登山標識が間違っていて遭難

高校生になる子供が、友達と山登りに行きましたが、山の標識が間違っていたために道を間違え遭難しました。このような場合、だれに、どの程度の損害を賠償してもらえるでしょうか。
登山者の多い山には通常、登山標識と呼ばれる工作物が設置されています。これらの多くは地元の都道府県や市町村が設置したものですが、法令上の義務にもとづくものではありません。しかし自然の景勝地を擁する山の多くは国立公園や国定公園の指定を受けていますから、登山標識は公園管理者である国もしくは地元の地方公共団体が設置している場合が多いと思われます。国有地に標識を設置する場合には、スポンサー付の場合を除いて地方公共団体に任せているのが実状であり、国立公園の指定を受けた際に国が補助金を出して地元市町村に設置させた場合もありますし、都内の国立公園のように都が設置している例もあります。
国立公園の場合には、国は、そこに国立公園管理員を駐在させて標識等の管理にあたらせる一方、地元の都道府県に依頼して自然公園管理員の制度を設けてもらって管理にあたっていますが、公園地域の広さに比して、人手が不足しており、その管理は必ずしも十分とはいえないようです。最近、レジャーブームによって、経験の浅い登山グループが急増していることを考えると、観光行政の面からも、登山標識について一定の法的規制が検討されるべきでしょう。

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自然公園法によれば、国、地方公共団体等は、すぐれた自然の風景他の保護とその適正な利用が図られるようにそれぞれの立場において努めるべきことになっています。この規定が登山標識の設置を義務づけていると解することは困難でしょうが少なくとも、標識の設置が規定の趣旨に添っているものと考えることはできます。こうした趣旨から考えても地方自治体等が標識を設置する以上は、正確なものでなければなりません。したがって、標識の設置行為を誤ったために標識が不正確なものとなったという場合には、国家賠償法二条にいう公の営造物の設置管理に瑕疵があったということができますから、この場合には、国または地方公共団体が責任を負うことになります。
さらに国または地方公共団体の設置行為に誤りはなかったが、その後、第三者の手によって不正確なものにされたという場合もありえます。この第三者が不法行為責任を負うのは当然のことですが、国もしくは地方公共団体の責任も問題になります。国立公園や国定公園はきわめて広大な地域にわたっていますから、その全域について常時監視するのはとうてい不可能なことですが、通常のパトロールを怠った場合や標識の誤りについて他の登山者などから通報を受けたにもかかわらず、国または地方公共団体がその修正を怠っていたというような場合には責任を負うものと考えるべきです。
標識は、できるだけ正確に設置されるべきです。しかし前記のように、それがきわめて困難な場合もありますし、本来登山標識は登山者の参考に供するという性質のものですから、進路に関する最終的決断は登山者自身が行なうべきものです。したがって、登山者は登山標識が万一、誤っていないかということについては常に相当な注意義務を負っているものと考えるべきです。
不幸にして誤った標識のために遭難し、一定の損害を受けた場合には、前記の登山者の注意義務を前提にしたうえで、標識の不正確さの度合に従って損害の範囲を決定すべきでしょう。しかし、濃霧の中で、しかもまぎらわしい場所で誤った標識に出会ったような場合には、登山者としても標識を信頼せざるをえないような場合もありうることです。このような場合には損害は主として標識の設置の瑕疵によって発生したものと考えてよいでしょう。逆にいえば、そうした危険の発生しやすい場所に設置されている標識については、管理責任もそれだけ過重されていると考えるべきでしょう。

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