遊園地の遊具による負傷

家族でそろって遊園地にいき、三歳の長女を一人で飛行塔に乗せました。その際、着地の瞬間に地面に強く衝突し、後頭部を打って重傷を負いました。遊園地管理者に賠償を請求したのですが払ってくれません。訴訟で争いたいと思いますが、どのような点が争点となるでしょうか。
ここでは、飛行塔が着地の瞬間になぜ地面と衝突したかが問題になります。第一に考えられることは、運転手が操作ミスをしたのではないかです。法律的にいうと運転手による民法七〇九条責任と運転手を傭っている会社ないし遊園地管理者の責任で、民法七一五条の使用者責任につながっていきます。第二に考えられることは、運転手の操作は完璧であったが、機械が故障していた場合です。これは工作物責任の問題になります。最後に、不法行為責任が成立した場合、被害者側にも落度がなかったかどうかの問題があります。これは三歳の子を一人でのせたことが民法七二二条の過失相殺の対象になるかということです。

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まず、運転手および運転手側に過失があったかどうかを考えてみましょう。
きわめてあたりまえのことですが、遊園地は幼児の遊び場ですから、運転操作、機械の整備などが相当の注意を払ってなされていなくてはなりません。機械の始動前に点検をしているかどうか、操作手順をふんで細心の注意で飛行塔を運転しているかどうか、定期点検をしているかどうかがきめてとなるでしょう。
この点について、井之頭自然公園内で起こった事故についての東京地裁の判断が参考になりましょう。
この飛行燈は、中央に直立した支柱があり、この支柱から四方に腕木が突出していて、各腕木の先端からロープによって円盤型のゴンドラが吊下げられ、別に設計されたスイッチを操作することにより、客を乗せたゴンドラを空中に引き揚げ、所定の回数支柱のまわりを回転させた後、地上に下ろすようになっているという構造をもっていたようです。この飛行塔へ小学校一年生の女児が乗ったのですが、着地の際、円盤が回転しながら床に強く衝突したため、その衝撃で、円盤の周囲の壁に後頭部をうち、そのため頭部外傷性てんかん症状になってしまったという事件です。
裁判所は、飛行塔の構造、主として幼児のための遊戯機械であることの用途、操作方法からすると、操作担当者は、上昇スイッチを入れてから、ブレーキを引いて円盤の着地が完了するまでの間、つねに円盤の運行状態に注目し、異常な運行があったときは何時でも適宜の処置をとり、ブレーキを引くなどして円盤を安全に着地せしめるべき高度の注意義務があるとして、操作者の過失を認定しています。
運転手側の過失が立証されれば、使用者責任も容易に成立することになるでしょう。運転者が飛行塔を操作することは「事業ノ執行」と考えられるからです。使用者は選任、監督に相当の注意をしたと主張しても、飛行塔は危険の高い機械ですから経験年数を運転手が十分持っているかどうか、年齢は相当であるか、労働条件はきつくないかなどを調べることにより、その抗弁は認められる可能性 は少ないとおもわれます。経営者のなかには、就業規則その他の規則を厳しくしており、平素訓示をくり返して被用者の規律を厳しくしている旨主張し、相当の注意をしていた旨抗弁する場合がままみられますが、そのような抗弁は裁判所の認めるところとなっていません。
いずれにせよ、民法七〇九条、七一五条により責任を追及するためには過失の立証を被害者がしなければならず負担が重いということになります。そこで、いわゆる無過失責任のひとつであるとされている工作物責任でいけないか、と考えなければなりません。
民法七一七条の工作物責任は、他人に損害を加える可能性のあるものを支配している以上、その結果についても責任を負う べきであるとするいわゆる危険物責任にもとづくものです。ここでいう工作物とは土地に接着して人工的につくられた設備をいい、判例では潅漑用ポンプや採炭用排上磯やそれに付属せしめられているワイヤーロープも含まれるとされていますから、飛行塔も工作物といえるでしょう。
問題は、飛行塔の設置、保存に瑕疵のあることを被害者側で立証しなければならないことです。しかし、着地の瞬間に地面と激突したことは瑕疵の存在が推定されていると考えてよいと思われ、逆に占有者ないし所有者としての遊園地側に瑕疵の不存在を証明する必要があるといえましょう。
最後に過失相殺の点に触れておきましょう。遊園地側が三歳の子を一人で乗せることを許容していたかどうかで結論がかわってきましょう。許容していたとすれば被害者側には過失がないといえます。
それでは、一定の年齢以下の子供は必ず保護者と同伴で塔乗して下さいとの注意書がなされていた揚合、それを無視して三歳の子を一人で乗せたときはどうでしょうか。このような場合、被害者側にも年齢制限を守らなかったという過失があるから過失相殺によって損害賠償額が減額されるべきであるとの主張もありうるだろうと思います。しかしこの場合、子供が一人で乗っても親と一緒に乗っても同じような程度の被害が生じたときは過失相殺を行なうべきではないと考えられます。ただ、年齢制限に違反して一人で乗せたということが原因で被害が増大した、あるいはそのゆえに起きたというのであれば若干の過失相殺はやむをえないでしょう。
なお、子供が一人で入ることが禁止されていても、例えば切符係などが黙って乗せてしまったような場合は、遊園地側の過失ということになります。

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