水泳授業中の事故

市立中学校に通っている私の娘は、校内プールでの水泳授業中、おぼれてプール底に沈みました。しかし、プールの水が濁っていて底が見えず、また、授業終了後、担当の先生が点呼をしなかったため発見がおくれ、結局娘は溺死してしまいました。こういう場合、どこに賠償の請求をすればよいのでしょう。
国家賠償法二条一項は「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国家又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる」と定めています。市立中学校のプールは、公の営造物にあたります。営造物の設置または管理に城疵があるとは、営造物として通常備えているべき安全性を欠いていることである、とされています。
ところで、水泳プールは、衛生上はもちろん危険防止の見地からいっても、少なくとも水底を透視できる程度の水を使用すべきものといえます。プールの水が濁っていたために、おぼれた生徒の発見が遅れたとすれば、校内プールとして通常備えているべき安全性を欠いていたものといわなければなりません。
またプールは、一般に浅部と深部とがありますが、泳げない生徒が誤って深部に落ち込まないような措置を講ずることも、校内プールの安全性の見地からいって必要な場合が生ずるでしょう。特に小学生の場合には、水泳練習などは学科というよりはむしろ遊びであると考えていて、つい危険を忘れて境界を越えて深部に行きやすいといえますので、この点が重要になります。

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学校での水泳授業では、泳げない者や注意力の乏しい者も含まれており、授業を担当する教師は、水泳授業を実施するにあたっては生徒にプールの性状を十分に認識させるとともに、万一の場合に備えて常にプール内の動静に注目し、事故の発生を防止すべき注意義務を負っています。
プールの深部浅部の状態、水温などにつき、事前に注意を与えることや、生徒の健康管理はもちろん、授業開始後における個々の生徒の動静、とくにプール内の生徒の動静を監視すべきであります。多数の生徒を監視することは困難だとしても、個々の生徒の動静に対する監視が不十分であってよいということはいえません。
水泳授業というような危険性をはらんでいる授業では、終了後点呼をとり、生徒に事故がないかどうかを確認することは、一般的に事故防止のうえで、教師の義務といえます。
判例の中に、小学校六年の児童が、水泳授業中に溺れ死んだが、練習終了の時点で点呼をとらなかったために発見が遅れたという事業で「本件のように多数の児童をプールで泳がせた場合には、終了後員数を確認することは監径者として当然の義務というべきであるが、死亡した児童の水没時刻についてはせいぜい九時三〇分から一〇時までの間としか推定できず、この問に三〇分の間隔があるところ、練習終了後遺体発見までの時間は約二〇分であり、発見時にはすでに呼吸も脈拍も停止していたのであるから、点呼によって二〇分の遅延を防いでいたとしても同女を蘇生させることができたかどうかは明らかでない」として、この点での過失を認めなかった事例があります。しかしこの判断は問題があるように思われます。担当教員には終了後点呼をとる義務のあることからいえば、むしろ、点呼をとったとしても蘇生できなかったということを教師の側で立証しないかぎり、過失がなかったとはいえないというべきものと思われます。
市は市立中学校のプールの設置管理者として損害賠償責任があります。

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