各種学校行事と経営者の責任

息子が私立理容学校に通学していましたが、この夏、学校行事として毎年行なわれている海水浴に参加しました。しかし、息子は泳げないので、引率教師がいる場所から離れた所で他の生徒と貸ゴムボートに乗って遊んでいたところ、波のため落ちて溺死しました。学校側は、海水浴はレクリエーション活動で教育活動ではないから責任がないといっていますが、そうでしょうか。
学校が毎年学校行事として行なっている海水浴においてもしも事故が発生した場合には、被害者またはその遺族は、被用者である教員の注意義務違反を証明して学校の使用者責任を問うことができます。学校が主催して行なった行事である以上、レクリエーション活動か教育活動かということで責任の有無が決まるわけではありません。
本件と類似する判例である理容学校生徒のゴムボート転落溺死事件においても、裁判所は、各種学校または準各種学校が主催して生徒の参加する行事を行なった場合には、その行事がその学校の本来の教育目的である教育科目の一環として行なわれたものであるか否か、生徒の参加が義務づけられているか否かにかかわらず、主催校と教職員は、生徒を指導し保護監督する責任がある、ということをはっきりと述べています。

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本件のような海水浴を学校行事として実施する場合には、理容学校教員にいかなる注意義務が要求されるのでしょうか。さきに引いた理容学校生徒ゴムボート転落溺死事件を参考にしながら、まとめてみましょう。
一般的抽象的には、主催校である理容学校およびその教職員は、参加生徒の年齢、水泳能力、その行事に予想される危険など具体的状況に応じて、行事に参加した生徒の生命および身体に危険がおよばないように、生徒を指導し保護監督する責任があるといえます。
具体的には、次のような注意義務が考えられます。
(1)海水浴楊の選択上の注意義務。参加する生徒の年齢、能力等を考慮して無理なく安全に水泳ができる海水浴場を選択すべき注意義務です。
(2)海水浴場の状況に関する事前の調査義務。選択した海水浴場の状況を事前に十分調査すべき注意義務です。
(3)参加生徒の水泳熟練度に関する事前の調査義務。水泳のよくできる生徒とできない生徒がいっしょに多数入り混っていて水泳を行なったのでは監督の実効があがりませんから、事前に参加生徒全員の熟練度を十分調査、把握する必要があります。
(4)適正規模のグループに分けて監督する注意義務。参加生徒が集団で一時に海水浴場に分散すると危険が生じてもとうてい把握できませんから、(3)の事前調査にもとづいて参加生徒の能力に応じて適正規模のグループに分けるなどして、生徒の動静を十分監督すべき注意義務があります。
(5)事前に注意事項を周知徹底させる義務。海水浴はその性質上溺死など一歩誤ると多くの危険を伴う行事ですから、参加生徒に対して事前に注意事項を十分に徹底させる注意義務があります。特に水泳のできない生徒については、勝手な単独行動を絶対にとらないこと、 引率教員のそばから離れないことなど、具体的な注意事項を周知徹底させ、危険の防止に配慮しなければなりません。
本件の場合、溺死した生徒は引率教員から離れた場所でボート遊びをしていたのですから、被害者にも若干の過失があるといわなければならないでしょう。引率教員に無断でボート遊びをしていたならば、なおさらそうです。したがって、民法七二二条二項にもとづき過失相殺が適用されます。
ちなみに、理容学校生徒ゴムボート転落溺死事件においては、教師の許可を得ないでボート遊びをし、また何らかのボート操作上の誤りがあったものと推定されるとして、四〇パーセントの過失相殺を適用しました。

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