課外活動での事故における引率教員の責任

私が指導する中学校のクラブ員をつれて川ヘキャンプにでかけ、中州にキャンプを張ったのですが、台風の接近にともなう集中豪雨により夜のうちに川が増水し、気がついたときには岸から孤立していました。そして、あわてて岸に泳いで渡ろうとした生徒数名が濁流にのみこまれ、溺死してしまいました。このような場合、私にも責任があるのでしょうか。
課外活動としてのキャンプ中の事故について、引率教員には、いったい、いかなる責任が発生するかについてみますと、この場合の溺死事故には、まず、刑事責任が追及されます。すなわち、刑法二一一条は「業務上必要なる注意を怠り、よって人を死傷せしめた者は、五年以下の懲役もしくは禁錮または罰金に処す。重大なる過失によって人を死傷せしめた者も亦同じ」と規定しています。さらにまた、民法七〇九条等により民事責任(損害賠償責任)の有無が問われます。
したがって、ここではその法的責任の有無を判断するためには、諸点について検討してみる必要があります。

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学校教員が学校教育の特別教育活動の一環として行なわれるクラブ活動の一つであるキャンプ等が実施される場合に、その引率する教員の地位について考えてみますと、このような野外活動に教員が引率、指導、監督するということは、これにともなう生徒の生命身体に対する危険の発生を未然に防止し保護することが目的であるといえます。したがって、その場合、その目的を遂行することが引率教員に「職務上の義務」として発生します。つまり、法的にはこれを前記刑法二一一条の業務上過失致死傷罪にいう業務にあたるもので、また、裁判所も引率教員にこのような義務のあることを認めています。
教員が校長の命をうけ、かかる課外活動であるキャンプ等を行なう場合には、引率教員には、特に次ぎのような具体的な義務が課せられています。すなわち、第一に、事前にキャンプ場の実地調査を行なう義務、第二に、気象状況を確実に把握する義務、第三に、安全な楊所をキャンプ設営場所として選定する義務、第四に、天候の急変等に即応してキャンプを中止変更するなど危険回避の措置をとる義務などがあります。
そこで、本問の場合は、結局、このような注意義務違反の有無が重視されることになります。
本問に関する刑事判例の見解では、その溺死事故の主要な原因はその事故の発生当時の事情が、突発的異例の局地的集中豪雨およびそれにともなう異常に急激な増水現象で、これは通常人の注意能力をもってしては、まったく予見不可能なことであったことが認定されています。したがって、引率教員が生徒を脱出させようとした時は、もはや不可能な事態で、手のほどこしようもなかったことを認定し、かかる状況から溺死するという結果回避義務を遂行する可能性を否定したものです。したがって、本判例は、いわゆる不可抗力を理由として引率教員の刑事責任が否認されているわけです。
以上みてきましたように、本問における教員の民事責任の有無も、前記注意義務違反の有無がその決めて手となるわけですが、ここでは因果関係の存否および不可抗力の認否が問題となります。したがって、事故発生当時の事態をみますと、台風の接近にともなう集中豪雨で夜中のうちに増水し、気がついたときには中州に孤立していて危険な状況にあったこと、このような状況から、対岸へ脱出を試みたが、結果は全く不可能で、逆に、濁流にのみこまれて溺死するに至ったという事実は、結局、ここでは不可抗力に基因するものと認定されると思われますので、なんら民事責任は生じないと解せられます。

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