デパート内のエスカレーターで足を踏み外す

デパートに買い物に行ったところ、連れていった三歳になる子供が、一人でエスカレーターに乗ろうとして足を踏み外しケガをしました。デパート側は、子供の手をとって乗るようにといつも場内放送で注意していたのだから責任がないといいます。本当に責任がないのでしょうか。
これはデパート側の注意が十分であったかどうかが問題です。つまり、デパート側に過失があったかどうかです。
一般に過失とは、社会において要求される注意をなすことによって、ある行為が一定の結果を発生させることを知りうるのに、不注意のためこれを知らずしてその行為をする心理状態であると説明されます。そして不法行為法が予定している過失は抽象的軽過失でもよく、行為者の階級、職業、地位から一般的に要求される注意を欠いた場合である、善良な管理者の注意といわれています。
しかし判例では、この予見しうべきものを予見しないというよりむしろ、加害者側の行為と法の命ずる行為との間に食い違いがあったことを過失と考えているようです。
それではデパートにはどの程度の注意義務が課せられているでしょうか。デパートのエスカレーターは大人が来るばかりでなく、子供もまたそれに来ることは当然予測されます。したがって、それに応じていろいろな場合を想定して施設や人的配備が行なわれなければなりません。この意味では、子供の手をとって来るように場内放送していたことによって過失なしということはできないと思われます。つまり、客観的にどのような措置をとっていたのかが問題になり、法の要求している危険回避措置がとられていない場合には過失ありということになりましょう。

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このような判断をする場合の一つのファククーとして、エスカレーターの横にいる案内嬢の存在が問題となりましょう。この案内嬢の役割がなんであるかはあまりはっきりしません。デパートヘ人ってきた客に微笑を送り、その心理的効果によって買い物をさせようとするのか、あるいは、どこにどのような商品があるかを案内するのか等々。
しかしいろいろな役割があるとはいえ、エスカレーターに関する事故を未然に防ぐという義務がそのなかに入っていることを否定することはできないでしょう。そうだとすると、幼児が一人でエスカレーターに乗るのを容認したり、うっかり見落してしまった場合はデパート側の過失ということになりましょう。
それでは案内嬢がエスカレーターの横にいなかった場合はどうでしょうか。この頃は人手不足ですべての階ごとに案内嬢を配置することは困難でしょうから、いないことが直ちに過失とはいえないでしょうが、いない場合はそれ相応の措置がとられることが要請されていると考えねばならないでしょう。例えば、エスカレーターの速度、角度、コンベアを危険でない材質のものにかえるなどです。このような措置がとられることなく、案内嬢を置かないとするなら、デパート側の過失を否定することができないように思われます。
次に、被害者側の事情をも考えねばなりません。いわゆる過失相殺の問題です。
この場合、監督義務者である親の過失も否定しえないでしょう。自らの監督義務を十分つくさず全額の損害賠償を請求することは衡平上妥当性を欠くからです。
この過失相殺は親が損害賠償を請求する場合も、子自身が損害賠償を請求する場合のいずれにも斟酌されます。
なお、エスカレーターの保存、設置に瑕疵がある場合は民法七一七条の工作物責任によってデパートの損害賠償を請求できることは当然でしょう。判例においては、荷物専用のエレベーターが、問題になったことがありますが、エスカレーターも同様に土地の工作物と考えてよいでしょう。

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