが、加害者側の運転者選任、監督についての無過失を理由とする免責はありません。なお、幼稚園が法人組織で理事長である園長などがみずから運転者であったようなときには、法人である幼稚園の責任が成立します。
以上の使用者責任に比べれば、幼稚園の自動車損害賠償保障法による責任を追及することは容易です。幼稚園がバスの保有者であればもちろん、かりに他人名義であっても、バスが園児送迎のため運行されていた以上、幼稚園が運行供用者とされる可能性がきわめて大きいからです。そして、運行供用者は、自己および運転者が運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があり、自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかったことを証明しない限り、事故による人身損害についての責任を免れえません。治療費は、これらの責任による損害賠償として請求することもできるわけです。
もっとも、追突事故の場合、追突された車の運転者には過失がないとされる例が多いので、本問でも、幼稚園のバスがぶつけられた側であれば、いずれの責任も成立しないことも十分考えられます。
なお、以上の三つの責任のうち二つ以上が成立するときは、どの責任を追及することも可能です。ただ、学説のなかには、債務不履行責任が成立するときは、不法行為責任が成立しないとするものもあります。ただし、時効の期間が債務不履行責任とそれ以外とでは、前者は一〇年ですが、後者は三年という違いがあります。
幼稚園に対し裁判で治療費を請求する場合、父母が、自ら治療費を支払った直接の被害者として、または被害園児の法定代理人 として共同で訴訟を起こすことも、同一事故の被害者という同一の事実上の原因にもとづいていますので、認められます。ただし、治療費の額は各人で違うでしょうし、判決が全員に同時に確定しなければならないわけでもありませんから、その場合の共同訴訟は、事実上各原告の訴えが同時に審理され、共通の証拠を互いに利用できるというだけです。場合によっては別々に審理されることもありますし、父母の一部が訴えを取り下げたり、幼稚園と和解しても、他の父母の訴えには影響を及ぼすわけではありません。

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