臨海学校中の旅館の事故

私は区立中学校の生徒を引率して、臨海学校へ行きました。そこには宿舎となっている旅館が用意した飛込台があったのですが、生徒の一人がそこから浅瀬に飛びこんで頭を強く打って死亡しました。私にも責任があるのでしょうか。
本問の事故死の原因は、旅館が用意した飛込台が浅瀬にあったことにあるようです。そこで、第一の問題は、このような性質の飛込台を公の営造物といいうるか、ということであり、かりにこれを肯定した場合、構造上の欠陥と同様に設置管理上の瑕疵にもとづく事故と判断しうるか、ということです。この点裁判所は、区長の承認を得て開催した臨海学校もまた区立中学校の延長であり、区の設置したものといわねばならぬとし、また、国家賠償法二条にいわゆる営造物とは広く公の目的に伏せられる物的施設をいうものであるから、臨海学校の物的施設の一つである飛込台は区の設置した営造物であるとみなすのが相当であるとしています。一時的な施設であるとか、借入れた施設であるということは、同法にいう公の営造物の意義と矛盾しないというわけです。同法の立法趣旨が、公の営造物の設置管理の瑕疵に起因する損害について、国または地方公共団体に無過失責任に近い重い責任を課そうとする点にあることを思えば、妥当な判断だといわねばなりません。

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営造物に起因する損害であっても、それが天災などの不可抗力にもとづくものであれば、国家賠償法上の賠償責任は生じません。それには、営造物の設置管理に瑕疵の存することが不可欠の要件です。ところで、この場合の瑕疵の意味について学説は、営造物が本来備えるべき安全性を欠いている状態をいうとしていますが、判例がそれぞれの事案に即して下した具体的判断はかなり広義であり、近年ますます広がる傾向にあるといえそうです。引用判例の場合でも、東京高裁は、学校の延長である臨海学校の物的施設たる飛込台の管理にあたっては、「腐朽折損等があ るかどうかにつき万全の注意を払うと同時に、その格納保管取扱についても細心の努力を尽し、使用しないときはこれが取扱にあたり不測の災禍を生ずることのないよう注意すべき」であるとしています。
この点、原審の東京地裁が、飛込台それ自体に折損があったわけではないから、瑕疵があったとは認められないとしたのに比して、立法趣旨をよく把握した判断だと評しえましょう。本問の場合も、飛びこめば頭を強く打つような浅瀬に飛込台がおかれていたというのですから、営造物管理上の瑕疵は存したとみるべきであり、学校設置者たる区の責任は免れないと考えられます。
ただし、このような場合の瑕疵の認定は、飛込台に腐朽折損があったような場合と異なって、かなり判断の分れるところでもあります。現に先の事件でも、原審東京地裁は、事件当日は波が荒いので定位置より浅瀬に移動して、飛込禁止の注意をなしたうえ、単に休息用として置いていたものであるから、中学三年の被害者としてはこのことを理解できぬはずはないとして、管理上の瑕疵はなかったとしています。これに対し、控訴審では、引揚げ命令後も約半数の生徒は海中に残っていたことと、かつ飛込禁止命令も一同に徹底したか否か疑問があることなどの点から、教員として施設管理にあたり周到な注意を欠いたものと判断しています。このあたりの判断の違いは微妙だといえます。
したがって本問の場合も、浅瀬の状況、潮の干満の程度、引率教員の生徒に対する注意の程度などを総合して判断しなければ、管理上の瑕疵の有無は認定できません。もし、小学生の臨海学校であれば、引率教員にはよりいっそう周到な注意が管理上要求されることになります。
ところで国家賠償法二条は、「他に損害の原因について責に任ずべき者」があるときは、国または公共団体はこれに対し求質権を有するとしていますが、この意義については、設置管理の瑕疵を発生させた者であると解されており、本問のような場合の引率教員はこれにあたることになります。もちろん、これらの者に故意または過失がなければならず、しかも、一条二項との権衡上、過失は重過失の場合に限定すべきだと解するのが多数説です。この立場からは、引率教員に対する求償権の行使はきわめて例外的な場合に限られることになります。

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