塀を乗り越え無断で空地に入り事故
近所の子供が、いつもブロック塀で囲まれている空地に、塀を乗り越えては無断で入って遊んでいました。ある日、その空地内にあった鉄管の下敷になり死亡しました。空地の所有者とかけあいましたが、無断で入ったこと、鉄管は近所の会社が無断で持ち込み放置していたものであることなどから責任はないといいます。だれに賠償責任を追及したらよいでしょうか。
土地を空地のままで放置しておいても、それだけでは危険とはいえませんが、空地の中に危険な施設や物が造られていたり、あるいは持ち込まれていたような場合には、空地管理者は、空地全体に壁や柵を作ったり、特定の危険物には、それぞれ損害防止方法を講じておかなければなりません。また、その危険物が、空地使用の権限の無い者によって持ち込まれているのであれば、空地管理者はこれを撤去させて、空地内で損害が発生しないように、適当な空地管理の方法をとらなければなりません。そして、その場合の管理の程度は、その空地の存在場所、空地の状態ならびに危険な施設や物の種類や性質によって異なります。危険性の高い場所や物ほど、高度の注意を必要とします。
空地所有者は、空地管理上適切な注意義務を尽くさなければなりませんが、次のように、その程度が異なることがあります。(1)塀、柵等の無い場合には、所有者は、子供達が空地内の危険物に近づかないよう適切な措置をとらないかぎり責任は免れません。特のある場合には、子供が容易に侵入できない程度の特等があれば、空地所有者は責任を負いませんが、子供達が特等を容易に乗り越えたりくぐったりすることができたり、塀等の一部が壊れていて容易に侵入することができるような場合には、危険防止の適切な措置を講じなかったものとして責任を免れません。本問の場合、後者に該当すれば、なお空地所有者に賠償請求ができることになりましょう。(2)空地内で子供が遊ぶことを空地所有者が黙認していた場合には、特等の有無にかかわらず、一般的には空地所有者の責任は免れません。注意していた場合で、塀等があった場合には空地所有者の責任は無いものと思われます。これに対して、塀等の無い場合には、空地所有者の注意義務の程度は低くなりますが、その場合でも、全面的に責任を免れることはできないものと思われます。(3)仮に、損害が、無断搬入されていた危険物によって発生したとしても、空地所有者の責任は、(1)(2)によって差が生じることはあっても、無断搬入物か否かによって責任が異なるようなことはありません。なぜならば、空地所有者の責任は、空地の管理が失当であったことによる責任だからです。
空地に物を搬入した者は、搬入物の管理権を失わないかぎり、空地の使用権限の有無にかかわらず、その物の管理の仕方が失当であれば、その物から生じた損害賠償の責を負わなければなりません。したがって、本問の場合、鉄管のまわりの囲いを欠いたり、これを傾斜地や凹凸地に置いたり、縦に立てて置いたり、子供の遊び場所であることを知っていながら、損害発生の適切な防止措置をとらなかったような事情があれば、会社の賠償責任は免れません。
本問の場合、前記の基準にもとづいて土地所有者と、物の搬入者にそれぞれ空地および物の管理上の過失があればこの両者に責任があると考えられますから、この両者は、共同不法行為者として各自連帯にて、あなたに対して責任を負うことになります。もっとも、この場合、親権者が子供に対して危険な場所や物に近づかないよう、適切な保護監督を怠っていたような場合に、過失相殺の法理によって賠償額が軽減されることがあります。
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