海水浴場で救助船が遅れて水死

私たちは家族で海水浴場に行きました。そこで、長男が遊泳中、引潮が早くて沖の方に流されはじめたので、A市観光課から遊泳者の危険防止および救助のため派遣されていた市役所職員に、救助船を出してくれるように懇請しました。しかし、波浪が高くて船が出せないとの理由で拒否され、そのうち長男は行方不明で水死しました。救助船を出していてくれたら助かったのにと思います。A市に損害賠償を請求できるでしょうか。
海岸や水面は原則として国有地であり、その管理は通常、県に委任されています。海水浴に適した海岸を自己の行政区域内に有する市町村は、県から海岸地域を賃借し、海水浴湯に必要な共同便所や余興場などの施設を用意し、その地域を出店業者等に転貸するというような方法で海水浴場を開設することが多いようです。さらに、市が海水浴場の警備、清掃や利用者の監督、救護設備の設置等を行なっている場合もありますが、その際、市が海水浴場の管理者としていかなる法律的責任を負っているかということが問題となります。
海岸のような自然公物については、これを国家賠償法二条にいう公の営造物に含めるか否かについて、学説は分れています。しかし、少なくとも海水浴場のように、市がこれを賃借し、一定の人的物的設備を用意している場合には、これを公の営造物に含めて者えたうえで、その設置の管理上の瑕疵について慎重に考慮すべきでしょう。

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普通の海水浴場のように、市が単に業者や利用者の便宜を図っているにすぎない場合には、市営プールなどと異なり、水面を含む全体について法律上の管理責任を負っているとはいいがたいでしょう。しかし、市がみずから開設しておきながら、風浪の高い時の赤旗の掲出や救命道具など、一切準備していない等の事情がある場合には、公の営造物たる海水浴場の設置に瑕疵があるものというべきです。したがって、もし出かけた海水浴場には通常の設備が整えられていたとすれば、海水浴場の設置の瑕疵による責任を問うことはできないでしょう。
しかし、長男が遊泳中、引潮に流されはじめたとき、A市の職員に救助船を出してくれるよう懇請したが風浪が高いという理由で拒否されたという点については、市の責任が問題になります。市は、多くの場合、市役所内に観光課を設けて宣伝等を行ない、それによって利用者も増え、間接的であれ、利益を受けることになるのですから、海水浴場として通常整えておくべき施設を用意し、かつ、それを追切に利用することは利益を受ける者としての市の法律上の義務であるというべきでしょう。したがって、実際には大して風浪は高くなく救釣船を出すことが危険でもなかったとすれば、水難者の救助は本来警察保安行政に属することですが、これを共助する目的で用意していた人的、物的設備の利用を市の職員が誤り、それによって人命を失わせたといえますから、その現場管理者たる職員の不法行為を理由として市に対する損害賠償の請求ができるでしよう。
また、長男が沖の方に流され始めたとき実際に風浪が高く、救助船を出すことが危険であったとすれば、船を出さなかったこと自体による責任は発生しませんが、逆に、そんな状況の海で泳いでいるのに遊泳禁止の旗を立てるなどせず放置しておいたことについての不法行為責任が問われるでしょう。
当日、船を出せないほどの波があったとすれば、沖の方へ遊泳したこと自体についてあなたの長男にも過失があったというべきです。したがって、市の職員の海水浴場管理にあたっての不法行為責任と溺死者の過失が競合して発生した事故ですから、市の責任が認められる場合でも過失相殺により、損害賠償額は若干減少することは覚悟しなければなりません。
なお、子供が責任能力がない程度に年少であった場合には、親権者としての親の責任が問われ、同様に過失相殺が行なわれます。

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