校舎工事中の事故

公立小学校校舎増築工事が行なわれていたところ、鉄パイプが金網の穴から落ちてきて、たまたまそこを通りかかった私の担任のクラスの児童の頭にあたり、重傷を負いました。こんな場合、どうしたらよいでしょうか。
鉄パイプを誤って落した作業員に注意義務違反が認められれば、被害者は、民法七〇九条にもとづいて、その作業員に対して損害賠償を請求することができます。しかし、作業員は賠償資力が乏しいのがふつうでしょうから、賠償資力のある工事請負会社か小学校設置者である公共団体に対して賠償請求する途をみつけなければなりません。
工事請負会社に対して賠償請求する途としては、次の二つが考えられます。
(1)使用者責任。第一は、民法七一五条一項にもとづいて、被用者である作業員の注意義務違反を証明して、使用者の工事請負会社に賠償請求する方法です。
(2)工作物責任。第二は、民法七一七条一項にもとづいて土地工作物責任を問う方法です。本件工事現場全体はひとつの「土地ノ工作物」と解することができ、その設置または管理に瑕疵があることを証明できれば、個々の従業員の過失を問うまでもなく、工事請負会社に対し、賠償を請求することができるのです。本件の場合には、防護金網に穴があったために、落下したパイプがそこを通過して事故をひきおこしたのですから、明らかに瑕疵があったといえるでしょう。

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小学校設置者である公共団体の責任について考えてみましょう。公共団体の責任としては、次のような三つのものが考えられます。
(1)注文者としての責任。第一は、工事注文者としての責任です。民法七二八条本文をみると、注文者は請負人がその仕事につき第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない、と規定しています。しかし、同条但書には、注文または指図につき注文者に過失があったときには責任を負わなければならない、とされています。
本件の場合、公共団体に注文者としての責任を問うためには、注文または指図につき過失があったことを証明しなければなりません。請負契約書を具体的に検討して、工事期間中の工事に対する指揮、監督権限が公共団体にあるとみられれば、注文または指図の過失を認めることは比較的容易だと思われます。
(2)国家賠償法一条にもとづく責任。第二は、校長または教員に注意義務違反、例えば、工事現場付近への立入禁止措置をとらなかったことがあったことを証明して、公共団体に国家賠償法一条一項にもとづく賠償責任を問う方法です。国家賠償法一条によれば、国または公共団体の公権力の行使にあたる公務員が、その職務を行なう場合、故意または過失によって違法に他人に損害 を加えたときには、国または公共団体がこれを賠償する責任を負うものとされています。
もっとも、公立学校における事故に国家賠償法一条を適用すべきかについては、議論が分かれています。学校内における教育、指導関係は非権力的作用ではありますが、国家賠償法一条にいう公権力の行使はそのような非権力的作用をも包含する、と解するのが妥当でしょう。
(3)工作物責任または営造物責任。第三は、本件工事現場全体をひとつの「土地ノ工作物」または「公の営造物」と解し、公共 団体も工事請負人と共同でそれを管理する責任を負う、ということを根拠にして、工作物責任または営造物責任を適用する方法です。この場合には、瑕疵があったこと を証明すれば足りるわけです。
公務員である校長および教員の責任はどうでしょうか。一般的には、公務員個人は、故意または重大過失がなければ被害者に対する賠償責任を負わないものと解されています。本件の場合にも、公務員である校長および教員に故意または重大過失がなければ、個人責任は負わないといってよいでしょう。

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