私有地のため池に落ちたが

家の近くに造園会社の芝生造成地があります。そこは有刺鉄線が張りめぐらされていますが、一部がこわれ付近の人達は自由に出入りしています。二歳になる長女も実妹に連れられて、そこに散歩にいった際に、実妹が少し目を離した隙に、そこにあるため池に落ちて死亡しました。造園会社に損害賠償を請求できないでしょうか。
子供が、私有地内に置かれている鉄管とか、機械の下敷になって死亡したり、水の溜った穴や、ため池などに落ちておぼれ死んだりする例が多発しています。このような危険な物や施設の所有者や管理者は、その危険の程度に応じて、他人に損害を与えないように十分に注意して、その物や施設を管理する一般的な責任があります。特に危険施設から生ずる損害に対しては、民法は、土地の工作物責任として、一般の責任に比して、いっそう厳しい責任を課しています。
土地に密着して作られた家、橋などや、土地そのものに改良を加えて作られた道路、人造湖などは、土地の工作物といわれています。そして、工作物の設置、保存に瑕疵があって、そのため損害が発生した場合には、その工作物の占有者または所有者は、被害者に対して、損害賠償の責を負わなければなりません。

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工作物の瑕疵とは、物それ自体の構造上の欠陥を瑕疵と考えるものと、物の外部事情の欠陥(柵、立札が無いなど)をもって瑕疵と考えるものとがあります。ところで、ため池が野天にあり、幼児が落ちれば死亡する可能性のある大きさ、深さをそなえていれば、その物に蓋がなかったり壊れていた場合にはもちろん、ため池が山奥にある場合はともかく、人家の近くにある場合には、柵、立札がない場合にもやはり瑕疵があるといえましょう。これに対して、本問のように、ため池が芝生造成地の中にあり、しかも造成地の外周が鉄線で囲われているような場合には、ため池そのものに蓋や柵、立札が無くても、これをもって直ちに瑕疵があるとはいえません。そこで問題は、管理者が危険施設を含む芝生造成池の保管上、瑕疵とみなされない程度の防止措置を施していたかどうかですが、人家の近くの工作物の場合には、損害発生の危険性は高くなりますから、防止措置は危険物の危険性と比例します。この場合、柵が無かったり、壊れていたり、すき間が大きく幼児が容易に侵入できる程度であれば、やはり瑕疵があったといえましょう。
民法七一七条の責任は、占有者が第一次的に負いますが、もし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意を行なっていたことを立証すれば、占有者は責任を免れることもできます。本事例と類似の判例では、芝生造成地の周囲には、事故発生の約一週間ほど前には有刺鉄線が張りめぐらされていて、通常は立入りが不可能であったこと、管理者が月一回程度の見回りをして、事故発生の約一月前には一部切れていた鉄線を修理していたこと、事故当時、鉄線の一部が地表に落ちてはいたがこの事実を知りながら放置していたこともない、等の事実から、管理者は、社会通念上相当な防止措置をしていたとして免責されています。しかし、多くの工作物責任に関する判例では、占有者が免責された例はほとんど無いようです。本問の場合、占有者が有刺鉄線の状態を常日頃検査していなかったり、子供達が占有地内に出入りしているのに、これを止めさせる適当な方法をとらなかったり、ちょっと注意すれば鉄線の欠陥を発見することができるのに、この注意を怠ったり、発見してもこれを補修しなかった場合などには、占有者にやはり過失があることになり、責任を免れません。単に鉄線や柵を張りめぐらしていたというだけでは、占有者は責任を免れません。
もっとも被害者の方も、柵の存在を無視して、無断で他人の土地に侵入したのですから、被害者または被害者側にも、やはり過失があるといえます。しかしこのことは、工作物に瑕疵があるかぎり、加害者の責任を全面的に否定する理由とはならず、後述のように、過失相殺によって被害者への賠償額に影響を及ぼすに止まります。
本問の場合、仮に賠償を得られる場合でも、親権者等に過失が無かったかどうかが問題になります。そこで、監督者が実妹の場合には、親の監督権が延長したものと考えて、実妹の過失をもって親権者の過失として、賠償額の決定にこれを斟酌することができると思われます。

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