近所の子と市営プールに行き溺れる

私の五歳の子供が、近所の中学生に連れられて市営プールに行きました。子供は、プール周辺で遊んでいましたが、足をすべらせてプールに落ち溺れて死亡しました。市と中学生の親に対して損害賠償を請求できるでしょうか。
子供はプールの欠陥によってではなく、不注意で足をすべらせてプールに落ちて死亡したものと前提して考えてみます。市営プールの営業は、市のサービスを目的とするものであり、私経済作用的要素の強いものですから、そこに派遣されている市の職員は、同じ公務員であっても警察官などのように公権力を行使する職員といえるのか、ということが問題になります。プールの監督員については、市営であっても私営であってもその内容は同じですから、市の経営であるというだけで監督員の行為が公権力の行使にあたると解することは困難でしょう。
学説や裁判例も、公権力の行使とは、(1)国家統治権にもとづく優越意思の発動である作用に属する公務員の行為に限る、(2)いわゆる公権力作用に限らず、非権力的公行政作用に誤する公務員の行為も合む、(3)前二者を含む一切の公務員の職務行為に及ぶ、というように、おおむね三つに分れています。

スポンサーリンク

市営プールを利用する者は、市との間の自由な契約にもとづき一定の料金を支払って利用するのですから、鉄道やバス事業に準じて、その関係は基本的には契約関係として考えるべきでしょう。すなわち、市が行なうプールの営業は、行政法上の管理行為としての要素を有してはいますが、実質的にみればいわゆる私経済作用にあたるということができますから、市営プールの職員の行為は、公権力の行使には該当しないと解すべきでしょう。
市が国家賠償法一条の責任を負わない場合でも、市は職員の使用者として民法上の不法行為責任を負うことはあります。この場合には、市の責任の前提として職員の行為について不法行為が成立することが必要です。そのさい主として問題になるのは、職員の故意、過失でしょう。まず、五歳前後の子供が入場する際には、本人と同伴者に深い所に気をつけるよう注意を与える等のことを行ない、かつ入場を許した以上幼児の行為には十分な監視が要求されるものと考えるべきです。したがって、職員がこのような注意等を一切行なわなかった場合や、注意はしたけれども監視が不十分であったため早く発見できず、そのために死亡してしまったというような場合には、被用者である市職員に不法行為が成立しますから、使用者たる市の賠償責任が発生します。ただし、市は、その職員の選任および事業の監督につき相当の注意をしていたとき、または相当の注意をしても事故が発生したであろうと思われる場合には、責任を免れます。
幼児を一般成人が使用するプールに同伴する場合には、同伴者にも監督義務が発生するものと考えるべきです。本問の場合は、同伴者が中学生ですからその中学生に責任能力がない場合には、その中学生を監督すべき法定義務者(通常は親)が責任を負うことになります。監修義務者はその義務を怠らなかった場合には責任を免れますが、一度や二度口頭で注意を与えたからといって監督義務を果たしたということにはなりません。
幼児の親は、市と中学生もしくはその親等に損害賠償の請求ができますが、自分自身も幼児の監督義務者として未成年である中学生に同伴させたことについて監督義務違反がなかったとはいえないでしょう。
したがって、幼児の親がプールヘ行くことを知っていた場合とそうでない場合などで事情は異なりますが、損害賠償額の決定にさいし、過失相殺が行なわれることになるでしょう。

幼稚園の送迎バスの事故/ 登下園中のつきそい保母の責任/ 園児の安全を守る義務/ 保育時間中の保母の注意義務/ 保育時間終了後の事故/ 無認可保育園での事故/ 会社内にある無償の臨時保育所でのけが/ 通学中の事故防止と学校の責任/ 職業技術授業中の事故/ 教師個人の責任/ 体育教員の注意義務と責任/ 水泳授業中の事故/ 必須クラブ活動中の事故/ 示談解決の約束の効力/ 掃除中の事故での賠償請求の相手/ 教員の監督責任/ 臨海学校における引率教職員の注意義務/ 臨海学校中の旅館の事故/ 課外活動での事故における引率教員の責任/ 学校での休憩時間中の事故/ 禁止されている朝礼台に登ってのケガ/ 校舎工事中の事故/ 遊戯中のケガ/ 放課後に野球していてケガ/ 放課後の校内で遊んでいての事故/ 校庭で教師の車にはねられる/ 校庭解放中の事故/ 体罰を受けたが/ 体育授業における担当教員の注意義務/ 危険な種目と担当教員の注意義務/ 乱暴なプレーでのケガ/ 登山中の事故/ 運動部でのシゴキ/ 大学対抗ラリー中の事故/ 放課後に学園祭の準備をしていて失火/ 課外活動中の事故/ 机運び中の机の落下/ 競技連盟主催の公式協議中に事故/ 国体に参加し公開練習中に事故/ 先生の懲戒行為と違法性の関係/ 各種学校行事と経営者の責任/ 主催者の事前の注意義務/ スキーヤーとぶつかり重傷/ 塾生の引率教員の注意義務/ 幼児の体育指導とその注意義務/ 遊園地の遊具による負傷/ 近所の子と市営プールに行き溺れる/ 市民会館の階段で子供が転落/ ドブ川に転落/ 公園内の池に転落/ デパート内のエスカレーターで足を踏み外す/ デパートの一時保育所で窒息/ デパート内で客のペットが幼児に咬みつく/ 食堂でお湯をこぼされ火傷/ スケート場で衝突し骨折/ 野球観戦中にボールが飛んできてケガ/ 海水浴場で救助船が遅れて水死/ 登山標識が間違っていて遭難/ スキー事故の原因と責任/ ゲレンデでパトロール員と衝突/ 公団住宅の庇がはがれてケガ/ 友人宅の自家用プールで水死/ 塀を乗り越え無断で空地に入り事故/ 工事のために掘削された穴に落ちたが/ 私有地のため池に落ちたが/ 工場敷地内の危険物に触れてケガ/ 他人の土地でも危険防止措置の要求ができるか/ 野球をしていて盆栽や窓ガラスを壊した/ 子守りを頼んでいた間に交通事故/ 隣家の飼犬に顔をひっかかれた/ 動物園のクマに咬まれた/ 踏切の下をくぐって轢かれる/ 路上で遊んでいてはねられた/ 飛び出し事故にも賠償請求ができるか/

       copyrght(c).子育てと育児.all rights reserved

スポンサーリンク