大学対抗ラリー中の事故

大学自動車部の部員が、大学対抗ラリー中に、他の車と衝突しました。他車は大破し、運転手も重傷を負うとともに、加害者の助手席に乗っていた部員も負傷しました。これらの損害に対し、大学にも責任があるのでしょうか。
大学の賠償責任は、被害の種類や相手方によって違います。まず、他車を大破したことによる損害、つまり物損に対する大学の責任はないと考えられます。一般に、使用者は、従業員が業務に関連して起こした事故による損害を賠償する責任がありますが、学生は大学の従業員としてクラブ活動に参加しているわけではありませんから、大学は原則としては使用者責任を負いません。
次に、他車の運転手の傷害については、自動車損害賠償保障法三条の適用があります。ただし、大学が運行供用者責任を負うかどうかは事情によって違います。例えば、加害車が名実ともに大学の所有である場合、もしくは、かりに名義は部員個人になっていても、大学側が購入費を負担するなど実質的に大学の財産と見られるものであれば、他車の運転手との関係では、大学は運行供用者としての責任を免れないと考えられます。その反面、自動車部の運営が自動車の管理を含め完全に学生の自治に委されており、大学から財政上の援助も絶無か、きわめて微々たるものに限られているケースでは、大学の責任を認めることはかなりの困難でしょう。

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加害車の助手常に乗っていた部員の傷害についてはどうでしょうか。自賠法三条は運行の範囲について特に制限を設けていませんので、競争のための運行にも同条の適用はあると考えられます。しかし、ここで注意を要するのは、運行供用者が賠償責任を負うのは、他人の生命、身体の傷害にともなう損害にかぎられる点です。そして、運転者自身は自賠法三条にいう他人には当たらないとされています。つまり、運転者が傷害を受けても、自分が運転していた自動車の運行供用者に対しては賠償請求は許されません。
問題は運転助手の場合ですが、一般には単なる助手は他人としての保護を受けることができるとされております。ただし、ラリーの場合などは、助手も運転者と一体となって運転に関する任務を果たしているのが実情ですので、果たして普通の場合の運転助手と同じに見てよいかどうかは疑問がないでもありません。
また、大学のスポーツクラブが、あくまで任意参加による自主的活動であることを考えると、ラリーに参加した部員もまた運行供用者にあたると考えられます。このように自分自身運行供用者の立場にある者の一人、この場合では助手席の部員が事故により受傷した場合に、他の運行供用者、例えば大学に対して損害賠償請求ができるかどうかについては、さまざまな意見がありますが、自動車の運行に、より直接的に関与していた運行供用者は、他の運行供用者に対して賠償請求はできないという考え方が有力です。これに対して、このような場合でも賠償請求を請めたうえで、被害者自身の運行供用者としての責任の程度に応じて賠償額を減らせばよいという見解もあります。
いずれの考え方をとるにせよ、助手席の部員は、みずからもラリー参加者として自動車の運行に関与していた立場上、大学に対して被害弁償を要求することはかなり困難であり、かりに賠償請求が認められたとしても、賠償額はきわめて大幅に削減される結果となりましょう。
以上は、大学の賠償責任についての説明でしたが、加害車を運転していた部員自身は、基本的にはすべての損害について責任があります。ただし、ラリーやレースの場合は、お互いに競技にともなう危険は承知のうえで参加しているという点で、一般の自動車事故とまったく同じに見ることはできません。競技のルールを踏みはずした無謀な運転や、未熟な運転によって起きた事故を除いては、むしろ参加者はお互いに賠償請求はできないとの見方も可能です。かりに賠償請求は認められたとしても、すでに述べた危険の承認を理由に、少なくとも賠償額が減らされることは、ほぼ確実と思われます。

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