引っ込み思案

一歩、外へ出ると、今までの元気はどこへいったのか、とたんにおとなしくなり、一言も口をきけなくなる子供がいます。家の中では大声ではしゃいだり、わがまま放題で、家族にも平気でロごたえをしていたのに、外へ出たとたんに小さくなってしまう。これが内弁慶といわれるものです。内弁慶の外すぼみとか、内弁慶の外幽霊などという言葉は、このような子供の正体をいいあてたものです。
内弁慶になる理由としては、子供が小さいときから甘やかされて育った場合。外の人との接触の使命が少なかったり、人との交わり方を教わらなかった場合。外で非常に緊張した生活をつづけている場合。親が知らず知らずのうちに、子供に外の世界に対して恐怖心をおこさせている場合などが考えられます。
内弁慶の子供には、できるだけ頻繁に友達と交わって社会性を育て、同時に外の世界に対する恐怖心をとり除いてやる必要があります。そのためには、教育機関では子供の独立心と集団参加の能力を高め、集団活動の楽しさを体験させるような指導をすることがのぞまれます。また、休日や夏休みのときなどに、親類や知人の家に宿泊する機会を与えるのも一案です。内弁慶の子供を集めて、合宿をやり、よい効果をあげた例もあります。

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子供は二〜三歳頃から外へ出て、自然に友達のなかに入ってゆくようになる。もっともはじめは、例えば砂場で友達のなかにはいって遊んでいても、相手との間にはなんら関係のない、自分勝手な遊びをしているにすぎませんが、三〜四歳頃からは、物の取り合いっこなどで相手との交流がはじまり、四歳すぎ頃からは、まがりなりにも、共通の目的にむかっての共同遊びができるようになります。さらに学齢期に達した子どもたちの場合は、リーダーのもとで組織的な遊びができるようになります。人はもともと社会的な生物であり、孤立して生存していくことはできなかったわけで、子供の集団行動はその雛型だともいえます。ところが、最近、友だちと遊べない子どもが多くなってきています。
そのような子どもを観察していると、(1)ほかの子供たちが遊んでいることに興味があって、自分も参加して一緒に遊びたいのだが、自信や勇気がなくて、すすんで遊びに加わってゆけない子ども、(2)友達と遊ぶことに興味がなくて、誘導しても自分から脱落してゆく子供、(3)一緒に遊んでいた仲間から排撃され、孤立している子供、などに区別されることがわかります。(1)のタイプの子供に多いのは性格的に気が弱いとか、過保護されて社会性が身についていない子供たち、(2)のタイプの子供には、知能の高い子や、逆に低い子、または、近所に適当な子どもがいなくて、遊び方が身についていない子どもたち、(3)のタイプの子どもの特徴としては、わがまま、怒りっぽい、自慢ばかりする、嫌味をいう、出しゃばって人に命令ばかりする、などが指摘されます。
子供は友達との遊びをとおして、自分の要求や意図がいつも通るわけにはいかないことを経験しますが、そこで挫けてしまうと、このような遊べない、友達のできない子供になってしまいます。遂に、そのような経験から、友達の気持や意図を理解し、受けいれ、さらに違った意図や要求をもった友達と一緒になって共通のよろこびを体得してゆくために知恵を出し合い、協力し合うという姿勢を示すならば、その子供は、仲間とも豊かな生活を築いてゆくことのできる、たくましい人格者に育ってゆきます。
「うちの子は内気で、先が思いやられる」とか、「うちの子は神経質で困る」とこぼされる母親は意外に多い。ある小学校の調査によると、「内気だ」と答えた人は四〇%に達していたという。大体、内気な子供とは思慮深く、感じやすいデリケートな性質の持ち主で、言葉をかえれば、神経質な子供だということになります。だから、大胆な行動には移っていけないことになり、結果的に気の弱い子供だといわれることになります。
たしかに、子供の集団を注意深くみると、次のような状態の子供がよくいるものです。親や先生がちょっと注意しただけで、すぐ泣き出す子。童話をよんでやっているうちに、かわいそうな子どものことが出てくると、目に涙をためてしまう子。学校や家庭でみんなに分けた画用紙やお菓子を、たまたまもらっていなかったり、ほかの子供たちより少ないと、その ことを率直にいえず、下を向いてすすり泣く子、など。さらに極端な場合は、先生が順番に教科書を読ませているとき、やがて順番がまわってきて読まなければならなくなると、涙をポロポロ流して、うつむいてしまう子もいます。
このような子供は適応という面からみると、困った子供だということになるでしょうが、別の見方をすれば、人にはきめ細かい愛情を示してくれる子供だということになります。
また、この子供達は性格的に気が弱いだけでなく、一般に感覚的にも過敏なところがあって、夜中にちょっと物音がすると、すぐ目を覚ますし、匂いの強い食べものは食べたがらないし、バスや船にも酔いやすい。
しかし、このような特徴は個性だとみれば、一概に困ったものだときめつけるのは、あたりません。この世の中が、神経が太くて、人を人とも思わない横柄な人間ばかりで占められてしまうとしたら、どんなものでしょうか。涙もろい子供に対し、「そんな弱虫では、この世をうまく渡ってゆけないぞ」といって叱咤している親や教師が多いようですが、かれらには人を押しのけてゆく人間は良い人間で、繊細な感情かもち、人にきめ細かい愛情を示す人間は悪い人間だという評価が、いつの間にか、できてしまっているようです。しかし、むしろ、そのような評価こそが問題だというべきではないでしょうか。
もちろん、神経質な子供がひどい偏食をしたり、無気力になったり、耐久力に乏しかったりするようであれば、それは問題です。子供に勇気を与えることは教育の根幹であるため、正しいこと、果たさればならないことに敢然と立ちむかってゆく態度は、あらゆる機会をとらえて、育ててゆかなければなりません。

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