保育時間中の保母の注意義務

私の子供は、保育時間中、保母がちょっと眼を離したすきに隣の園児とふざけあい、鉛筆で眼をつかれ、失明に近いけがをさせられました。ふざけあっていた私の子供が悪かったということで、だれにも責任を追及できないでしょうか。
園主や保母は保育時間中は園児の安全を保持すべき義務があります。それで親は安心して子供を保育園に通わせることができるわけです。しかし事故というものはいかに注意しても皆無にするということはできないものです。子供に事故が起こった場合、それが園主や保母の園児に対する安全保持に欠けるところがあったからだとされますと保母や保育園主に損害賠償責任が生じます。
そこでこのような事故において保母や園主に安全保持義務違反としての過失があったかどうかが問題になります。まず保母に過失があったかどうかですが、園児のように自分を安全に守る能力が非常に小さい者を保護する者にとっては大きな注意力が要求されますが、通常の保母として不可能な度合までも要求されるわけではありません。このケースについてみますと、保母としては、保育時間中に園児が鉛筆でふざけあっているような場合、危険が予想されますから当然それをやめさせるよう注意すべきです。ですからそれを放置しておいたためこの事故が起きたのなら、保母の過失ある行為によって損害が生じたといえるわけです。
しかし、なんら危険を予想できるような事態もなく突然このような事故が起こったとしたらどうなるでしょうか。保母といっても、常にすべての園児を見張っていることは不可能ですから、結果の発生を防げえなかったものとして、過失責任を問うのは困難になります。次に園主の責任ですが、園主は全体としての園児の安全管理の義務を負っています。すなわち、保母の員数は園児の安全保持に十分な数であったか、または授業計画に無理はなかったか、例えば、年齢の非常に低い園児の場合においては、そもそも先のとがった鉛筆とかナイフ類等を使わせること自体無理があったのではなかったかなどです。もっとも、小学校入学直前の園児などに対しては文字を教えることもあり、必ずしもすべての場合に鉛筆を持たせたことが過失だとはいえないでしょう。

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児童は、自分の行為の法的責任を理解するに十分な知能を有しません。そこで、この知能(責任能力)のない者は、賠償責任も負いません。この責任能力は、通常、一二歳前後の年齢において具わってくるとされていますので、それよりはるかに年齢の低い園児には、責任能力はないわけです。このような責任能力のない者の行為によって損害を蒙った場合、被害者がなんら賠償を得られないとするのは社会的にみて公平を欠きますので、かわりに責任無能力者を監督する義務のある者が賠償責任を負うことになっていま)。子供の親は親権者としてこの責任を負っています。この親の子に対する監督義務は、子の個々の行動についてのみならず、全生活面に及ぶものであり保育園や学校など親の眼の届かないところでの傷害行為についても存在するわけであって、監督者が監督義務を怠らなかったことを立証できたときのみ免責されます。したがって、この立証は非常に困難で、親はなかなかこの責任を免れることができません。
保育園や学校においては、保母や教員が親にかわって園児や生徒を監督し園児が他人に加えた損害につき賠償する責任があります。そして、この責任は親の監督者としての責任と連帯するもので、これらの者に責任があるからといって親の監督者責任がなくなるわけではありません。さらに、保母、教員がこの責任を負う場合は、園主、市町村も使用者としての責任を負います。この保母や教員の代理監督者も監督義務を怠らなかったときしか免責されませんが、親の監督義務と異なり保育教育活動に関する範囲でしかこの義務は存在せず、裁判例においては、しばしば、この義務を怠らなかったとか、この義務は存在しなかったとされます。そのような場合には親が単独で賠償責任を負うことになるわけです。そこで本問において保母の監督義務についてみますと、加害児童を監督すべきであったというのは無理のように思われます。
以上述べましたように、責任を問う相手としましては加害園児の親、保育園主そして公立保育園の場合は市町村にそれぞれ賠償請求をしてみることです。幼児の行為といえども失明に近い傷害をあたえる行為は違法性がありますので、たとえ前に述べましたように保母に過失がなく、また監督義務を怠らなかったとして保母の監督者責任、さらに園主、市長村の使用者責任は否定されたとしても、少なくとも親の監督者責任を問うことはできるでしょう。さらには、園主自身の過失責任、すなわち、保母の数は十分であったか、授業計画は十分であったかなどの点について保育園の責任を問うことができるでしょう。ただ、この場合のように、園児同士でふざけあっていたようなときは、被害児童にも事故発生の原因の一端があることも考えられ、その場合には、過失相殺されることもあります。

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