スキー事故の原因と責任

私の子供は、観光促進会という団体が他人から土地を借り、スキーロープトウを設置するとともに、その周辺を整備して初心者向ゲレンデとして開放しているスキー場で、放置されていた伐倒木に突きささり、出血多量で死亡しました。この団体に損害賠償を請求できるのでしょうか。この団体は法人ではないということですから、だれを相手に請求すればよいのでしょうか。
スキーは、その性質から、かなりの危険性の伴うスポーツです。このため、スキーヤー同士の衝突による事故、スキー用具の欠陥による事故、天候、雪質など自然現象から生ずる事故、ゲレンデの状態から生ずる事故が待ちうけています。本問の場合は、この最後のうちの一類型であるゲレンデの不備による事故ということになります。そして、そのゲレンデは通常、自然の地勢を利用したにすぎません。このため、スキーヤー自身が、技量に即応した無理のない滑走をし、滑走中はゲレンデの状態に常に注意し、危険があればみずから回避すべきで、これができなくて事故が生じても、自分から引き起こした事故と考えることもできます。自分の滑降能力もわきまえずに上級コースをスピードを出して滑走していたため、窪みに落ちたり、樹木に衝突して事故が生じたようなときは、このように考えて、自己の責任で処理しなければならないでしょう。しかし、放流されていた伐倒木に突きささった場合も同様に考えてよいかは疑問です。

スポンサーリンク

ゲレンデは、その地形等に応じた一定の積雪があってはじめてスキーを行なうことが可能になるわけですから、あまり積雪がない場合はクロスされます。そこで、このような状態にあるのに、スキーにきたうれしさのあまり無理に滑走をしていた時の事故だとしますと、だれにも賠償を請求することはできないでしょう。
しかし、スキーロープなどが稼動しており、滑走可能な状態での事故の場合は、伐倒木を放置していた者にも、なんらかの責任を負わすべきだといえます。
そこでこのためには、まずゲレンデとスキーロープトウ設置を一体として捉えて考えてはどうかと思います。ゲレンデは、主として自然の地勢を利用するのですが、一般には、樹木の伐採や地均し工事などを施して整地し、積雪があると雪面を整備するなどの作業が加えられるのが普通です。そしてかかる人工の整備と、スキーロープトウを設置して営業を営むことと切り離すわけにはいかないでしょう。スキーロープが本来の機能を発揮するのはゲレンデと一体となっているからです。このため、スキーロープトウとゲレンデとは、全体として土地を基礎とする一個の企業設備と、民法七一七条にいう土地の工作物とみてよいと思います。そこで、これに瑕疵がありますと、そのことによって生じた損害については、占有者か所有者が賠償しなければなりません。
そこで、つぎにゲレンデの伐倒木の放置が、土地の工作物の瑕疵になるかを考えなければなりません。土地の工作物の瑕疵という場合、その工作物が本来具えるべき性質または設備を欠いていたことを意味するとされています。このため、ゲレンデとしては、滑走可能な積雪があれば、安全にスキーができるように整備されていることが必要になります。初心者向けゲレンデとして開放しているときは、危険物を避けるに十分な能力をもたない者を対象とすることになりますので、いっそうの注意が必要です。このことからみますと、ゲレンデ内に伐倒木が放置されていて、それが積雪の状況で露出していたこと自体は、やはり土地の工作物の瑕疵とみなければなりません。
判例でも、このことを認めたものがあります。そして、判例、学説の傾向としては、土地の工作物責任は、民法の中で危険責任の原理を認めたものであることから、被害者の救済に広く役立ちますので、その適用の範囲をなるべく広げようとしていることを考えあわせますと、妥当ではないかと思います。
つぎに、責任負担者を考えてみましょう。観光促進会が土地を借りてスキーロープトウを設置し所有しているわけですから、そのゲレンデの占有者とみられるでしょう。しかし、法律的には、観光促進会が法人でないとしますと、観光促進会自体に損害賠償を請求できるかが問題となるでしょう。そこで、観光促進会の実態を明らかにしなければなりませんが、その会の組織、運営すなわち総会の決議、構成員の変動、役員の選任などに関する規則があり、これにもとづいて活動し、その活動が代表機関を通じて行なわれていることなど、実態が法人と変わりないようなものであれば、これは権利能力なき社団といえます。
ただ判例では観光促進会自体は権利の主体ではないといわれていますから、構成員全員を相手に賠償請求しなければならないのではないかと思われますが、これでは、賠償請求をする方もされる方も大変です。そこで、民事訴訟法四六条では、権利能力なき社団自体を相手に賠償請求できるとしています。このため、観光促進会だけを相手にしてもよいわけです。
スキーロープトウおよびゲレンデの占有者が、権利能力なき社団である観光促進会であるということになりますと、その観光促進会の占有は、事実上はその会の代表者(代表機関)による占有であり、これを他面からみると代表者としての地位にある者の個人による占有でもあります。このため代表者もまた民法七一七条にいう占有者として賠償責任を負わなければなりません。
そして、通説、判例の考えによりますと、観光促進会自体に対する賠償請求と並行してその会の代表者個人にも賠償請求することが認められます。これは、被害者の保護を厚くするために認められた考えです。

幼稚園の送迎バスの事故/ 登下園中のつきそい保母の責任/ 園児の安全を守る義務/ 保育時間中の保母の注意義務/ 保育時間終了後の事故/ 無認可保育園での事故/ 会社内にある無償の臨時保育所でのけが/ 通学中の事故防止と学校の責任/ 職業技術授業中の事故/ 教師個人の責任/ 体育教員の注意義務と責任/ 水泳授業中の事故/ 必須クラブ活動中の事故/ 示談解決の約束の効力/ 掃除中の事故での賠償請求の相手/ 教員の監督責任/ 臨海学校における引率教職員の注意義務/ 臨海学校中の旅館の事故/ 課外活動での事故における引率教員の責任/ 学校での休憩時間中の事故/ 禁止されている朝礼台に登ってのケガ/ 校舎工事中の事故/ 遊戯中のケガ/ 放課後に野球していてケガ/ 放課後の校内で遊んでいての事故/ 校庭で教師の車にはねられる/ 校庭解放中の事故/ 体罰を受けたが/ 体育授業における担当教員の注意義務/ 危険な種目と担当教員の注意義務/ 乱暴なプレーでのケガ/ 登山中の事故/ 運動部でのシゴキ/ 大学対抗ラリー中の事故/ 放課後に学園祭の準備をしていて失火/ 課外活動中の事故/ 机運び中の机の落下/ 競技連盟主催の公式協議中に事故/ 国体に参加し公開練習中に事故/ 先生の懲戒行為と違法性の関係/ 各種学校行事と経営者の責任/ 主催者の事前の注意義務/ スキーヤーとぶつかり重傷/ 塾生の引率教員の注意義務/ 幼児の体育指導とその注意義務/ 遊園地の遊具による負傷/ 近所の子と市営プールに行き溺れる/ 市民会館の階段で子供が転落/ ドブ川に転落/ 公園内の池に転落/ デパート内のエスカレーターで足を踏み外す/ デパートの一時保育所で窒息/ デパート内で客のペットが幼児に咬みつく/ 食堂でお湯をこぼされ火傷/ スケート場で衝突し骨折/ 野球観戦中にボールが飛んできてケガ/ 海水浴場で救助船が遅れて水死/ 登山標識が間違っていて遭難/ スキー事故の原因と責任/ ゲレンデでパトロール員と衝突/ 公団住宅の庇がはがれてケガ/ 友人宅の自家用プールで水死/ 塀を乗り越え無断で空地に入り事故/ 工事のために掘削された穴に落ちたが/ 私有地のため池に落ちたが/ 工場敷地内の危険物に触れてケガ/ 他人の土地でも危険防止措置の要求ができるか/ 野球をしていて盆栽や窓ガラスを壊した/ 子守りを頼んでいた間に交通事故/ 隣家の飼犬に顔をひっかかれた/ 動物園のクマに咬まれた/ 踏切の下をくぐって轢かれる/ 路上で遊んでいてはねられた/ 飛び出し事故にも賠償請求ができるか/

       copyrght(c).子育てと育児.all rights reserved

スポンサーリンク