動物園のクマに咬まれた

私の子供は、都立動物園のクマの前にきたとき、エサをやろうと手をのばしたところ、オリのすき間から突然クマが手をのばし、子供の手をとってかみつきました。そのため、子供の右手の中指が半分ほどくいちぎられてしまいました。どこへ補償の請求をしたらよいのでしょうか。
動物園には私人が営んでいる私営のものと、国または地方公共団体が営んでいる公営のものとがあります。このケースの都立動物園は後者に該当するもので、その施設は行政主体より公の目的に供用される有体的ないし物的設備に該当し、公の営造物と考えられるものです。ところが、その中に収容されている種々の動物については必ずしも見解が一致していません。公の営造物にあたると考えた場合には、それが他人に害を加えた場合には、国家賠償法二条が適用され国または公共団体は公の営造物の設置または管理に瑕疵があったために損害を加えてしまった場合となり、つねに責任を負うことになります。公の営造物に動物を含ましめるべきではないという考え方からは、動物が加えた害については民法七一八条の動物占有者の責任に関する規定の適用をうけることになります。この両者の違いは、国家賠償法は国または公共団体はつねに責任を負うとして民法上よりも重い責任を課している点といえましょう。しかし国や公共団体が管理しているからといって、その責任が異なることについての合理性は疑わしいものです。

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後者に従い民法七一八条を適用しますと、動物の保管者が相当の注意を払った場合の免責事由を認めています。相当の注意とは動物の性質、種類に従い通常払うべき程度の注意義務をいいます。多数の観客が予想される動物園や遊園地では檻の設備を完全にして、人の手指などが檻内に入らないような金網を張り、あるいは檻との間に一定の間隔を有する外柵を設けて檻に直接接近させないような処置をとるなど観客が知らずに動物に近づいても危害を加えられることのないように万全の措置を請ずる注意義務があるものといえます。したがって、このケースでは、多数の観客が予想される動物園で、しかも危険性の高いクマの檻としては不十分であり、注意義務を明らかに欠いているものと思われます。したがって、都立動物園のクマを公の営造物と見るか否かに関係なく、その管理者である東京都の責任は免れえないものと思われます。この場合は都を相手に、うけた損害の賠償を請求できます。
「被害者二過失アリタルトキハ裁判所ハ害ヲ定ムルニ付キコレヲ斟酌スルコトヲ得」とされ、公平の見地から、損害賠償の額を定めるとき被害者の過失を考慮すべきだとしたのが過失相殺です。この被害者の過失は、被害者の不注意によって損害の発生を助けたという程度のもので、その程度は加害者の過失の前提となる注意義務に比較してより軽いもので足ります。そのため加害者の責任能力より低い小学生程度の判断能力で過失が問題となり、過失相殺の適用対象となります。ただ被害者が請求する損害の算定にどの程度までその過失が考慮されるかは、注意能力の程度によって違ってきます。子供がクマからの危難を避けるために必要な注意を払う能力を備えた年齢であれば過失が認定され、賠償請求額が減額される可能性があります。しかし、その年齢に達していない場合には過失はありえず、過失相殺の問題も生じませんので全損害額が賠償の対象となります。しかし、この場合にも動物園での引率者に監督上の不注意があり、それが原因で損害をうけた場合には被害者側の過失として過失相殺を行なうべきであると解されています。しかし判例では、それは被害者自身の過失ではないことを理由に過失相殺を否定しています。判例の立場では、子供が咬傷を負った場合に、子供からの損害賠償請求においては引率者の不注意は考慮されないことになります。ただし、引率者自身の賠償請求においては当然考慮されることになります。

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