工事のために掘削された穴に落ちたが

私の子供が、水道管敷設工事跡の水溜りに落ちて溺死しました。この工事は、市が建設会社に請負わせていたものです。両者に損害賠償を請求しようと思いますが、工事関係者以外の者の立入禁止場所とされていたそうですので、認められるか心配です。
それぞれの土地には、その土地の所有者や占有者がいます。もし、生じた損害が土地の工作物の設置、保存に瑕疵があったことによるものであれば、その占有者または所有者は、損害賠償の責任を負わなければなりません。このことは、所有者や占有者が公的機関の場合でも同様であって、工作物は公の営造物と考えられ、その設置または管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときには、国または公共団体が賠償の責任を負わなければなりません。ただその場合、営造物の管理権者が誰かによって、国、都道府県、市町村のいずれかが責任を負います。
ところで、土地の工作物とは、土地に密着して築造されたものや、土地自体に改良を加えて作られたものをいいます。近時の判例では、土地を基礎とする一切の企業施設、保安施設を土地の工作物と考えているものもあります。そこで本問の場合、水道管敷設のため掘削された穴も、土地に人工を加えて作り出した物であるところから、これを土地の工作物ということができます。

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ところで、土地の工作物責任が生ずるには、工作物の設置または保存に瑕疵があることが必要です。瑕疵とは、その物が本来有しているべき客観的に安全な、または完全な性質、性能、設備を欠いていることをいいます。物の崩壊などが、自然力や他人の行為が作用して生じたものであっても、工作物に本来的な瑕疵があれば、所有者等の責任は免れません。工事中の穴への転落死事故は、工作物の設置の仕方の瑕疵というよりは、むしろ、穴の保管の仕方に瑕疵があったことによるものと思われます。そこで、穴の占有者または所有者が、穴の保管のために本来要求される程度の客観的危険防止設備を施していたかどうかによって瑕疵の有無が決められます。穴の客観的な危険防止設備としては、穴の大小によって防止措置の程度は異なりますが、埋め戻しておく、蓋をしておく、人が近よれないように付近を軟弱な状態にしておく、溜った水を排水しておく、子供達が全く入れないように柵とかロープとかを張りめぐらす、見張人を置く等があり、このような、穴の保管上客観的に要求される程度の推薦がないかぎり、なおその穴の保管に瑕疵があるといえます。ただ単に、部外者の立入禁止場所の立札を立て、または付近の住民に危険防止の申込をしただけでは、穴の保管上の瑕疵の存在を否定することはできません。
土地の工作物の設計、保存の瑕疵より生じた損害の責任は、第一次的には占有者が負い、占有者が、損害の発生を防止するのに必要な注意をした場合には、占有者は責任を免れることができます。その場合には、所有者が責任を負うことになります。そして、その場合の所有者の責任は、無過失責任と考えられていますので、自分に過失の無いことを立証しても、責任を免れません。工作物を持っているということだけで責任を負います。そこで、請負人としての建設会社が占有者の地位にあることは勿論ですから、建設会社が、損害の発生を防止するために必要な注意をしたことを立証した場合を除き、この者が第一次的な責任を負うことになります。本問の場合では、当該場所には工事関係者以外の者は立入を禁止されていたとのことですが、これだけでは会社の責任は免れません。会社が、子供の侵入が容易であり、損害発生の予見可能性があるのに、適切な防止措置をとっていなかった場合には、会社は必要な注意をしていないといえるからです。
一般的には、工事の請負の場合には、注文者は、注文または指図について過失がないかぎり責任を負いませんが、民法七一七条の工作物責任が問われる場合には、工作物の所有者としての最終的な責任は免れませんし、さらには、所有者と占有者が別人であっても、所有者は必ずしも占有者ではないとはいいきれない場合もありますので、注意を要します。そこで、市の工事施工規程などにより、工事施工のため、工事ごとに専従の設計担当員、事務担当員、工事監督員などが置かれており、市が具体的に工事に対する指揮、監督および検査権限を持ち、請負人偏と共同して工事の遂行にあたっていたような場合には、注文者(市)といえども、工作物を事実上占有していたといえます。
このように市も請負契約にもとづく指揮監督権により請負人と共同して穴を管理していたと考えられる場合には、その穴も市の管理権に属する公の営造物ということになり、市は、国家賠償法二条の「公の営造物の設置管理の瑕疵にもとづく損害の賠償責任」を負わなければなりません。そうなれば、会社と市との両者は、共同不法行為者として、連帯して賠償の責任を負わなければなりません。

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