禁止されている朝礼台に登ってのケガ

私は、市立小学校の校長です。日頃児童には運動場の隅にある朝礼台には危険だから登ってはいけないといいきかせ、また、その旨の立札まで立ててあったのですが、たまたまそこに乗って遊んでいた児童の一人が、そこから落ちて骨折事故をおこしました。そして、その児童の親から治療費と慰謝料の請求を受けたのですが、どうしたらよいのでしょうか。
これは法律上は、国家賠償法二条、民法七一七条の問題です。結論は、校長が賠償金を負担する必要はありませんが、小学校を設置している市は、損害賠償の義務がありそうです。
国家賠償法二条は営造物といい、民法七一七条は工作物といっていますが、市立の小学校では国家賠償法による損害賠償の請求が普通ですので、国家賠償法の方で説明しますと、朝礼台が営造物かどうかということが最初の問題です。
国家賠償法の営造物の解釈は、現在では、国または公共団体の所有する物ないしは管理する物と解釈されていますので、民法七一七条にいう「土地ノ工作物」よりその適用範囲は広く、朝礼台も当然に営造物に入ります。ですから、朝礼台から落ちて、児童が骨折したというような事故では、朝礼台を設置し管理している市に責任があるということになり、親からの損害賠償請求に応ずる義務があるといえます。

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学校では、朝礼台には危険だから登ってはいけないと指導し、また、その旨の立札まで立てて置いたということですが、これらの措置だけでは朝礼台で事故が発生した場合の法律上の損害賠償責任を免れることはできません。
まず、朝礼台に危険だから登ってはいけない旨の立札ですが、朝礼台が本当に危険だということであれば、児童が朝礼合に登れないような措置をとるか、朝礼台を安全な所に置くかしないと、事故が発生した場合の法律上の責任を免れることはできません。単に立札を立てて、危険であることを示す程度では不十分です。
このことは、わが国の裁判所が一貫してとっている態度ですし、判例には多少の例外はあっても、例えば、大阪地裁の判例と反することになりますが、この大阪地裁の判例の方がやや例外に属すると解する方が妥当のよ うです。
次に、児童に注意していたということですが、注意しても朝礼台に登る児童があれば、まだ注意の程度あるいはその方法が法律上の損害賠償請求の責任を免れるほど十分であったとはいえないということになり、朝礼台という営造物の管理に瑕疵があったことになります。
また、国家賠償法ではなく、民法七〇九条、七一七条で争われますと、民法七一七条の考え方は国家賠償法の営造物と同じですが、民法七〇九条の過失として、この注意の不十分さを追及されそうです。さらに、朝礼台が危険だから登ってはいけないという注意は、職員が朝礼台は危険なことを知っていて、という趣旨にとられると、この注意が民法七〇九条の故意と解釈されることもありそうです。この趣旨からすると、校長は使用者に代わる監督者の責任を負うことになります。
この事故で親は、治療費と慰謝料とを請求しているそうですが、原則的に市の損害賠償責任は免れないとしても、損害賠償額の範囲については、争う余地がありそうです。
まず、その第一は、骨折した生徒にも不注意があったのではないかということです。朝礼台というのは、おそらく通常のボックス形の台でしょうから、これから落ちたということは、小学生という通常の大人より低い注意義務にもとづく責任ということから判断しても、不注意でなければ骨折などしないということになりそうです。
また、第二に、ケガの程度で、骨折ということでは生命に異常がないことはもちろん、その生徒にとって将来の生活に重大な影響があるとは思えません。子供の骨折程度でそう大騒ぎすることもないでしょう。
これらのことをまとめますと、法律上の原則として、市に損害賠償の義務があることは認められるとしても、その範囲は治療費が限度であって、それ以上の慰謝料は認められないということになろうと思います。こう解すると無過失である工作物責任に過失相殺の理論を導入することになり、この点については学説に反対説があり、また、違法性を問題にする受忍限度論を判断基準として行使していることになりますが、これが、もっとも公平で合理的な解決策といえます。

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