園児の安全を守る義務

私の子供は、保育室のストーブにあたっていて、その上のやかんが倒れ大やけどをしました。顔面にやけどの痕が残っているため子供の将来を考えるといてもたってもいられません。この気持をみたす方法はないでしょうか。
学校教育法七七条は、幼稚園の目的として「幼稚園は、幼児を保育し、適当な環境を与えて、その心身の発達を助長することを目的とする」旨規定し、七八条は、この目的を実現するために達成すべき目標として「健康、安全で幸福な生活のために必要な日常の習慣を養い、身体諸機能の調和的発達を図ること」を第一にあげています。このことは、幼稚園が安全な保育環境であってこそ達成できることです。そして保母は、この安全な保育環境を形成、維持すべきものの一人といえます。本問のように、保母が保育室のストーブの上に沸騰したやかんを置いたまま保育活動を続けていたことは、園児のために安全な保育環境を保持すべき義務をつくさなかったこととになり、重大な過失がみとめられると思います。とりわけストーブのような危険物に対しては、よりいっそうその管理に注意が払われるべきであり、保母の注意義務は、高度のものが要求されるといえましょう。

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五歳の私立幼稚園児が保育室のストーブの上に置いてあったやかんにつまずいて転倒し、流出した熱湯により火傷を受けた事件について、裁判所は、保育室に熱湯の入っているやかんを置いたことは園児の安全をまもるため十分の注意をつくすべき立場にある保母に重大な過失があること、五歳前後の幼児に口頭で注意を与えただけでは到底園児の安全をまもる義務をはたしたとはいえないと判示しました。そして保母の責任を認めるとともに、幼稚園自体にも保母を使用するものとして責任を認めました。
負傷をした子供は、みずからが被害者ですから慰謝料を請求することができますが、この場合さらに、父母が慰謝料を請求することができるかどうか問題になります。民法七一一 条は、子供が死亡した場合に父母に慰謝料請求をみとめていますが、子供が負傷をした場合については規定していません。しかしながら、子供が傷害をこうむったとき でも、死亡した場合におとらない程度の精神的苦痛を父母がこうむる場合も考えられます。裁判所は、こういう場合、例外として民法七一一条を類推適用して父母に慰 謝料請求をみとめています。ここにあげた類似の事案の判例は、子供に右腕と両足の一部にやけどの痕が残った程度では両親に慰謝料請求をみとめがたいとしましたが、化粧品店の店員が店内で過失により机上の電気ポットの熱湯をひっくり返したため、近隣の幼児(一歳の女児)の足や胸に癩痕や足の機能障害を残す大やけどをお わせた事件では、幼児の両親に慰謝料請求をみとめました。一般に判例は、子供の身体傷害による父母の慰謝料請求を容易にみとめませんが、子供が重傷をおい、程度の高い後遺症をうけた場合に例外としてこれを肯定しているといえましょう。
子供が大やけどをしたうえ、顔面にやけどの痕をこうむっているのですから、父母の精神的苦痛は、将来子供が成人しても消えることなく残ることが考えられます。本問では、子供が死亡したと同様の精神的苦痛を父母がうけているといってよいでしょう。したがって、あなたに慰謝料請求がみとめられるでしょう。このほか、治療費等の実費も損害賠償請求をすれば認められます。請求は、担当の保母を相手にしてもよいし、幼稚園に対し使用者責任を問うこともできます。なお、国、公立の幼稚園で事故が生じた場合には、国家賠償法二条により公の営造物の設置、管理の瑕疵にもとづき国または公共団体の責任を追及することができるでしょう。

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