体育教員の注意義務と責任

私は、市立中学校の体育の教師です。ある日の授業中、生徒の一人が砂場で走り高とびをして着地したとたん、砂中にうずもれていたシヤベルに接触し、右足に大けがをしてしまいました。私には賠償責任があるのでしょうか。
最近、学校の体育授業中に、死傷事故の生ずるケースが増えてきています。その事故原因は、いろいろあるわけですが、本問の場合は、体育施設によって生じた事故の類型に入ります。そこで、この場合、誰に賠償責任があるのかということになります。まず体育授業で生徒に体育施設を利用させるときの体育教員の注意義務の問題および学校の体育施設管理上の義務の問題を考える必要があります。

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体育の時間で生徒に走り高とびをさせ砂場を利用させる担任教員としては、利用する砂場については、事前はもとより中途においても、危険物が埋没していないかなどに注意し、砂場の安全性の確認につとめるべき義務があります。このためには、自ら直接にあるいは監督指導のもとで、事前に砂場を損り起こし、危険物の混入を取除くなどの作業をする必要があります。また、その際に使用したシャベルなどの整理についても確認し、砂中に埋もれていないかを確かめる義務があります。このため、このような義務を怠っていたということになりますと、体育施設を生徒に利用させるにあたっての安全確認義務に対してのものとして過失がみとめられ、民法七〇九条によって賠償責任が負わされます。埋もれていたシャベルによる事故ということになりますと、すこし注意をすれば未然に防止できる可能性が大きいわけですから、賠償責任を負わされるのは必然ともいえます。これに対し、例えば砂にまじっていた石などの固い異物によるような場合には、前述の注意さえしておれば賠償責任から免れることができるでしょう。
教師に過失がみとめられますと教師個人は被害者に対し賠償義務のあることは当然ですが、その教師を雇っている市の賠償責任も問題となってきます。教師の過失による市の賠償責任の法的根拠としては、民法七一五条によるか国家賠償法一条によるかで議論のわかれるところですが、この違いは、市が被害者に賠償した場合、市はあなたからその賠償額を取立てる権利(求償権)があるかどうかの問題で、法律上は異なってきます。
民法七一五条による場合は、法律上は、つねに求償できることになっています。国賠法一条による場合は、その事故発生に際し、あなたに故意か重過失があったときにだけ求償できるのです。このことから考えますと、国賠法を法的根拠としたときは、通常は、市はあなたに取立てる権利はないことになります。そして、国賠法を根拠としようとする考え方の方が多いのです。ただ、かりに民法七一五条によったとしても、実際には、求償をしないのが現状で、求償をしたとしても、単なる過失による事故の場合には、それを制限し、取立てを認めない方向にもっていこうとする傾向にありますから、事実上は同じことになるかもしれません。
この場合の砂場は、市立中学の教育用として附設されたものといえます。この場合、学校側は、その砂場を体育の授業に使用するうえにおいての安全性を確保しなければなりません。それにもかかわらず、現実にシャベルが埋もれていたとか石などの固い異物が混入していたがために生徒が負傷したということになりますと、それだけでもって、砂場の管理に手落ちがあったといえます。そうなると、この砂場は、市立中学校の施設の一部ですから公の営造物ということになり、これの管理上の瑕疵として、この所有者である市が直接賠償責任を負うことになります。この場合、負傷の原因となったシャベルなどが、放課後や休日に、近所の子供達が出入りし遊び揚に使用していた際にもち込んだものとか、生徒達が砂場の整備をしていた際に、ついうっかりして忘れておいたがためであっても、市は賠償責任を免れるわけにはいきません。

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