嘘との出合い

 人間はいろいろなうそをつきますが、うそをついたとき、それがうそだと見破られないように、うそを強固に隠そうとします。隠し方には、黙否しようとする場合と、直接隠すことを目的として新たなうそを累積させる場合の二形態があります。
 人間は自己の心を隠そうとする傾向を示す反面、他人の心奥への探索欲求にうむことを知らない。それ故に太古より、人間は他人のうモを検索するいろいろな方法の探索を試みて来た。たとえばある種の神裁決や米噛法、盟神探湯(くがだち)などです。しかし大部分は古代信抑や暗示、トリックなどに依存した残忍なものであって、史実考証的な価値以上の意味をもたらしてはいません。
 現代のうその検索技法は、より洗練されたものである。催眠技法、連想法、深層面接法、ポリグラフ法などがそれです。しかし、これらはいずれも犯罪科学の世界にあるもので、子どものうその世界には利用されていません。発達途上にある子どもたちが犯罪科学の対象外にあることはむしろ望ましいことである。しかしポリグラフ法などは、それが犯罪科学の方法だけにとどまらず、やがては心の探層にひそむコンプレックスのインジケーターとして、また不安定な子どもの情動の随意統制の方法として身近かなものになるかも知れません。

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 幼児のうそは、あたかもそれがたそがれの甘い世界にただようがごとく、自他の区別のさだかならぬ未分化の世界から出発します。そこにはなんらの罪もけがれも認められません。幼児のうそは、彼等の心のしくみとそれの社会的なかかわりかたを、発達的に正しく理解さえしていたなら、その殆んどのものは容易に見抜くことができるのです。いたずらに案じて叱るのは愚かです。
 しかし犯意のうその世界は、それに両手を揚げて賛美ばかりもしていられません。うその機能に問題があるからです。はてしない欲求はいたるところで阻止されるので、児童の心はときにはけわしい障壁にも立ち向かわなければなりません。やってくる苦難のときも、はるかな目標をめざして生きぬけるその意欲と努力の過程こそ尊いのです。はるかな目標とは創造的自己実現をさしていうものと理解したい。うその機能に問題があるといったのは、かかる場合、うそは意欲的な努力の心をくじけさせてしまう方向に働くことが多いからです。
 児童のうそは、それがたとえ反社会的犯罪的なものであるにせよ、それを見抜く方法や処遇は不断の忍耐強い教育指導やカウンセリングの中にこそ求められなければならないでしょう。
 次に子どものうそをの分類を基準にして示しておきましょう。
 (1) 自己中心的なうそ、自他の未分化
 (2) 空想的作話によるうそ、空想性
 (3) 自己防衛のうそ、合理化のためのうそ、叱責恐怖からのうそ
 (4) 自己顕示のうそ
 (5) 生活技術としてのうそ、お世辞、儀礼、ごますり
 (6) 他人の身代りになって、ひとを助けるうそ、英雄心
 (7) 人をだます意図をもってつくうそ、反社会性自己中心的なうそや空想性に起因するうそについてはすでに述べたとおりです。
 (3)の合理化のうそというのは、書初めコンクールで入賞できなかったようなとき、それを毛筆の粗悪のせいにしたり、試験の不成績を先生や親のせいだといったりするような場合です。また女の子とも仲良しになりたいが恥かしくてできない子どもが、自分は女嫌いで勉強の方が奸きなんだと思い込む場合もそうである。非行少年が財布を盗んだのでなく拾ったのだという場合なども合まれます。
 (4)の自己顕示のうそとは、自分をよくみせたい、他から大いに認められたいといった欲求からでるうそです。これと類同のうそには人からいつもほめられたいといった欲求からのうそがあります。いずれにしてもこれらの欲求が満たされないような事態では、わずかの傷などを大げさに痛がるなど、周囲から同情という形で関心を集めようといったうそになることが多い。
 (7)の反社会的うそというのは、他人から金品をだましとる目的などで、甘い言葉を使ったりおどかしたりするといった意図的うそなどです。また反社会的という意味では、他人の財布や文房具類を盗んでいながら、絶対に盗らないと否認するようなうそもつけ加えておきましょう。
 子どもであっても、うその種類は多く、その分類もいろいろな観点から試みられていることはすでに述べましたが、うその中でも反社会的なうそは、できるだけ早期に正確にみわけて、治療的教育を施すことが、社会と本人の双方にとって重要であることはいうまでもありません。

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