落ち着きのない子

この子は落ち着きがなくて、と訴える母親は多く、学校の先生から、「お宅のお子さんは、もう少し落ち着きが出ればいいのですが」と注意されることも少なくないと思います。
しかし、こういうような表現をするとき、落ち着きがないとはどういうことなのか。また、普通の子と落ち着きのない子とはどう違うのかは、必ずしもはっきりされていないことが多い。
実際に落ち着きがないというのは、いろいろな意味に使われます。働きが多い、一つことに長つづきしない、注意が散りやすい、そそっかしい、いろいろなことに関心をもちすぎる等。また、同じ働きが多いということでも、一つ所にじっとしていないことをいう場合もあれば、体の各部をいつも動かしていることをいうこともあります。のみならず、落ち着きがないというのはふつう好ましくないこととして、困った特徴として述べられる場合が多い。
しかしそれでは、落ち着いているのは、本当によいことなのでしょうか。裏返してみると、動きが少ない、一つことに執着する、注意がすぐに働かない、慎重すぎて事をおこせない、関心が乏しいといったことが、落ち着いていることならば、やはりあまりよい評価とはいえません。
また落ち着きの程度が、子供によってばらついているとして、一体どの程度からを異常に落ち着きがないものとして判断するかは、必ずしも一定していません。
学校の先生はまだしも、多くの子どもを見ていて、正常の子どもの落ち着きの程度を存知しています。したがってそれに比べて、落ち着きのなさを評価しているかもしれません。しかし、母親が評価するときには、子供は一般には落ち着きのないものであることを、よく忘れています。親自身が考えている子供の姿は、しばしばこうあってもらいたいという理想的な発達の像であり、それに比べると、落ち着かないという評価は、不当にきびしい評価であることが少なくないからです。親が、あるいは先生が、落ち着かないことを問題にするさいには、まず、どういうことについての、どういった程度の落ち着きのなさなのかを、十分に検討することが必要なのです。
ところで実際にいろいろな場合、落ち着きのない子が生ずることは知られています。第一には、脳障害にもとづく場合が挙げられますが、そのほか、環境や育てかたに問題がある場合もあります。

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脳にいろいろな病変が加わった場合、ときとして、大変落ち着きなく動きまわり、注意の集中が悪く、散らかりやすいなどの特徴をもつことが知られています。
甚だしいときには、まさに一刻もじっとしていられないほど、たえず動きまわり、一つのことに手を出したかと思うと、すぐ別のことに気が移り、一寸物音がするとその方に気をとられるといった落ち着きのなさを示すこともあります。身体の症状を伴っている場合もあれば、知的障害を伴う場合もあります。また、そのような症状がなく、もっぱらおちつきなさを主症状にすることもあります。
また落ち着きのなさと似たものとして、体の不随意な動きがあげられます。これらの場合にも一刻もじっとしていない動きとして現われることがありますが、これらの不随意運動は、注意したり叱ったりしても、とめることができない点で落ち着きのなさとは区別できるものとされています。ただし脳障害による落ち着きのなさも、ときには、こういった不随意運動に似た特徴をもつことがあるので あり、とすると、単に叱ったり注意したりでは効果が期待できない場合かおることを忘れてはなりません。
落ち着きのなさは、脳障害以外の原因でもしばしばおこってきます。その一つは、生活環境そのものが、落ち着きをなくさせる条件を有している場合です。
忙しい家庭、しょつ中人の出入りがあり、せまい家の中で、それこそ一刻も落ち着く暇のない動きの多い家庭で育った子供は、落ち着かなるのがむしろ当然ともいえます。単なる生活環境条件ばかりでなく、親の性格、すなわち、親自身が落ち着かない人で、子供に対してたえずいろいろな刺激を与え、その反応を求めるということがあれば、これも子供を落ち着かせなくさせる。落ち着かない親を見ならって真似をするともいえます。
こういった場合には、生活をまず落ち着かせること、すなわち環境自体の変化と、親自身の生活態度を変えることが必要となります。
生活環境というよりも、親の子どもに対する態度に問題があって落ち着きのない子どもになると考えられることもあります。その一つは、あまりにも細かいことを度々注意するような厳しいしつけ方をした場合であり、子どもは、注意に感じなくなり、かえって落ち着かない行動をとるようになります。また、親がそばにいるとぎだけは仕方なしに行動を抑えているものの、外へ出ると、反動的にまったくコントロールをせず、おちつきなく動きまわるというようなこともあります。あるいは、逆に子どもを甘やかし、したい放題に育てているようなときに、コントロールが弱くなり、わがまま一杯の落ち着きのなさ、抑えのなさが招来されることもあります。あまりにも多くの玩具を与えられ、限りのない刺激をうけて育てられると、一つの刺激に集中する訓練がされない結果となり、やはり落ち着かない子供となってしまいます。
また、子供も自身が、親から無視され、認められずに育てられたようなさいにも、子供は親のみならずまわりの人たちの自分への注意をひこうとして、ことさらに落ち着かない振る舞いをすることもあります。
いずれの場合も、何らかの親の子どもへの接し方、育て方に問題があると考えられるのですが、そのさいの落ち着きのない子供への発展は様々な形となります。それぞれに応じての親子の関係を反省し、改めるべき点を改める努力が望まれます。
もっぱら、落ち着きのない子の問題となおし方を述べてきましたが、本来子供は落ち着きのないものです。この本来の落ち着きのなさは、むしろ発達の原動力ともいえます。新しいことに関心をもち、いろいろな探求を行ない、また新しい刺激に注意を向けることが、発達には必要な注意、関心だからです。
それを、ことさらに異常と感じ、落ち着きのなさを矯めてしまうことは、まさに発達そのものを損うことになることを忘れてはなりません。
落ち着きのある子供の方が、かえって問題にしなければならない子供であることもまれではないのです。

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