課外活動中の事故

私の息子は公立高校二年生ですが、十数名の生徒とともに放課後、先生の許可をうけて、三階建校舎屋上で自主的に体操の練習をしていました。その際、他の生徒が運動靴をかくしたので、取り戻すため鉄柵外に出たところ転落し死亡しました。県に対する損害賠償が認められるでしょうか。
公立学校の教育活動の過程で発生した事故における損害については、今日、一定の法律の要件に該当するときに限り、国家賠償法一条か二条にもとづき県に請求することができます。
まず、公立学校教育が国家賠償法一条にいわゆる公権力の行使に当たるかについては、今日、それは該当するものと積極的に解されています。ところで、放課後、先生の許可を得て生徒が自発的に体操の練習をするという課外活動の性格は、教育活動の一環として行なわれるものと解され、さらに、それはいわば生徒の公立学校利用関係であることから、これを公権力の行使に当たるものといえます。そこで、その練習中に事故が発生した場合には担当教員ならびに校長は監督義務違反の有無が問われ、ひいては県に対する賠償責任の追及ということになる場合があります。

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当該教員の監督義務については、本来、公立学校の校長ないし教員は生徒を親権者等の法定監督義務者に代わって保護し監督する義務があり、義務の範囲は性質上、高校における教育活動およびこれと密接不離の関係にある生活関係の範囲に限られると解されることから、体操の練習がたとえ生徒の自発的意思により放課後に行なわれたとしても、これは、教育活動に密接な関係を有し監督義務の範囲内にあるものといえます。
ところで、高校生ともなると、自己の行為について自主的な判断で責任をもって行動することが期待できるため、その義務の内容は、生徒の自主的な判断と行動を尊重しつつ助言、協力、監護、指導することにあり、逐一、生徒の行動と結果について監護する責任はなく、ただ、生徒が通常の自主的な判断と行動とをしていても、その過程で生命身体に危険の生じるような事故の発生が客観的に予測される場合には、それを未然に防止すべく事前に注意指示を与えれば足りるものといえます。
国家賠償法二条よりみれば、本問のような事故の発生につき、その校舎屋上の管理運営に瑕疵があったか否か、つまり、生徒の転落死亡との間に因果関係の存否が問題となります。そこで、本問の場合、屋上の危険防止の設備はどの程度具備され管理されていたかが重視されます。本来、このような設備は、利用者が通常の使用方法によって利用するならば、何ら安全性に欠けるところはない程度の構造を具備していればよいといえます。例えば、鉄柵も転落を防止しうる相当な高さと間隔で設置され、かつ、ふだんその腐蝕防止等の管理もなされていれば瑕疵はないものといえます。したがって、この点からみても、本問の場合、その安全性が確保されていたと思われますので、結局、同法二条の適用による県に対する賠償請求はできないことになります。
そこで、本問に関する判例で、結局、事故の発生は、死亡生徒側にも転落事故を未然に防止すべき注意義務があると認定し、転落者自身の不注意によって招いたものとする見解は注目に値いしましょう。
以上、みてきましたように、転落死亡事故の主要な原因は、体操の練習とは全く関係のない事態において発生したもので、それは、結局、柵外にでて不注意により起こった事故というべく、したがって、当初許可を与えた教師にしても事故の発生を予測することはまったく不可能であったばかりでなく、その結果発生の回避も不可能であったもので、しょせんそれは監督義務の範囲外のものといえます。したがって、県に対して損害賠償を請求することはできないと解されます。

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