ドブ川に転落

私の三歳の子供が、アパートの裏にあるドブ川に落ちて水死しました。このドブ川には蓋がなく、八〇センチ間隔でコンクリートの梁が渡してあるだけで、これまでにも、数名の子供が落ちています。近所の人達は、危いから蓋をするようにと市役所に要望していた最中です。役所に責任をとってもらえるでしょうか。
ドブ川は、下水等を処理する目的で設置されている公の施設ですから、市は地方自治法一四九条七号によってそれを管理する責任を負っています。
ドブ川はその管理者たる地方公共団体によって公の目的に供用されている有体物であるということができますから、国家賠償法二条にいう公の営造物に該当します。したがって、国または公共団体はドブ川の設置、管理に瑕疵があれば損害賠償義務を負うことになります。その結果、ドブ川の管理者は、ドブ川が下水処理の機能を果たしうるように維持、管理するとともに、一般市民にとって危険でないような状態に維持、管理する責任を負っているものということができます。したがって、ドブ川が蓋のない溝渠である場合には、その周囲に柵を設けるなどの危険防止推薦を講じておくべきです。その周辺に民家が密集している場合には、それだけ危険度も高いといわなければなりませんから市の管理責任も重くなると考えてよいでしょう。

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子供が落ちた場合に水死する危険のあるようなドブ川は、蓋をして溝渠としておかない限り、原則として瑕疵があるものと考えるべきです。もちろん、一定の自治体にとっては住宅地域が急速に拡大したり、川幅が広いために暗渠化か自治体予算のうえからみて著しく困難な場合もあると思われますが、その場合でも、危険度の高い部分には金網を張るなどの防護措置を講ずべきです。
本問の場合には、これまでにも数名の子供が落ちているとのことですから、それにもかかわらず市当局が何らの防護策も講じていなかったとすれば当節に管理者の責任が発生しますが、周囲に有刺鉄線を張りめぐらしていた場合でも、その程度では事故防止策として十分なものとはいいがたいという判断を示している裁判例もあります。仮にに有刺鉄線や金網が張られた時点においては十分な防護策であるといえたとしても、その後腐蝕して破れたり切れたりしていた場合には、ドブ川の管理に瑕疵があったものというべきです。防護策としては、有刺鉄線でよいか、金網程度かそれとも暗築とすべきかは、そのドブ川の状況によって決まることですが、いずれの防護策がとられた場合でも、管理者としてはそれを良好な状態に維持しておくべき責任を負っているものといえます。
近所の人達がドブ川に蓋をするよう市役所に要望していたとのことですから、市役所の土木課等の窓口で単に要望したにすぎなかったとしても、市当局はそのドブ川が危険な状態にあるということを当然知っていたといえるでしょう。また、市としては、もちろん住民の要望等がなくてもパトロール等により情報を収集しておくべきです。住民としても単なる要望ではなくて、市議会への請願の形式をとる方がよいでしょう。
これらのことは、国家賠償法二条の市の責任を考えるにあたっては直接法律的な関連はもちませんが、万一過失相殺が問題となるような場合には意味がありますし、また裁判所が市の責任を肯定する場合に有利に働くことになるでしょう。
ドブ川に蓋がなかったという点については管理者たる市に責任があるとはいえ、そのような危険なところで子供たちが遊んでいるのを放置しておいた親の方の責任も問題になります。これもドブ川の周囲の状況によって異なり一概にはいえませんが、周囲に適当な遊び場もなかったというような事情がある場合には、親の法的責任を追及するのは酷であることが多いでしょう。

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