放課後に学園祭の準備をしていて失火

娘のほか五人のグループのものが、放課後に先生の許しを得て学園祭の準備をしておりましたが、過失によって校舎の一部を焼き、他の場所にいた生徒にやけどをさせてしまいました。親として、これらの責任を負わねばならないでしょうか。許可を与えたまま先生は先に帰宅していたそうですが、この先生にはなんら責任がないのでしょうか。
放課後に生徒有志が自発的に学園祭準備作業をするということは、判例などの見解からおしてみますと、通常、学校における正規の教育活動およびこれと密接不離の関係における学校生活関係の一つであると理解することができます。したがって、本問の事故は、いわば教育の過程で起きたものといえます。
ところで、一般的には教員の許可をうけてかかる準備作業が行なわれる場合、教員には、一応、監督上注意義務が発生するものといえます。しかし、その義務として、いった い、どの程度まで注意監督しなければならないのでしょうか。判例では教師はその全学校生活関係について監督または管理する義務を負うものではなく、学校生活において通常発生することが予想されるような結果についてのみ監督、管理責任を負うものと解しているようです。
したがって、許可を与えた当該教員にはそのような注意義務違反の有無が問われることになるといえます。

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本問の場合、生徒の過失によって失火し、校舎の一部を焼失したことによる失火責任法の適用の可否が問われます。
本来、わが国は一般に木造家屋が多く失火によって損害が意外に拡大する結果、そのすべての損害を失火者にのみ賠償させることは気の毒であることが少なくないとの趣旨から、さらにまた、火災当時の気象状況によっては損害の大小が左右されることが多いばかりでなく、その因果関係の判定かきわめて難しいなどの点からも、ここに特別法として「失火ノ責任二関スル法律」が制定されているわけです。したがって、この法律の特色は民法上の「不法行為責任」を制限していること、つまり、失火者の軽過失による失火を免責して「故意または重大な過失」がある場合にのみ賠償責任を認めている点にその特色があります。
そこで、本問のような場合にも、生徒のいわゆる過失による失火と思われますので、失火責任法が適用されることになります。したがって、親としてこの失火による法的責任はなんらありません。
さらに、学園祭の準備作業を許可した監督義務のある教員の責任については、監督上における「重大な過失」がなかったことが立証できれば、やはりこの法律の適用をうけることができるといえます。したがって、その教師も失火に対する責任は免除されることになります。
さらに、本問の場合、失火に際して「やけど」の被害が生じその責任の有無も問われていますが、この場合、失火の当事者でない被害者が消火活動などに協力していてうけたやけどならば責任問題が起こる余地があります。しかし、そうでない場合には、通常、高校生程度になれば責任能力を備えているものとみられますので、その場合、一般的には生徒は「自主的な判断で責任を以って行動するものと期待するのが相当」であるといえます。したがって、被害者も相当の注意をはらって行動すれば、この場合 「やけど」を回避できたのに自分の不注意(過失)によってその安全が確保できなかったために生じたものであれば、被害者自身の不注意の責に帰すべきものと思われます。結局、この点についても親としてはなんら法的責任はなく、一方また、当該教員にも監督義務があるとはいえ、かかる事態によるものであれば、それはいわば予測しえない意外な結果であって、結局、許可した準備作業と失火ならびにやけどとの問に因果関係が存するやについては認め難いといえます。したがって、当該教員にも責任は及ばないと思います。
ところで、本問では許可を与えた教員が先に帰宅してしまった場合で、その責任を追及するに際してこの間の勤務の性格や監督義務 が及ぶかについてはこれをどのように把握すべきかは難しい問題です。ひいては、今日これは学校運営上「教員の勤務時間の適正な管理」や「教員の監修責任等の明確 化」などの重要な問題となっているといえます。
そこで、本来、教員の監督義務違反の有無が判定される場合の標準としては、一応、それが勤務時間内であったか否かが問題となります。これについて判例の見解は「クラブ活動が正規の教育活動である以上、それがたとえ教師の勤務時間を超えて行なわれることを通常の形態とするとはいえ、これを実施する限り指導担当教員は、勤務時間外においてもその職務上の義務がある」と認定し、もし「勤務時間外の故をもってその監督義務を放棄するならば、その活動を中止させるなどして危険の発生を防止すべき義務がある」と解しています。
クラブ活動は、従来からの慣行等もあって、勤務時間を超えて行なわれることが少なくないのが実情と思われます。そこで、本問においては、当該教員がとくに勤務時間の割振りの変更を行ない、代位監督者をつけるなどしないで許可したまま帰宅してしまった場合でも、前記判例の見解のように、やはり監督義務が及ぶものといえます。しかしながら、「監督の対象となる生徒の責任能力の有無、その強弱、監督内容となる準備作業の危険性の高低」などを考慮して、かかる点から本問の失火およびやけどの責任をみてゆきますと、結局、当該教員の監督義務違反を積極的に認め、かつその責任を追及しうると解することはいささか妥当性を欠くものと思われます。

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