放課後の校内で遊んでいての事故

私の子供は中学校一年生ですが、放課後ふざけあって友達を走って追いかける途中、その友達が廊下の防火扉を突然閉めたため、それに激突し、前歯四本をおり、顔面にも四針の重傷を負いました。こういう場合、だれに補償の請求をしたらよいのでしようか。
賠償請求の相手としては、法定監督義務者としての加害生徒の親、工作物責任を負っている学校の設置者である市、そして代理監督者としての加害生徒の担任教員または校長などが考えられます。そして結論的に述べますと、この事例と類似の事件において、裁判所は、最初の法定監督義務者の責任のみを認め残りの二者の責任は認めませんでした。
一般的に遊戯やふざけあう行為は違法ではなく、遊戯によって生じた損害については責任が生じないといえますが、特別な事情があれば別です。本問の場合ですが、学校で廊下を走ることは危険ですから通常は禁じられていると思われます。そして防火扉を突然閉めるような行動は危険であり、ふざけあいといってすまされるものではありません。したがって、このような行為は違法といえます。

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子供が違法な行為により他人に損害をあたえたときその行為の法的責任を認識するにたる知能(責任能力)を具えていないときは、その子供自身は賠償責任を負いません。そのかわりに子供を監督すべき義務のある者(法定監督義務者)が賠償責任を負います。子供が責任能力を具える年齢については、一般的には一二歳前後といわれていますが、子供に責任能力が具わると監督義務者は賠償責任を負いませんから、子供自身に財産がない場合は、被害者はなんら賠償をうることができなくなるわけです。したがって判例では、そのような事態を避け親権者に賠償責任を負わせるため責任能力の具わる年齢を高くする 傾向があります。中学一年生では普通一二歳でしょうが、この年齢では責任能力がないとされると思われます。そうしますと、親権者である親に責任が生じますが、この監督義務者の責任は責任無能力者の加害行為の結果についての責任で、監督義務者がみずからなした不法行為についての責任ではありません。この親権者の監督義務は子供の全生活面につき存在しますので、免責されることは非常に少なく、親の目の届かないところや学校において他人を負傷させたような場合においても、特別の事情がないかぎり監督義務を怠った結果であるとされるわけです。
国家賠償法二条は公の営造物の瑕疵による損害につき国または公共団体に無過失責任を負わせています。公立学校の防火扉は公の営造物ですのでこの事故が防火扉の瑕疵に帰せしめることができるかどうか問題になりましょう。この事故においては、防火扉がすぐ閉ってしまうような状態にあったことが原因であり、このケースのような事故を避けるためには止金で扉を壁に固定しておくべきであったとも判断できないわけではあ りませんが、裁判所は、この点、廊下の利用者は中学生であることを考慮すれば、扉が壁に固定されていなくても、普通は、廊下の通行に危険はなく、扉に激突して負 傷するという事故は、予測しえないものであるとして、扉の設置または管理に瑕疵はなかったとしました。
教師は、親権者等の法定監督義務者に代わって生徒を監督すべき義務があります。しかし、この教師の義務は、その性質からして、親権者のように子供の全生活にわたって監督する義務を負うのでなく、教育活動とそれに関連する面においてのみ監督する義務を負うのです。そこでこのケースについて教師の監督義務についてみますと、裁判所は、加害生徒は責任能力者にかなり近い中学校の生徒であること、放課後の事故であること、ふざけ合っていて生じたものであることなどの点から、このような行為についての教師の監督義務の存在を否定しました。
以上の如くこのケースにおいては、父母の法定監督者の責任のみが肯定されるわけです。

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