保育時間終了後の事故

保育時間終了後、母親の迎えを待っていた子供が、保育園内のすべり台の手すりの外枠に鞄の紐をひっかけ、首が締って窒息死しました。その親から損害賠償の請求を受けましたが、保育時間終了後も園の責任になるのでしょうか。
保育が無事終わり、母親が迎えにくるのを待っている園児がすべり台で死亡するというのは、本当にいたましい事故ですが、この事故を法律上考えますと、園の責任は免れそうもありません。逆にいえば、死亡した園児の両親は、損害賠償請求ができるということになります。
そこで、この死亡した園児の両親が損害賠償請求で争う場合に、どのような主張で争うかをみますと、これには工作物の設置保存の瑕疵(すべり台という工作物が不適切であるということ)、営造物の設置管理の瑕疵、保母の注意義務違反と使用者責任(保母が園児に対し十分な注意を払っていず、このような保母を雇っている園の責任)の三つが考えられます。

スポンサーリンク

園児がすべり台の手すりの外枠に鞄の紐をひっかけて死亡したというような事故の場合は、まず、この工作物の設置保存の瑕疵があるか否かという点が最初に考えられます。民法七一七条をみますと、これには「土地ノ工作物ノ設置又ハ保存二瑕疵アルニ因リテ他人二損害ヲ生シタルトキハ其工作物ノ占有者ハ被害省二対シテ損害賠償ノ責二任ス」と定められています。
そこで、すべり台がここでいう「土地ノ工作物」に当たるかということと、すべり台が工作物であれば、この工作物の設置保存に瑕疵があったか否かということにより、損害賠償請求ができるかどうか、が決定されます。民法七一七条にいう工作物とは、「土地ノ工作物」をさし、土地に接着して人工的に作られた物をいいますが、これには家屋、堀、橋、トンネル電柱などが入ります。さらに、建物内のよろい戸、エレベーターなども入り、すべり台は「土地ノ工作物」といえます。
このすべり台が工作物として瑕疵があるかどうかということですが、瑕疵というのは、その物が本来備えているべき性質または設備を欠くことをいいます。この言葉の内容は、時代と場所によって変わるのですが、能力、体力、その他の条件からみて園児は、通常の大人よりはるかに劣るため、外枠に紐がひっかかるような型のすべり台は、瑕疵ある工作物といわれても弁解できません。ですから、園としての損害賠償義務は免れないでしょう。
この園が、地方公共団体の設置する幼稚園、保育園でありますと、国家賠償法二条にいう営造物の設置管理の瑕疵による責任を追及されることになります。もっとも、地方公共団体の設置する幼稚園、保育園だからといって、必ずしも国家賠償法によることはなく、民法七一七条の工作物の設置保存の瑕疵で争ってもよく、この選択は原告(死亡した園児の両親等)に任されます。
この事件の場合に、園児が死亡したのが保育時間終了後ということですので、保母の責任いかんということも考えられます。しかし、保育時間後でも、現実に園に園児がいて母親が迎えにくるまで保母がみていたとすると、園児の死亡に保母、園の責任がなかったとはいえません。法律上は、保育時間が終了しても、その後の時間について、保母、園に保育に近い状態があるという黙示的合意があって、互いに暗黙のうちにこれを認めていたとみなされます。
以上の説明により、この事件の場合は、工作物、営造物の設置保存、管理の問題として法律上十分な結果が得られるため、保母の責任を追及する意味がありません。
保母の責任を追及するには、民法七〇九条、国家賠償法一条によりますが、ここでは保母の故意、または過失を主張することになります。ですから、この事件の場合には、保母の責任を追及することは適切ではなく、また、保母の責任の求め方に園、地方公共団体には求償権の行使が定められていますが、この行使には制限が多く、そう簡単には使用できません。
以上のことから、この事件での園の責任は免れないことになりますが、事故が発生し愛児を失くした両親のことを考えますと、園、地方公共団体が賠償責任を負うのが社会的には妥当なことだといえます。

幼稚園の送迎バスの事故/ 登下園中のつきそい保母の責任/ 園児の安全を守る義務/ 保育時間中の保母の注意義務/ 保育時間終了後の事故/ 無認可保育園での事故/ 会社内にある無償の臨時保育所でのけが/ 通学中の事故防止と学校の責任/ 職業技術授業中の事故/ 教師個人の責任/ 体育教員の注意義務と責任/ 水泳授業中の事故/ 必須クラブ活動中の事故/ 示談解決の約束の効力/ 掃除中の事故での賠償請求の相手/ 教員の監督責任/ 臨海学校における引率教職員の注意義務/ 臨海学校中の旅館の事故/ 課外活動での事故における引率教員の責任/ 学校での休憩時間中の事故/ 禁止されている朝礼台に登ってのケガ/ 校舎工事中の事故/ 遊戯中のケガ/ 放課後に野球していてケガ/ 放課後の校内で遊んでいての事故/ 校庭で教師の車にはねられる/ 校庭解放中の事故/ 体罰を受けたが/ 体育授業における担当教員の注意義務/ 危険な種目と担当教員の注意義務/ 乱暴なプレーでのケガ/ 登山中の事故/ 運動部でのシゴキ/ 大学対抗ラリー中の事故/ 放課後に学園祭の準備をしていて失火/ 課外活動中の事故/ 机運び中の机の落下/ 競技連盟主催の公式協議中に事故/ 国体に参加し公開練習中に事故/ 先生の懲戒行為と違法性の関係/ 各種学校行事と経営者の責任/ 主催者の事前の注意義務/ スキーヤーとぶつかり重傷/ 塾生の引率教員の注意義務/ 幼児の体育指導とその注意義務/ 遊園地の遊具による負傷/ 近所の子と市営プールに行き溺れる/ 市民会館の階段で子供が転落/ ドブ川に転落/ 公園内の池に転落/ デパート内のエスカレーターで足を踏み外す/ デパートの一時保育所で窒息/ デパート内で客のペットが幼児に咬みつく/ 食堂でお湯をこぼされ火傷/ スケート場で衝突し骨折/ 野球観戦中にボールが飛んできてケガ/ 海水浴場で救助船が遅れて水死/ 登山標識が間違っていて遭難/ スキー事故の原因と責任/ ゲレンデでパトロール員と衝突/ 公団住宅の庇がはがれてケガ/ 友人宅の自家用プールで水死/ 塀を乗り越え無断で空地に入り事故/ 工事のために掘削された穴に落ちたが/ 私有地のため池に落ちたが/ 工場敷地内の危険物に触れてケガ/ 他人の土地でも危険防止措置の要求ができるか/ 野球をしていて盆栽や窓ガラスを壊した/ 子守りを頼んでいた間に交通事故/ 隣家の飼犬に顔をひっかかれた/ 動物園のクマに咬まれた/ 踏切の下をくぐって轢かれる/ 路上で遊んでいてはねられた/ 飛び出し事故にも賠償請求ができるか/

       copyrght(c).子育てと育児.all rights reserved

スポンサーリンク