踏切の下をくぐって轢かれる

私の四歳の子供は、私と一緒に買物に行く途中、電車の踏切がおりているので待っている問、突然踏切の下をくぐって前方へ走り出したため、電車に轢かれて即死しました。私の子供が悪いにつきるのでしょうか。
第一に踏切事故においては、踏切警手や運転士の注意義務違反の有無が問題となります。本問の場合も警手配置の踏切であれば、事故当時警手が安全確認を怠らず、かつ、くぐり抜けた子どもの危険防止のため適切な措置をとったかどうかは、警手の過失認定の基準といえます。
また、電車等の運転士も踏切通過時には格段の前方注視義務が要求されるものというべく、わき見運転などでブレーキ作動に遅れが生じたような場合には、同様に過失ありと判断されることになりましょう。さらに、電車等の制動距離はその速度の大小に関係する点から、運転士が踏切通過時に要求される制限速度を守っていたかどうかも過失認定の際の資料とされましょう。
以上の過失が認められない場合にも、踏切として必要な保安設備を欠いていたときは、それ自体土地工作物の設置、保存上の瑕疵として、損害賠償責任を免れないことがあります。そのような瑕疵は第一に、交通頻繁な踏切に警手を配置しなかったり、あるいは、遮断機だけあって警報装置がなかったような場合、さらにはある程度以上の交通量の踏切において遮断機さえも設けていない場合などに認められます。要は、交通量の大小、運行回数、見通しの良否、線路幅員の広狭などを総合的に判断して決められることです。その場合、運輸省の通達等の基準を満たしているかどうかは、瑕疵の存否と必ずしも関わりはないとするのが判例の態度です。

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次に問題となるのは、遮断機の構造上の欠陥です。本問と類似の事件において、裁判所は、踏切道を通過する者の中には事理弁識能力に欠け、あるいはこれが十分でない幼児、児童もあり、また危険を犯して横断しようとする無謀な者も絶無ではないこと、軌道が複線の場合には左右から列車が接近することがあり、一方にのみ注意を奪われることなどを考慮すると、遮断機を設置したとしても、閉鎖した遮断機の下を容易にくぐり抜けることができ、幼児がそのまま通過できるような構造のものであれば、遮断機設置の目的を十分に果たすことはできないとし、少なくとも、警手を配置して遮断機を操作せしめる必要のある踏切道に設置する遮断機については、くぐり抜け防止装置を設けなければ、遮断機はその設置、保存に瑕疵があると判断せざるをえない、としています。
この判決が要求している工作物設置、保存の義務はやや過酷な感じがしないでもありませんが、事故踏切の遮断機は手動のものであり、竹棒一本にすぎず、しかも遮断機の高さは地上約八〇センチメートルという高い位置にあったということですから、遮断機に針金、鉄片等を下げてくぐり抜けを防ぐ装置を設けておくべきであったという原告側の主張を容れたものと考えられます。
本問の事例も、おそらくそうしたくぐり抜け防止装置を欠いていたため、容易にその下をくぐって飛び出すことができたものと思われますが、そうであれば、鉄道会社に対し工作物責任を問うことができると考えます。ただし、子供は四歳に達していたということですから、遮断機の下りているときの危険については、一応事理有識能力をそなえているものと判断されますし、かりにそうでないとすれば、親の不注意があったことは否定しえませんから、いずれにせよ被害者側の過失として賠償額の算定にあたって相殺の適用を免れることはできないと考えられます。

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