睡眠の問題

寝る子は育つといわれます。親にとって子どもの眠りは、食事と同じように、子どもを育ててゆく上での最大関心事となります。どのようにしたら、子供が安らかに眠りにつき、夜中も目覚めずに、朝は機嫌よく目覚めるか、親自身の気分の安定とも結びつく大きな課題となります。
食事と同様に、親が子供の眠りに期待するものはいささか過大でもあります。早く寝ついて、長く寝ること。子どもにとって、これでは反発したくもなります。かくて、親が早く寝かせようとすればかえって寝ないで困らせ、夜中に起きて騒いでは親をあたふたさせることになります。別に意図してそうするのではなく、親の無理強いがそういう反応を引き起こしてくるのです。
以前は人の眠りは、宵型と側型とに分けられ、宵のうちに深く眠って朝はだんだんと浅くなる型と、逆に朝深く眠る型とがあるとされていました。近年の眠りの生理学では、人は誰でも一晩の中に、浅い眠りと深い眠りと四〜五回繰り返すものであることを明らかにしてきました。子供では、大人よりも一層このリズムが強いとさえいえます。
つまり、寝ついて間もなく深い眠りに入るが、それは長つづきせず、二〜二時間半のちには浅い眠りとなり、それがしばらく続いたのちまた深く眠るといったくり返しを、誰でもが朝まで数回くりかえすというのです。
浅い眠りといっても、外見上はよく寝ています。ただ、このときに脳波はおきているときに近い波型を示し、脈や呼吸が早くなり、体の動きや眼球の動きが明らかに認められます。たとえるならば、脳の方だけは目覚めてけっこう活発に活勤し、それにつれて一部の身体機能にも目覚めと似た活動が見られるということです。眠りの問題の多くは、こういった一晩のうちの眠りのリズムといろいろ関連していると考えられます。

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寝つきの善し悪し、目覚めの善し悪しには随分と個人差があります。しかし同じ個人でも寝つきの善し悪しは、何時に寝たか、その時刻と関係することがよく経験されます。
眠りの間のリズムのことは、すでに述べましたが、同様のリズムは昼間にもあるものと考えられます。そして、たまたま眠くなる時刻に床につけば、すぐに寝つくし、少し興奮してくる時刻に床につくと、なかなか寝られないことになります。朝の目覚めも、たまたま浅くなった時刻に起きるときは、機嫌よい目覚めとなるし、深い眠りに向かうときの目覚めは、よくないというわけです。
もちろん、他の条件もいろいろと関係します。生理的な空腹やのどの渇き、体調の悪さ、寝室の騒音、気温や湿度など、あるいは、寝る直前のはしゃぎ、興奮、恐怖などが、寝つきを悪くすることはいうまでもありません。不十分な眠りの量が目覚めを悪くすることも当然です。
子供を寝かせたあと、大人たちの時間を楽しもうとして、何とか早く寝かせようとすると、子供はそれへの反応としてかえってなかなか寝つかない結果をひきおこすこともあります。
寝る前にお話をと親を寝床にひき寄せない限り、寝ようとしない子、朝起きるのに何か口にしない限り起きてこない子、これらはむしろ心理的に作られた寝付き、目覚めの障害といえます。夜中に目覚めて泣いたり騒いだりする子供の中には、後記する夢道や夜驚のように多少とも病的なものも含まれますが、一方、より意図的に親の関心をひきその世話を求める子供もいます。
夜泣きをする子供は、泣いて騒いでも、とりあわずにいる限り、ふたたび寝てしまうことが少なくありません。すでにそのような習慣がついているさいに、それをとるために、とりあわないでいることがもっとも効果的とされます。しかし、わが国の住宅事情では、あるいは家庭の条件では、夜、大声で泣く子どもをとりあわずにいるこ とが難しいことが少なくありません。ついつい抱きあげてほいほいする。子どもは味をしめて、毎夜毎夜泣き出すといった習慣がつくことになってしまいます。
夢を見ることは決して異常ではありません。実は、一晩の眠りのうち、浅くなった時期には誰でもが夢を見ているともいわれている。ただ、それを覚えているか否かが異なるだけです。夢を見て、その時に眼がさめたりすると、夢を見たことを覚えているし、さめないまま、深い眠りに移行すると、覚えていないことになるだけです。
夢を見て、それがとくに怖い内容であり、不安を伴って、うなされるのが悪夢と呼ばれます。いわゆる夜驚というのも、これに近い、不安を伴った反応と考えられます。
これらはしたがって、一晩のうちの浅い眠りのリズムに相応して現われることが多い。寝ついてすぐよりも、二〜二時間半位またはさらにその二時間後といった時期です。
夢をみながら小便をしてしまう、それが夜尿になってしまうといった経験は、誰でもがあるかと思います。つまり夜尿も同様、浅い眠りの時期に見られるのであり、さらに同じことは、寝言にも、歯ぎしりにもいえる。したがって、これらの現われがあったからといって、眠りが足りないとか、異常な眠りだとかはいえないのです。
夢についても、夢ばかり見ていて一睡もできなかったというのはたいへんおかしい。眠っているからこそ夢を見るのであり、浅い眠りの間には深い眠りもあるのだから眠りが不足するということはありえないのです。
夢の内容は、精神分析の学派では大変に重視します。その人が無意識のうちにもっている悩みが、夢の中に形を変えて現われてくると考えるからです。
しかし、夢にはもっと現実の経験が、その日その日に強く感じられたことが現われることも否めません。むしろ子供では、複雑なからくりよりも、毎日毎日の経験が強く夢を色どっていると考えた方がよい。とにかく夢を見ること、夢の内容にそうこだわることは当を得ていません。
眠っている最中、急にはげしい怯えを示して泣き叫んだり、急に立ち上がって一見まとまった様子でふらふらと外へ歩いていったかと思うと、間もなく戻ってきてまた眠りについてしまいます。しかも翌朝は泣いたり歩いたりしたことか全く覚えていないということがあります。強い日中の感動にもとづく反応と考えられることのある反面、脳の機能異常が基礎にある場合もあります。念のためこのような症状を示す子供には、脳波の検査が試みられねばなりません。眠りの生理学からは、やはり、浅い眠りのリズムで起ってくる現象であり、少しく念の入った夢ともみなせるものです。

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