何が子供の心を規定するか

 新生児から幼児へ、さらに学全期をへて思春期にいたる十数年の間は、心身ともにめざましい分化発達の時期です。したがってこの時期に働く種々の要因は、直接間接にその発育過程を左右し、ある時にはこれを促進させ、またある時にはこれを遅滞させたり、歪曲させたりするなど、成人期における同じ強さの要因よりはるかに重大な影響をもっています。すなわち児全期に何らかの障害が加わった際には、単にその時期だけの問題にとどまらず、後々にまで大きな影響を与えるのであり、これは身体面ばかりでなく精神面において一層強調されねばなりません。精神衛生とは元来人間の精神の健康の保持、増進を積極的には目的とし、消極的には、精神疾病や歪みの予防を目ざしていますが、成人の精神衛生をはかるためにも、子どもの時期の精神衛生がきわめて重大な役割を担っているというべきです。

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 一生のうちで児童期はもっとも発達変化の著しい時期である。個々の声をあげて生れたばかりの赤子は、人間というより一個の生物としての存在にすぎませんが、その後十数年ばかりのあいだに、身体的にも精神的にも一個の独立した人間存在として、めざましい発達をとげます。このような発達の原動力は、勿論個体の有する生命活動であって、これはさらに遡れば、遺伝素因にその源を発しているといわねばなりません。
 この遺伝素因は、単に成熟力を規定するばかりでなく、その個体の発達過程における個体差、その速度や方向性や、その限界などをも支配しています。他方、身体発達に比べれば精神発達は、種々の環境要因によっても強く規定されます。いわゆる生物学的環境要因、例えば胎生期における母体環境や、出産期、出生後の時期に外から加わった諸条件は直接、間接に脳の成熟力を左右し、脳発達ひいては精神発達特に知能の発達を規制します。一方、パーソナリティの形成については、心理、社会的環境要因の役割も極めて大きい。もともと精神発達の過程は、環境からの学習過程に他ならないと見なすものもあるくらいで、どのような環境刺激が与えられたかによって精神発達は大きな影響をうけます。パーソナリティ形成に及ぼす、心理?社会的環境の意義についてはここでは特にくり返しませんが、ごく簡単化すれば家庭内、学校内での心理、社会的環境がきわめて重要な意味をもつことになります。殊に家庭内における両親特に母子関係が決定的な影響をもつことが、精神分析や力動的な性格形成理論からは強調されます。
 発達過程に及ぼす遺伝(素因)と環境との役割の相対的な重さについては、その立場立場によって幾つかの説がありますが、双生児研究などで明らかにされているように、遺伝か環境かというように対立した関係で把えられるものでなく、これらは互に相乗的に作用するものとして把握されねばなりません。
 以上は正常な発達現象についての、ごく概括的な要因の考え方を示したものですが、異常な、あるいは病的な発達障害は、これらの発達を規定する要因が、何らかのアンバランスをきたした場合と考えることが出来よう。
 多くの症状には、それを引きおこす直接の契機がみいだされる場合が少なくありません。例えば弟妹の出生がきっかけとなって夜尿が始まる、交通事故を受けててんかんが発現するなどの例に見るごとくである。しかし重要なことは、これらの契概は単なる結実因子であり、より根本的には、どの程度発病をもたらしやすいかという準備状態に大きな原目的意味をみとめねばならぬことが多いことです。このような準備状態がどのようにして形成されるかについては、ふたたび、遺伝と環境との両要因が関係してきますが。

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