施設保育

昔は、施設保育の成績はあまり芳しいものではなく、一般家庭児にみられない身心の発育障害やその他の症状がみられました。これらは施設保育の欠陥によるものとして、施設症といわれていました。
この原因としてまずあげられたものは、母不在による母性的愛情喪失でした。さらにその後の研究で、子供の生後の発達には諸々の感覚刺激や人による働きかけが不可欠であることがわかりました。家庭での母性行動はこれを本能的に行たっていたわけです。これに対し、施設保育ではそれを意識的かつ技術的に行なわねばなりません。したがって、前者を天然保育とすれば、後者は人工保育ともいうべきで、また前者は人類はじまって以来の永い進化の歴史と経験を持つのに対し、後者はまだ始まったばかりで技術的にも未熟な点が少なくありません。
事実、昔の特に欧米の施設保育での保育成績は惨たんたるものでした。そこで施設保育には、致命的欠陥があるとさえいわれましたが、その後の改善と工夫で保育成績は飛躍的に向上することがわかりました。現在の日本の施設の保育レベルは、すでに一定の水準に達し、過去の施設症論はあまり適用しなくなりました。そして、家庭保育とは別の新しい集団保育法の開発への努力が始まりつつあります。また、家庭保育は母性の質により成績のバラツキが大きすぎることが欠点ですが、施設保育では一定の保育レベルが維持され、かつ安定的な向上がみこまれる利点もありますが、ここでは施設環境が悪い場合の子供への影響すなわち保育病理について述べてみましょう。

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施設症の原因となる施設保育の特徴を考えてみると、理論的には集団保育という保育形態そのものによる制約と、施設設備、保育法の不備などからおこる弊害に分けられ、普通この両者が混在しています。古くから指摘されている症候群の大部分は、後者によるもので、したがってそれらの改善により消失するものです。
さらに集団保育形態そのものによる欠点については、なお十分明らかではありませんが、次の諸点があげられます。第一に、画一保育であることである。集団で行なうため日常の生活があるていど画一的となり、学習、経験の機会が制限されます。第二に、不連続な保育であること。乳児の健全な発達には、継続的な母性的養護が不可欠とされていますが、施設では保育者が三交替制などでたえず交替することがさけられません。また、一日の時間帯でも保育人員に差があるので保育の質にムラができやすいこともこれに拍車をかけています。第三に、集団のため病気が流行しやすく、したがって隔離保育、閉鎖、消極保育になりやすい。
以上の諸因子が原因となり、養護不良、感覚刺激の量的、質的不備、さらに子供との応答不良で機敏性を欠くことなどの状態を招来し、これらが子供の発達を阻害する結果と考えられます。
施設による以上の発育阻害 因子の多少によっていろいろな症状があらわれます。その程度は施設によって著しく差があります。しかし、その基本は発達の遅滞です。身体的には身長、体重などの発育不良、下痢傾向、貧血がないにもかかわらず顔色が蒼い、病気に感染しやすく抵抗力が弱い、大食傾向などです。機能と精神発達面にも全般的な遅れがみられ、重症では精薄に近いまでになることがあります。この中でも運動機能は比較的抵抗が強く、社会性、言語ことに表現力は影響をうけやすいので、施設児の発達はアンバランスになりやすい。性格は消極性で、表情に乏しくぼんやりしているのが特徴で、あやしても笑いが少なく、動きも乏しい。極端な例では、うつ病様になることもあります。また対人関係では、接触が浅く表面的で、深い情緒的関係をつくる能力に欠ける。例えば、人に無関心で積極性がない反面、人なつこく誰にでも同じように接触を求めようとする愛情飢餓の態度がみられます。しかし、それも表面的で、愛情要求が入れられなくても固執することなく無関心であるなどの特徴がみられます。
 いろいろな神経性常勤運動もおきます。ベッドにつかまって常動的に体やしりを前後左右に振るゆすり運動、額を床に反復してぶつける頭打ち運動などがみられますが、いずれも欲求不満に対する反応と説明されています。
以上の症状の発生にもっとも影響のあるのは、第一に施設保育環境の良否で、以前の施設保育ではこのような症状がごく普通にみられましたが、最近は著しく改善され、なお言語の遅れや情緒面に多少の問題のあるほかはほとんど消失しました。保育法の工夫でさらに向上が期待されます。第二に、入居待の年齢と在院期間です。入居時の年齢によって症状も異なりますが、一般に悪い施設の影響は三歳以下が強く、かつ早くから長期間在院するほど著しくなります。しかし、良い施設で一年以内に退院した例では、悪影響はなかったという報告もあります。
退院後の遠隔予後についても、以前は不良でしたが、最近の施設では著しく改善されていると思われます。第三に、施設入居前の状態が関係し、特に母子関係の歪みがあればその影響は大きいようです。

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