体罰を受けたが

私の子供は中学校三年生ですが、ある日、校庭で盗難事件が発生し、担任の先生からその犯人ではないかとの疑いをもたれ、放課後、きびしく問いつめられ、顔を数回つよくなぐられ、鼻血を出して帰ってきました。私の子供は日頃態度がよくないのはたしかですが、今回の盗みの覚えはないといっています。補償の要求をしたいと考えていますが可能でしょうか。
学校教育法一一条は、「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、監督庁の定めるところにより、学生、生徒及び児童に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない」と規定しています。
学校教育法一一条の体罰の意義について行政当局は次のような通達を出しています。すなわち、「身体に対する侵害を内容とする懲戒、殴る蹴るの類、がこれに該当することはいうまでもありませんが、さらに、被罰者に肉体的苦痛を与えるような懲戒もまたこれに該当する。例えば端座、直立等、特定の姿勢を長時間にわたって保持させるというような懲戒は体罰の一種と解せられなければならない。また、法務府の見解によりますと、学校で盗難事件が発生した場合には、生徒を放課後訊問することはよいが、自白や供述を強制してはならないとされています。しかしながら、具体的な事案につき、ある行為が懲戒権の行使として正当な行為にあたるのか、あるいは体罰に該当して違法な行為となるのか、いずれかを判定することは容易ではありません。例えば、同じ時間、子供に直立をさせた場合でも、教室内の場合と炎天下あるいは寒風の下では、生徒に与える影響は異なります。

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判例は、一般に懲戒を加える際には「これより予期しうべき教育的効果と生徒の蒙るべき権利侵害の程度とをつねに較量し、教育上必要とされる限界を逸脱して懲戒行為としての正当性の範囲を超えることのないよう十分留意すべき」であると判示し、教師が授業中私語を続けた生徒を教壇に立たせ、さらに授業終了後職員室に呼んで訓戒を与え、その上他の教師が長時間別室で詰問し頭部を殴打した行為は違法な行為であるとしています。本問の場合、生徒を放課後尋問することは許されますが、教師が生徒の顔を強くなぐった行為は、学校教育法一一条が禁止している体罰に該当すると思われます。
また、別の判例は、教師が中学校内の盗難事件につき容疑者として生徒を取調べることはできるけれども、生徒の態度が不遜であるからといって殴打することは、いかなる意味においても許される行為ではなく、かかる行為は不法行為にあたるとしています。
私立中学校の場合には、まず暴力をふるった教師が責任を問われます。次に、教師を使用する立場にある学校が使用者としての責任を問われます。さらに校長は、使用者にかわって事業を監督する者として責任を問われます。
国、公立中学校の場合には、国または公共団体の責任が問題となります。
ところで、学校教育が国家賠償法一条にいう「公権力の行使」にあたるかどうかについて様々な見解がありますが、多数の判例は、これを肯定していますので、国または公共団体は責任を免れないといえるでしょう。本問と類似のケースを扱った判例は、学校教育の目的と秩序を維持するために教師が学校内の非行事件の容疑者として生徒を取調べる行為は、国家賠償法一条一項の国または公共団体の公権力の行使にあたるとしています。
それでは、国または公共団体が責任を負う場合には教師の個人責任はどうなるでしょうか。通説、判例は、支払能力のある国または公共団体が直接、賠償責任を負担する以上、被害者が当該教師に損害賠償を求める必要はないとしています。一般に、損害賠償制度の機能が被害者の損害のてん補にあることを考慮しますと、この通説、判例の考え方は妥当であるといえましょう。
教師があなたの子供の顔を強くなぐった行為は、教師の懲戒権のゆきすぎであるといえますし、また、体罰を生徒に加えたことは違法であると主張することができます。
あなたの子供さんが私立中学校に在学しているのであれば、暴力をふるった担任の教師とその使用者にあたる学校あるいは使用者にかわる代理監督者としての校長を相手に責任を追及することができます。この場合、教員の責任と学校、校長の責任とは不真正連帯債務となり、いずれか一方があなたに賠償すれば他方も債務を免れます。損害賠償の内容としては、鼻血を出しただけで他に治療費を要したり後遺症も残っていないようですから、あなたの子供さんがみずからこうむった精神的苦痛を理由に慰謝料を請求することができるでしょう。
次に、国、公立中学校に在学している場合には、国家賠償法一条を根拠に国または公共団体に責任を追及すればいいわけです。

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